松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.29)

2008年03月29日

『新世界より』と「特集・海堂尊『ジーン・ワルツ』」


<小説ランキング>(3/17~3/23 紀伊國屋書店新宿本店調べ)
 1位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 2位 海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社)
 3位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 4位 川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)
 5位 桜庭一樹『私の男』(文藝春秋)
 6位 万城目学『鹿男あをによし』(幻冬舎)
 7位 和田竜『のぼうの城』(小学館)
 8位 貴志祐介『狐火の家』(角川書店)
 9位 永井路子『岩倉具視』(文藝春秋)
10位 司城志朗『相棒』(小学館)
谷原 松田さん、「松チョイ」で特集しました2冊がいきなり7位と3位。ぼくが紹介した『のぼうの城』が7位で、優香ちゃんが紹介した『食堂かたつむり』が3位。
松田 本当に嬉しいですね。どっちも素晴らしい作品なので、是非読んでほしいですよね。
優香 えみちゃんも読んだんですよね。
はしの そうなんですよ。私も、先週の優香ちゃんの話を聞いて、すごい読みたくなって読んだんです。
優香 どうでした。
はしの 飛行機の中で読んだんで、後半、涙をこらえるのが大変。閉じては上向いて(上を向いて目をパチパチさせる)、また(本を)開けて、閉じては上を向いてと繰り返して。
松田 涙がこぼれてこないように。
はしの でも、作者の方が作詞家さんということがすごくわかる、スルーッと入ってくる文章で面白かったです。
優香 また後で語り合いましょう。
谷原 『のぼうの城』も面白いですよ。
はしの わかりました。


<特集・海堂尊『ジーン・ワルツ』>
◎海堂尊『ジーン・ワルツ』(新潮社)



あの『チーム・バチスタの栄光』シリーズの作者で現役医師でもある海堂尊さんが新作を発表しました。それが産婦人科を舞台にした『ジーン・ワルツ』。主人公は、美貌の産婦人科医・曾根崎理恵、人呼んで「冷徹な魔女(クール・ウイッチ)」。人工授精のエキスパートである彼女のもとに、それぞれの事情を抱える五人の女が集まった。神の領域を脅かす生殖医療と、人の手の及ばぬ遺伝子の悪戯がせめぎ合う。彼女は人のいのちをどこまで操ることができるのか? 『チーム・バチスタの栄光』を超えるドラマティックな衝撃があなたを襲う! 現役医師作家が日本最大の医療問題に挑んだ衝撃作! 作者の海堂さんを訪ね、この作品を書いた意図などを伺い、病理医としての素顔にも迫りました。
谷原 松田さん、海堂さんの新作『ジーン・ワルツ』はいかがですか?
松田 お医者さんなので、最先端の医療知識とか生命科学、遺伝子の世界の話とかがすごく面白く書かれているんですね。それだけじゃなくて、キャラクターも強烈で、『チーム・バチスタ』もそうでしたが、キャラクターが面白く動いてくれるので、ミステリーとしても楽しむことができる作品だと思います。


<今週の松田チョイス>
◎貴志祐介『新世界より(上・下)』(講談社)



松田 壮大なスケールの未来物語、貴志祐介さんの『新世界より』です。
 『黒い家』、『硝子のハンマー』など発表する作品が常に話題になる作家貴志祐介。彼が3年半の歳月をかけたSFエンタテインメントが『新世界より』。科学技術の衰退した1000年後の日本。そこは、「呪力」と呼ばれる超能力が支配する徹底した管理社会だった。何も知らされずに育った子供達に、想像を絶する悪夢が襲いかかる。博学な作者が、生物学、動物行動学などを駆使し、想像力の限りを尽くして描いた壮大な未来絵巻。>
松田 これは、千年後の世界でですね、ある女性が、それから千年後の人類に向けてある手紙を書いているという、めちゃくちゃスケールの大きい話なんです。
谷原 二千年後のことを見越して書いているという。
松田 そうなんですね。その女性が子どもの時代に、友だちと一緒に夏休みに冒険旅行をして、町の外に出てはいけないと言われているのに出て行って、すごい世界に、衝撃的な出来事に出会うんです。それから、ほんとうに血生臭い、巨大なスペクタクルが次々と起こっていって、最後には、なぜ、そういう世界ができていったのかということがわかるんですけども。また、未来生物、不思議な生物がいろいろ出てくるんですが、その奇妙な生態も面白いんですね。戦いのシーンもすごく迫力があります。で、千年後の未来物語というと、いかにも絵空事のように思われがちですが、今の社会にある生命観とか悪とか、そういうものを突き詰めていくと、こういう社会になっても、こういう世界になっても不思議ではないなと思わせて、リアルに迫ってくる、すごい迫力のある作品ですね。
谷原 松田さん、かなり分厚いですよね、この本。
松田 はい、1000ページ以上あります。いやあもう、ハラハラドキドキするんで、ページが減っていくのがもったいないぐらいで、「もう終わっちゃうのか」という感じで、迫力ありますね。
谷原 ぼくも、是非読んでみたくなりました。
松田 谷原さんは大好きだと思いますよ。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.22)

2008年03月22日

『食堂かたつむり』と「特集・向田邦子」


<特集・向田邦子>
◎向田和子『向田邦子の青春』(文春文庫)
◎向田和子『かけがえのない贈り物』(文春文庫)
◎向田和子『向田邦子の遺言』(文春文庫)
◎向田和子『向田邦子暮らしの愉しみ』(新潮社・トンボの本)
古き良き町並みを残しつつも、新しく生まれ変わろうとしている街・赤坂。この街には、作家・向田邦子さんが似合っていました。今から約40年前、若き日の向田邦子さんは、赤坂にあるTBSの旧社屋でテレビドラマの脚本作りに奮闘していました。そして、「時間ですよ」「寺内貫太郎一家」など、数々の名作を生み出し、高視聴率を獲得して「ゴールデンアワーのゴッドマザー」と呼ばれていました。その後、1980年に『思い出トランプ』に収録された短編三作で直木賞を受賞し、小説・エッセイともに髙い評価を受ける人気作家となりましたが、その翌年、飛行機事故で帰らぬ人となりました。そんな向田さんの仕事を支えていた妹の和子さんと共に、向田さんの仕事の数々を振り返り、とりわけTBSとの関わり、そしてその素顔などについて伺いました。
谷原 向田さんのホームドラマは、本当に血の通った人間と人間とのぶつかりあいとかやりとりとかがあったと思うのですが、今も愛される向田さんの作品の魅力といいいますと。
松田 作家としても、エッセイや小説は読み継がれていますが、いま読んでもみずみずしいんですね。書かれたばっかりみたいな感じで。ささやかな描写とか会話とか、一つ一つないがしろにしてなくて、それがぼくたちの胸に迫ってくるんだと思うんです。たぶんそれは、一つには、赤坂という街を媒介にして、才能豊かな放送人たちと交流して、美味しいものを食べて、仕事をしたということが、この世界をつくってきたんだと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



松田 最近、こんなに心を揺さぶられた本はありません! 小川糸さんの小説『食堂かたつむり』です。
N 作詞家として音楽制作に関わってきた小川糸さんのデビュー作『食堂かたつむり』。倫子が、勤めていた料理店から帰ると、恋人ごと部屋が空っぽ。あまりのショックに声を失った倫子は、ふるさとに帰って、小さな食堂を始める。お客は一日に一組だけ。いつしか、ここで食事をすると、願いが叶うという噂が広まり、店は軌道にのるのだが、倫子はある事実を知ることになる。>
松田 こういう風にお話を要約すると、料理をめぐる心温まるお話という感じなんです。本当に、主人公が心を込めてつくる料理が美味しそうなんですね。それだけでも、読んでいてとっても豊かな気持ちになれるんですけども、この物語はそれだけでは終わらないで、あることをきっかけにして、本当に衝撃的な出来事に直面するんですね。まあ、比喩的に言うと、メリーゴーラウンドか観覧車に乗っていたつもりが、突然、ジェットコースターに変わっているということになるんです。ただ、最後まで読むと、本当に深い感動があるし、生きてることとか、食べることの本質みたいなものをわからせてくれる、素晴らしい小説だっていうことがわかるんですね。まだ、3月で早いと思われるかもしれませんけども、今年の「ブランチBOOK大賞」の「新人賞」に決めちゃおうかと思っています。
谷原 はやっ。早いですよ。
優香 早いですよね。でも、それぐらい良かったですよ。
谷原 優香ちゃんも読んだんだよね。
優香 はい。先週、谷原さんも号泣したって言ってたじゃないですか、本(『のぼうの城』)を読んで。私も久しぶりに号泣しました。もう、溢れ出てくるんですよ。重松清さん(『その日のまえに』)も大好きで、家族ものってすごく好きで、いつも泣いてたんですけども、それ以来の感動でした。松田さんに、「この本、甘く見てると痛い目にあうよ」と紹介されたんですよ。で、どんなことがあるんだろうって読んでいて、表紙も可愛らしいし、名前も『食堂かたつむり』って可愛らしいし、でも、ほのぼのしてるから、えっ何なんだろう、松田さん、何だったんだろうって思いながら、それも忘れるぐらい入り込んで、どんどん見てったら、バアーって(涙を流すしぐさをして)。母と娘のお話なんで、私にはジーンとドンピシャにはまって……。
松田 読んだ人と話したいんですよ。さっきもね、優香ちゃんと話してて、もっともっと話したいって感じで……。
優香 はい。
松田 みんな読んで話したいなあって思いますね。
優香 えみちゃんにも是非読んでもらいたい。
はしの いま、すっごく読みたくなりました。読みますよ。
優香 谷原さんも、慶太くんも祥太くんも。
谷原 みんなで読んで、語り合いましょう。みなさんも一緒に語り合いましょう。号泣してください。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.15)

2008年03月16日

『のぼうの城』と「特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』」


 <総合ランキング>  (3/2~3/8 有隣堂書店全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 3位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 4位 堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店)
 5位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 6位 西尾維新『零崎曲織の人間人間』(講談社)
 7位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
 8位 トルーマン・カポーティ、村上春樹訳『ティファニーで朝食を』(新潮社)
 9位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
10位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



<BOOKニュース>
◎ルーシー&スティーブン・ホーキング『宇宙への秘密の鍵』(岩崎書店)
あのホーキング博士と娘さんが、子どもたちのために書いたスペース・アドベンチャー。


<特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』>
◎水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



ベストセラー『ウケる技術』の著者がおくる、愛と感動の自己改革「笑」説。主人公は、「人生を変えよう」と何かを始めるけれど、全部三日坊主に終わってしまうサラリーマン。そういう彼の前に、ある日突然、ゾウの姿をした「ガネーシャ」という神様が現れ、こう言います。自分が出す簡単な課題さえこなしていけば、お前は成功すると……。作者の水野さんは、モテないことを原動力に恋愛マニュアル200冊を読破、さらには就職活動に役立てようと自己啓発本200冊を読破したのですが、どちらでも失敗するというイタい過去がありました。本書では、そんな水野さんが、実際に実践して良かった教えを厳選して、おもしろおかしく紹介しています。100万部に届く勢いで売れているこの本の作者・水野さんの仕事場を直撃、インタビューしました。
谷原 松田さん。この本が一気にブレイクした理由は?
松田 「こうすれば成功する」という本は山ほどあるんですけども、こんなに笑える自己啓発本って初めてだと思うんですね。「ガネーシャ」というゆるーいキャラなんですが、それがいろいろ喋るんですが、すごくインチキくさいんですね。でも、逆に、いろいろ聞いていると面白いから覚えちゃうし、実は、古今東西のいろんな人たちの知恵が詰まっているんですね。それを笑いをまぶして伝えてくれるんですね。タイトルからして、「夢をかなえるゾウ」とダジャレですから、それぐらい気楽な気分でいると、いろんなものが吸収できるということ、ちょっと変わったタイプの面白い本ですね。
谷原 構えずに読めるというわけですね。


<今週の松田チョイス>
◎和田竜『のぼうの城』(小学館)



松田 、血湧き肉躍る戦国絵巻、和田竜さんの『のぼうの城』です。
N まったく新しい時代小説『のぼうの城』。時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が、唯一落とせない城があった。武州・忍城。城主・成田長親は、領民からも「でくの坊」扱いされ、智も仁も勇もないと見られていた。この頼りない城主率いる二千数百の兵は二万の軍勢といかに戦ったのか。実際の史実に大胆な解釈を加えた戦国エンタテインメント小説。>
松田 この城主の長親というキャラクターがものすごく面白いキャラクターなんですね。「のぼう様」、「でくの坊」と呼ばれていて、部下や領民から親しまれている。というよりは、あまりにも頼りないので、支えてあげなきゃしょうがないという気分にさせる、不思議な城主なんです。そこに、豊臣の大軍勢が押し寄せてきて、関東の城はみんな落ちていく。で、弱小な城なんですけども、このお殿様は、なにをとち狂ったのか、「戦おう」って言い出しちゃうわけですよね。そこからが、部下たちの活躍も面白いし、攻める側も攻める側で知恵を使って攻めてくるし、それにスペクタクル・シーンがすごい迫力です。これは、なかなか映画にするのは難しいと思いますが、是非、黒澤明監督が蘇ってきて撮ってほしいと切に思いましたね。
谷原 ぼくも読んだんですけども、のぼうというのが親しまれつつも、バカにされたりしてるじゃないですか。なかに、かぞうという農民が出てくるんですが、忍城が取り囲まれてピンチに陥っているときに、敵方に寝返ってしまって、敵の仕事を手伝っているんですね。でも、ある時、「のぼう」が身を挺して出てきて撃たれるんです。すると、過去にいろんなことがあって侍が嫌いだった、普段は「のぼう」のことを「でくの坊」とバカにしていたかぞうが、実は「のぼう」のことが好きだったんだと気がついて、「よくものぼうを撃ちやがった」と、今度は、また逆に裏切って、それがきっかけで、忍城が唯一落ちない城になるというクライマックスのシーンで、ぼくはボロボロ泣いてしまいました。今年一番の痛快な本でした。皆さん、これは是非、是非読んで下さい。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.8)

2008年03月08日

「特集・益田ミリ『すーちゃん』」


 <総合ランキング>  (2/25~3/2 三省堂書店全店調べ)
 1位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 ドアラ『ドアラのひみつ』(PHP研究所)
 4位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 5位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
 6位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 7位 山田真哉『「食い逃げされてもバイトは雇うな」なんて大違い』(光文社)
 8位 勝間和代『お金は銀行に預けるな』(光文社)
 9位 川上未映子『乳と卵』(文藝春秋)
10位 つつみみか『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店)
谷原 松田さん、『女性の品格』がいまだにランキングで1位ということは、どういう層が買っているんですか。
松田 そうですね。今や300万部を超えて『バカの壁』の410万部に追いつくんじゃないかって言われていますけれど。面白いんですけども、新書っていうのは『バカの壁』もそうなんですが、最初は中高年のオジサンが買いだすんですね。それで売れだすと若い人と女性が買いだすんです。ところが『女性の品格』だけは、はじめっから男女比が75対25で変わらないですし、20代、30代、40代、50代、60代、だいたい同じパーセントで、売れ始めたときも今も売れ続けている。だから、まんべんなくいろんな層にズーッと売れ続けているんですね。たぶん、最近テレビなんかに露出なさっていますが、テレビの影響力が効きやすいかたちなんでしょうね。
優香 「ブランチ」にも出ていただきましたしね。
松田 そうですね。


<BOOKニュース>
◎「GLAMOROUS」4月号(講談社)蜷川実花×10人のヌード


<特集・益田ミリ「すーちゃん」>
◎益田ミリ『すーちゃん』(幻冬舎)
◎益田ミリ『結婚しなくていいですか。 すーちゃんの明日』(幻冬舎)



60万部突破の上野千鶴子『おひとりさまの老後』(法研)をはじめ、いま本屋さんで平積みコーナーができているのが女性の生き方を考える本。そんな『おひとりさま……』と並んで、いま、じわじわと独身OLの間で人気上昇中なのが異色の4コマ漫画『結婚しなくていいですか。』。主人公は、お金も美貌も男もいない三十路半ばの「すーちゃん」。「このままおばあさんになって、仕事もお金もなくて、寝たきりになって、頼る人もなかったら」……。ネギが安いと思って買い物をしながら、すーちゃんは考え続ける。「そしたら、あたしの人生は、歩いてきた人生全部が台無しになってしまうの?って考えたら震えてしまうんだ」。漠然とした将来への不安、大逆転のない「ふつう」な日々。やたらポジティブに走らず、悲劇のヒロインにもならず、「これが私だよな」と淡々と思うすーちゃんに共感が集まっています。そんな「すーちゃん」を描く著者益田ミリさんの仕事場にお邪魔して、この本が生まれたきっかけ、日々のネタ集め、この作品を通して伝えたかったことなどを伺いました。
谷原 ほのぼのとした絵と対照的に、主人公のすーちゃんはとても考えているキャラクターなんですね。えみちゃんも読んだんですよね。
はしの 読みました。30代の独身女性の独り言が、悩みとか思いとかが淡々と飄々と描かれていて、「あ、そういうことを思うことっておかしくないんだな。みんな、ポソッと思っているんだなあ」って思える本ですね。
優香 私も読みました。私もホロッとした一人なんですけれども。ほんとに、絵はほのぼのとして可愛いらしい感じなんですけども、言ってることの一つ一つが重みがあって、ジーンと胸に響くんですよね。本当に鈍感になってしまってはいけないことっていうこともいっぱいあるし、そういうことをわからせてもらえたという本で、なんか面白かったです。
はしの 30代の独身女性にも共感してもらえるし、30代の独身男性も同じようなことを思っているのかなあって……。
松田 そうですね、益田さんという人は、そもそも「つぶやき川柳」というものでデビューした人なので、川柳みたいに短い言葉で気持ちなりをピシッと言う感じがよく出ているんですね。だから、一人の時にポツリとつぶやくことに真実があって、みなさん、自分を鏡に映しているような感じで読んでいるんじゃないかなあって思いますね。
優香 共感できるんですね。
谷原 独身じゃありませんが、ぼくも読んでみます。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.3.1)

2008年03月01日

『5年3組リョウタ組』と「特集・山口隆」


 <月間コミックランキング>(2008.2/1~2/25 文教堂書店全店調べ)
 1位 岸本斉史『NARUTO―ナルト―』41巻(集英社)
 2位 久保帯人『BLEACH―ブリーチ―』32巻(集英社)
 3位 天野明『家庭教師ヒットマン reborn!』18巻(集英社)
 4位 空知英秋『銀魂』22巻(集英社)
 5位 村田雄介『アイシールド21』28巻(集英社)
 6位 大暮維人『天上天下』18巻(集英社)
 7位 北条司『エンジェル・ハート』25巻(新潮社)
 8位 石川雅之『もやしもん』6巻(講談社)
 9位 羽海野チカ『3月のライオン』1巻(白泉社)
10位 ハロルド作石『BECK』32巻(講談社)
谷原 松田さん、羽海野チカさんの9位にランクインした新しい作品ですが。
松田 『ハチクロ』でデビューして、いきなりブレイクしたという人ですけども、今度は青年コミックなんですね。本当に意欲的な人だなあと思います。読み始めると、孤独な青年と、それを包み込むように見守る三姉妹というお話で、本当に目が離せない。これからどうなるんだろうって、楽しみな作品ですね。


<特集・山口隆『叱り叱られ』>
◎山口隆『叱り叱られ』(幻冬舎)



ニューアルバム「音楽の子供はみな歌う」で、日本語ロックに新しいページを開いたサンボマスター。そのボーカル&ギター、作詞作曲を担当する山口隆。彼の初の本格的対談集『叱り叱られ』が、ついに発売。世代、文化、コミュニティの断絶を音楽は越えていけるのか? ゼロ年代にデビューした山口が山下達郎、大瀧詠一、岡林信康、ムッシュかまやつ、佐野元春、奥田民生という、彼が敬愛する6人の巨星たちに、問い、語り、思考した革命的な音楽論。ツアー真っ最中の山口さんを直撃。全身全霊を注いだライブパフォーマンスの原点となった中学生時代のロック体験、今回の対談で印象に残った言葉などをお聞きしました。


<今週の松田チョイス>
◎石田衣良『5年3組リョウタ組』(角川書店)



松田 テレビ番組のコメンテーターとしても活躍していますし、最近は小説を3作続けて発表しました石田衣良さんの『5年3組リョウタ組』という作品です。
N あの石田衣良さんが、学校社会を鮮やかに切り取った作品、『5年3組リョウタ組』。主人公は熱血でもなく内気でもない、ごく普通の小学校教師、リョウタ先生。問題児童にドキドキ、上司のパワハラには無力感。ペーパーワークに押しつぶされそうになりながら、それでも前向きにぶつかっていく姿が爽やかな感動を誘う学園小説です。>
松田 石田さんは、これまで『4TEEN』とか『池袋ウエストゲートパーク』とか、若者たち、少年たちの群像を鮮やかに描いてきたんですが、今度は、教師の目線で子供たちを描くという、初めての試みなんですね。主役のリョウタ先生というのは、教師ものにありがちな「熱血教師」ではなくて、普通の青年なんですね。茶髪でおしゃれなネックレスをして、教頭先生に注意されたり、合コンを楽しみにしていたりするという先生なんです。そういう先生の前に、いろいろな難問が次々と押し寄せてくるんですけども、迷ったり、つまずいたりしながら、前向きに一生懸命にやっている姿が、すごく感動的なんですね。教育問題というと、すごく大げさに構えちゃうんですが、結局、子どもと普通の目線でつきあうことが大事だということを教えてくれる。そういう作品でもあるんですね。
谷原 なるほど、実は翔太君も読んだとか。
翔太 はい。本当に泣けましたね。熱血ではないんですけども、逆にそれが感情移入とかしやすくて。ほんと、ぼくは本とかあんまり読まないんですが、スラッと読めて、本当に楽しかったなと思いました。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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