松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.23)

2008年02月23日

「川上未映子」大特集


<大特集・芥川賞作家・川上未映子>
◎川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)



<スタジオ>
谷原 こんなに話題になる新人作家さんの登場はないんじゃないかと思うんですが。美香ちゃん、よろしくお願いします。
金田 はい。実は昨日、その川上さんが注目を浴びた第138回芥川賞の贈呈式がありました。30社以上の報道陣が集まり、ここ数年では飛び抜けて多数の出席者でにぎわっていました。きょうは、その芥川賞作家川上未映子さんを「ブランチ」が独占インタビューします。お仕事場にもお邪魔してたくさんお話を伺ってきました。


<VTR>
金田 どうも、はじめまして。
川上 はじめまして。こんにちわ。
金田 「王様のブランチ」です。遅ればせながら、芥川賞受賞おめでとうございます。(と花束を渡す)
川上 おおきに、ありがとうございます。
N 川上さんと言えばミニスカ、この日は全身シックに統一。>
金田 かっこいいですね。足も細いし。靴は何ですか。
川上 これはプラダ……なんて言うと……。
金田 指輪もテントウムシが……。すごい、ファッション誌から出てきたような。
川上 それは言い過ぎですよ。恥ずかしいですね。
N 自ら「文筆歌手」と名乗る川上未映子さんは、1976年大阪生まれの31歳。実は、小説家としてデビューしてから1年足らず。初小説『わたくし率 イン 歯ー、または世界』がいきなり前回の芥川賞候補に。そして、このたび、第2作の『乳と卵』で見事芥川賞を受賞したシンデレラガール。>
金田 きょうは、川上さんがお好きな場所に。
川上 そうですね、来てみたかった場所というか。
N それは、川上さんが尊敬する明治の作家樋口一葉の記念館。わずか24年という激しくも短い一生を送った一葉。その名作の数々は、晩年の1年あまりの間に書かれ、「奇蹟の14ヵ月」と呼ばれています。ここには、そんな一葉の貴重な直筆原稿や遺品が展示されています。>
川上 「奇蹟の14ヵ月」……。
金田 1年ちょっとで、これだけの作品を……。川上さんも短い間に。
川上 まだ2作しかね、書いてないから。まだ14ヵ月もいってないみたいな感じなんですけども。
金田 まだ1年。
川上 9ヵ月。小説書き始めてからね。
金田 前作もノミネートされて。
川上 あれは、一番ビックリしましたね。
金田 今回、2作目で受賞されたということで。興奮しちゃいましたよ。それを見ていて。
川上 わたしも興奮しました。ありがとうございます。
N 若い一葉が家計を支えた逸話は有名ですが、川上さんは若くして歯科助手や書店員をして家計を助けていました。中には、こんなバイトも……。>
金田 ホステスなんかも経験がおありとか……。
川上 そうでございます。あれも壮絶な職場でしたね。
金田 でも、資料を読んだんですけども、No.1になれたという……。
川上 いやいや、そんなこと言ってない。
金田 でも、そう書いてありましたよ。
川上 こうやってね、話があれ……。でも、一所懸命頑張っていたんですよ。人と人とのつきあいのお仕事だから、どの現場でも基本は同じですよね。
N そんな川上さんが文学に目覚めたきっかけは、誰もが読んでいたあの本。>
金田 もともと文学少女だったんですか。
川上 全然。だって、家族で本を読む人、誰もいないんですよ。あたしの姉なんか、1冊読破したことがないんです。そう、教科書が始まりだったんですよ。国語の教科書、みんなつまらないって言うけど、あれはバリエーション豊かで、絶対読まないという本も入っているでしょう。だからね、結構、重宝してましたね。
N 作家デビューのきっかけは、自らのアルバム宣伝のために始めたブログでした。これが関係者の目にとまり、エッセイを依頼されたのです。>
金田 やっぱり、書くことが好きだったとか。
川上 書くのはね、自分がね、うまく書けるとか、ちゃんと書けるとかの自信はあったかといえば、なかったですね。むしろ、歌の方が「ちょっとうまいんじゃないか」みたいな気持ちでやったのが、あまりパッとしなかったから、もう、あまりそうこうことはどうでもいいんだということで、好きなものを一生懸命やってみようと思って。
N そして、このたび、2作目の『乳と卵』で見事芥川賞を受賞。
池澤夏樹(芥川賞選考委員) 声のある文体であるということ。つまり、目で読んでいて音が響いてくる、そういう仕掛けをちゃんと作り込んでいるという意味では、やはり歌手なのかなと思います。
N 樋口一葉にも似た、息の長いリズム感のある文体。それを生み出す、畳みかけるような大阪弁が特徴的な『乳と卵』。物語は、大阪から姉の巻子とその娘の緑子が東京のわたしのアパートへ訪ねてくるところから始まる。姉の上京の目的は豊胸手術を受けること。そんな母に反発して、小学校6年生の緑子は一切口をきかない。しかし、娘のノートには、思春期ならではの悩み、そして母への思いが書かれていた。母と娘、そしてわたし。女性3人の体と生理を巡り揺れる心。だれもがもつ体を題材に、女性の存在意味を問いかけます。>
川上 人間に興味があるんですよ。そして、たまたま人間について書こうと思ったら、わたしが女の属性をもっていて、で女の側からのアプローチになってしまった。人間の体と心みたいなもの、これも簡単に二つ分けれないんですけども、そのものを一個の角度から書いてみたいなという気持ちでスタートしているんですね。
金田 それが豊胸手術というものに繋がっていったんですか。
川上 そう。どういうわけか。
金田 川上さん自身も興味があって。
川上 ありましたね。
金田 すごく詳しく書かれていたから。
川上 わたしね、町を歩いていても、男には本当に興味がないんですよ。「好きな男性のタイプは」と言われても、ないです、タイプが。でもね、女の人は見てしまいますよね。だから、化粧品売り場なんて大好きなんですよ。女の人がキラキラしてるでしょう。ああいうのいいですよね。女の人……美しさの基準てどこにあるんでしょうね。


N 壁一面が本で埋め尽くされた部屋。ここが芥川賞作家川上未映子さんの仕事場。デスクの前にはメモがびっしり。>
金田 すごい貼ってある。これは歌詞ですか。ちょっと見ただけでは、どんな内容なのか……。<N 「署名添加」「未知と表面」「柔軟性の幸運」……果たしてこれは……。>
川上 全然意味はないんです。気に入ったフレーズみたいなのがパッと出てくるんですよ。それを書く時期があって、書いたのを前に貼っておくと、いい雰囲気になって、なんか作品書くときに、いい感じに出てくる。目にはいるようにしてると落ち着くんですよ。模様みたいな感じですね。好きな模様とか、柄とか。柄みたいな感じで書きます。
金田 言葉が柄。
N 小説を書き始めるまで、少なくとも数ヶ月の助走期間が必要だという川上さん。>
川上 別に、小説を書くから、これを考えようじゃなくて、たとえば、「好き」という気持ちはどういうことなんやろか。いいとか悪いとかね。善悪とかね。なんとなく、そういうことをご飯を食べながらとか考えるんですよ。そういうものが常にふわふわふわっと漂ってて、小説を書くときに、なんか、全部が同時にあるのが、なんとなくうまくまとまってくれる瞬間というのがあって、キターッと思った時にバーッと書く。
金田 降りてきたというか。
川上 そんな神々しいもんじゃなくて、なんとなくペロンと来てダッていう感じ。ペロリンと来て……。
金田 芥川賞受賞ですか。
川上 結果的にはね。
N そんな川上作品の特徴が、『わたくし率 イン 歯ー、または世界』など、一風変わった長いタイトル。>
川上 やっぱり、書き上がった内容を、タイトルは1行やわと、1行で表そうと思って欲張っちゃうんですよ。だから、よしんば中身を読んでくれなくても、タイトルで読んだ気持ちになって欲しいぐらいな気持ちがあるんですよ。
N 実は、今回も長いタイトルを考えていたそうです。>
川上 悪い癖が出て、長ったらしいタイトルを考えていたんですよ。
金田 ちなみに、どういう風に長いタイトルになってしまったんですか。
川上 それ言うんですか。「胸と卵と毛の会議」みたいなね。
金田 「毛」も入っていたんですか。
川上 「毛」も入っていたんですよね。まあ、「乳と卵」にしてよかったですよ。
N そんな『乳と卵』で、今回、高く評価されたリズム感のある大阪弁。>
川上 大阪生まれで大阪育ちで、自分で大阪弁をしゃべろうというのは、日本語と同じで選べなかったんですよね。なんとなく、自然にこのイントネーション。だから、今回、人間の体っていうのは、生まれたときから、もとからあって選べないことじゃないですか。そこで、選ばないものを同じ要素として、登場人物たちには大阪弁をしゃべらしてみた。もう、勝手な自己満足なんですけども。
N 大阪弁のリズムで、この文章を味わってみたい。そこで……。>
金田 大阪弁で読んでもらっていいですか。
川上 そうね。
N 芥川賞作家川上未映子さん自らが、受賞作の一節を大阪弁で朗読。>
川上 「あたしの手は動く、足も動く、動かしかたなんかわかってないのに、色々なところが動かせることは不思議。……(以下略)」。
金田 すごーい。なんだか日記を読んでもらっているような。
川上 心地よかったですか。
金田 はい。
川上 じゃあ、ズーッと読みましょうか。
金田 (笑)。
川上 それは迷惑で。
金田 これからも、たくさんの作品を書かれていくと思うんですけども……。
川上 (しょげて見せて)もうテンション低い。締め切りがパーンと浮かんで。
金田 これから、どんな作品を……。
川上 まったくわからないですね。
金田 まったくわからない。
川上 ちょっとはわかるけども。
金田 まだ、今は助走中ですか。
川上 うん。メモをいっぱい取ってる最中。
金田 あの、歌手としては……。
川上 ライブ。執筆とは全然違うので、ライブはこれまでと同じで、1年に4~5回やってるんですけども、それはやろうと思っています。3月にもやろうかなって思っていて。
金田 お子さんも。
川上 えっ。
金田 ご結婚されているということで。
川上 結婚とお子さんは別じゃないですか。三食ご飯を作り、部屋を掃除し、素敵な環境を整えて、1日6時間執筆みたいなのが、本当に憧れですね。
金田 それはできそうですか。
川上 たぶん無理。


<スタジオ>
谷原 とっても感覚的な方なんですけども、それをコントロールする理路整然とした部分をもってらっしゃって、独特ですね。
優香 素敵ですね。もう、座り方がずっと色っぽいですね。女性としても素敵だし、お話ししたくなる、一緒に相談して、いろんな話を聞いて、アドバイスをもらいたいなって。すごく面白い方だなあって思いましたし。やっぱり、感性が、バッと降りてくるとか、文章を書く人って素晴らしいなって思いますね。
谷原 そう、無から何かを生み出すんですからね。美香ちゃん、独特の雰囲気がある方で。
金田 VTRをご覧の通り、本当に気さくでさばさばしていて、会った瞬間からお友だちになったような気分にさせてくれる方で。また、本を読むと、これまた独特で、読んでいて会話しているかのようなリズム感があって。最初は慣れないんですけども、読み終わると、アッという間だったんですよね。やっぱり、文字が柄に見えるとか、鋭い感性をお持ちになっていて、終始、取材の間中、驚きの連続でした。
谷原 松田さんもこのロケの現場に行かれたそうですね。
松田 はい、とっても楽しかったですね。昨日、贈呈式でもお目にかかったんですが。会う度に魅力に圧倒されます。すごく哲学書もたくさん読んでまして、それがああいう風に、知的な会話に生きてくるんですね。本当に知的でチャーミングで素敵な女性だなって思いましたね。
谷原 作品についてはいかがですか。
松田 『乳と卵』という作品は、関西弁の、大阪弁の語りが気持ちいいんですけども、そして、ユニークなキャラクターがたくさん出てきて、そこに哲学的な、「人間の体ってなんだろう」というテーマを、面白く、笑いを絡めながら読ませてくれるという、非常に楽しい作品ですね。
谷原 なんか、優しく包み込んでくれる不思議な女性でしたね。「胸と卵と毛の会議」、ぼくも読んでみたいと思います。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.16)

2008年02月17日

『セ・シ・ボン』と「勝間和代」


 <総合ランキング> (2/4~10 ブックファースト渋谷文化通り店調べ)
 1位 勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)
 2位 小宮一慶『「1秒」で財務諸表を読む方法』(東洋経済新報社)
 3位 大谷和利『iPodをつくった男』(アスキー)
 4位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 5位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)


<BOOKニュース>
◎今井広美『友輝へ お願い、ママにキスして』(竹書房)


<特集・勝間和代>
◎勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)



◎勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)

本業は公認会計士。書く本はことごとくベストセラーになる勝間和代さん。最新刊の『効率が10倍アップする新・知的生産術』は現在、20万部を突破しています。子育てと仕事との両立のために編み出したという、徹底的に無駄を省いた勝間流の知的生産術とは? 情報をいかに取り入れ、どうアウトプットするか。仕事上の通信、ネットの利用法、読書の仕方、人とのつき合い方まで、勝間さんに密着取材し、その極意を教えていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎平安寿子『セ・シ・ボン』(筑摩書房)



松田 いま、笑える小説を書かせたら、この人の右に出る人はいないと思います。平安寿子さんの最新作『セ・シ・ボン』です。
N 「その時の私は生き迷っていた。これは、およそ30年目、著者である平さんが一念発起してパリ留学したときのことを綴った私小説的エッセイ。期待に胸ふくらませる、26歳女子。しかし、花の都パリで待っていたのは、風変わりな人々、おかしな出来事の数々だった。笑って、あきれて、やがてしみじみとする、調子っぱずれの留学物語。>
松田 これは、小説のように面白いエッセイなんですけども、特別に大きな事件が起こるわけでも、大恋愛に遭遇するわけでもないんです。でも、本当に個性豊かな人物が次々に出てきて、含蓄のある名言を吐いてくれるんです。主人公のタイコというのは、そういう人たちの間でうろうろしているんですが、時間がたってみると、ものすごく貴重ないい人生経験をしたなということがわかるんです。だから、読んでいると、笑えて、しみじみとして、最後はちょっとホロリとするという、いいお話なんですね。一言で読感を言うと、「セ・シ・ボン」(そりゃもう素敵!)という感じ、まさにそういう本です。
谷原 マヤリンも読んだんだよね。
小林 本の冒頭で、「女の黄金時代は、なんといっても三十代ね」という言葉が出てくるんですけども、そこで心を鷲掴みにされてしまって、いかに30代が素晴らしいか、パワフルかということが書かれていて、自分自身も30代がすごく楽しみになりました。あと、わたし、あんまりお酒は飲めないんですけども、平さんと一緒にお酒を飲みながら語ってほしいなあって思えるような……。
松田 人生経験をね……。
小林 そうなんですよ。
松田 そういう意味では、いろんなことを楽しく教えてくれる本だと思いますね。
谷原 男のパワフルな黄金期はいつなんでしょうか。読んでみたいと思います。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.9)

2008年02月10日

『いのちのパレード』と「大野智『FREESTYLE』」


<総合ランキング>  (1/28~2/3 三省堂書店全店調べ)
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 3位 阿川弘之『大人の見識』(新潮社)
 4位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 5位 平岩弓枝『新・御宿かわせみ』(文藝春秋)
 6位 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
 7位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 8位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 9位 城山三郎『そうか、もう君はいないのか』(新潮社)
10位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)


<特集・大野智『FREESTYLE』>
◎大野智『FREESTYLE』(角川書店)



「嵐」の大野智さんが10年にわたって制作してきた、オリジナル・フィギュア100点、ペインティング20点、オブジェ2点など、アート作品を1冊にまとめました。この作品集には、アーティスト大野智の独創的なポートレート、制作への思いをじっくり語ったロング・インタビュー、10年間、制作過程を見つめてきた「嵐」メンバーからの一言なども収録されています。作品の現物を見せていただきながら、大野さんに、制作意図などについてインタビューしました。


<今週の松田チョイス>
◎恩田陸『いのちのパレード』(実業之日本社)



松田 いま、物語を書く人はたくさんいますけども、その中で飛び抜けた力をもっている、面白さ、うまさで言えば恩田陸さんだと思います。その、恩田さんの最新作『いのちのパレード』です。
N 本屋大賞、吉川英治文学新人賞、日本推理作家協会賞、山本周五郎賞。幅広いジャンルで評価を得てきた恩田陸さん。その集大成ともいえる短編集が『いのちのパレード』。ホラー、SF、ミステリー、ファンタジー。15の短い物語に込められた壮大な想像力が、読者を圧倒します。>
松田 この本には奇妙な味の短編小説が十五編収録されています。一つ一つが20ページぐらいの短いお話なんです。だけども、それぞれが壮大なスケールの物語だったり、果てしない永い永い歴史の一部を一部を切り取ってきたみたいな、桁外れの大きさを感じさせられる物語ばかりで、それで、最後には意外なラストが待っているという、それぞれが楽しめるお話ばっかりですね。谷原さん、読んでどうでしたか。
谷原 あ、松田さんにふられた。ぼくも読ませていただいたんですが、恩田さんという人はとっても文章が上手じゃないですか。で、読んでいく内に、日常生活で、普通の人だったら見過ごさすようなところを、恩田さんが注目してみると、どっか隙間というかほころびのようなところを見つけて、それを想像力でどんどんふくらましていったっていう感じがしたんですね。日常なんだけども、ちょっと位相がずれた世界。どの短編も、最後のオチはゾクッとするようなものが多いんですが、中には可愛いお話で、「夕飯は七時」というのがありまして、子どもって想像力が凄くあるじゃないですか。で、大人が訳のわからない単語を言うと、それは何だろうと、勝手に生き物だとかを想像して、それが実際に出てきちゃうというお話。それが微笑ましくて好きでしたね。松田さんはいかがでした。
松田 ぼくはね、「かたつむり注意報」という作品が面白くて。ある作家の生涯を追っている人が、その最期の地に行くんですけども、そこで、巨大なかたつむりが夜、町中を歩いているという幻想的なんだけどリアルな光景に遭遇するというお話です。その映像が鮮明に焼き付いているという感じで、本当に繰り返し読みたくなる素晴らしい短編集ですね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.2.2)

2008年02月03日

『ラジオ・キラー』と「荒木飛呂彦&乙一『The Book』」


<コミックランキング>  (12/29~1/27 日販オープンネットワークWIN調べ)
 1位 青山剛昌『名探偵コナン』60巻(小学館)
 2位 高橋ヒロシ『WORST』19巻(秋田書店)
 3位 畑健二郎『ハヤテのごとく!』(小学館)
 4位 田辺イエロウ『結界師』19巻(小学館)
 5位 赤松健『魔法先生ネギま!』(講談社)
 6位 CLAMP『ツバサ』22巻(講談社)
 7位 真島ヒロ『FAIRY TAIL』8巻(講談社)
 8位 矢吹健太朗『To LOVE -とらぶる-』7巻(集英社)
 9位 河原和音『高校デビュー』10巻(集英社)
10位 うすた京介『ピューと吹く!ジャガー』14巻(集英社)


<特集・乙一&荒木飛呂彦『The Book』>
◎乙一&荒木飛呂彦『The Book』(集英社)



荒木飛呂彦の代表作でありシリーズ累計7000万部を超える大ヒット・コミック『ジョジョの奇妙な冒険』。このたび、このシリーズ第四部を奇才・乙一が渾身の小説化。「コミック版ジョジョ」の魅力の一つが【スタンド】という特殊能力を持った少年たちの、頭脳的な駆け引き、そして、極限状態でもあきらめない心。小説は、この要素を引き継ぎつつ、乙一らしい絶望と悲しみ、切なさを加えることに成功している。なぜ、執筆開始から5年、ボツ原稿が2000枚にものぼることなったのか、乙一オリジナル【スタンド】はどのように生み出されたのか、この小説を執筆することで得たものは、などを乙一さんに伺いました。また、VTR冒頭、荒木飛呂彦さんに「ジョジョ」の目指すもの、『The Book』の出来映えなどについてお聞きしました。
松田 原作コミックは息詰まるサスペンス・アクションなんですが、乙一さんは、そこに圧倒的な絶望と悪を持ち込んでいます。それによって、人間の悲しみ、切なさ、優しさを見事に表現しています。こうして、『ジョジョ』でありながら乙一ワールドでもある、コミックと小説が理想的な形で響きあった作品が誕生したんですね。


<今週の松田チョイス>
◎セバスチャン・フィツェック『ラジオ・キラー』(柏書房)



松田 ドイツの異色サスペンス・ミステリー、セバスチャン・フィツェックの『ラジオ・キラー』です。
N ラジオ局の乗っ取り事件発生! 人質をとって立てこもった知能犯が、ラジオを使った冷酷な殺人ゲームを始める。交渉人に指名されたのは、長女の自殺に深く傷ついていた犯罪心理学者イーラ。犯人との息詰まるようなやりとりをはさんで、事件は思いも寄らぬ展開へとなだれ込んでいく。ノンストップ・サイコミステリー。>
松田 この小説は、終始、心臓がドキドキしっぱなしです。思いがけない出来事が次々と起こり、アッと驚くラストシーンまで、一気に突っ走っていくんです。だから、読み始めると止まらなくなります。この犯罪は、マスコミや大衆を巻き込む「劇場型犯罪」なんですが、ラジオ局に立てこもった犯人の要求が、ドイツ中のどこかの電話番号に電話して、決まった答をしないと人質を一人殺すという、シンプルなもの。それだけに怖いのです。そして、犯人との交渉にあたる女性は、高名な犯罪心理学者なんですが、実は、娘の自殺で神経がボロボロになっている。こういう崖っぷちに立っているような絶望的な状況に置かれている主人公からも目が離せません。まさに、スリルとサスペンス満載のミステリーです。
優香 私も、読んだんですが、私は翻訳ものというのは苦手だったんですよ。でも、これはとっても読みやすかったですね。犯人との交渉人も正義のヒーローというのではないのでハラハラするし、その上、びっくりするようなラストシーンなんですね。
松田 壮大な仕掛けのマジックを目の前で見ているような感じでしたね。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

「王様のブランチ」の情報については、ここ をクリックしてください。