松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.24)

2008年05月25日

『ブランケット・キャッツ』と「特集・『日本のおかず』&『おつまみ横丁』」


 <総合ランキング>  (5/11~5/17 有隣堂全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 西尾維新『傷物語』(講談社)
 5位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 6位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 7位 岩本薫『YEBISUセレブリティーズ6』(リブレ出版)
 8位 勝間和代『勝間和代のインディペンデントな生き方 実践編』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 9位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
10位 福田健『女性は「話し方」で9割変わる』(経済界)


<特集・『日本のおかず』&『おつまみ横丁』>
◎西健一郎『日本のおかず』(幻冬舎)



各界有名人が愛してやまない、当代最高の割烹「京味」の主人による、待望の「家庭料理」のバイブル。牛肉ごぼう、ぶり大根、にしん茄子、豆あじの南蛮漬け、たらちり鍋、親子丼……なによりのごちそうは、旬の素材をいかした「おかず」です。10年経っても、20年経っても古くならない「家庭料理」の教科書として後世に残したい1冊です。「京味」の常連である阿川佐和子さんにインタビューしました。


◎編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)



横丁酒場で味わえるような、素朴で飽きない、うまい定番おつまみを185品取り揃えました。少ない素材で、3ステップという少ない行程で、呑みながらでも作れる、簡単なおつまみを厳選。今日の一杯、明日の一杯を楽しくするだけではなく、ずーっと使い続けてもらいたい酒の肴集。編集者と料理研究家の瀬尾幸子さんにインタビューし、本の中から1品つくってもらいました。


<今週の松田チョイス>
◎重松清『ブランケット・キャッツ』(朝日新聞出版)



松田 いつも、ぼくたちを感動させてくれる重松清さんの連作小説『ブランケット・キャッツ』です。
N ブランケット・キャッツ、それは、馴染んだ毛布とともに二泊三日でレンタルされる猫たちのこと。「わたしね……泥棒しちゃった……」。猫を借りる人びとには、それぞれ深い事情があった。定年間際に横領してしまった女性、子どもに恵まれない夫婦、リストラされて家を売る一家。今を生きる人々の孤独と幸せを見つめる、感動の連作短編。>
松田 「借りてきた猫」という言葉がありますが、これは文字通り、レンタルされた猫を借りた家族の話なんですね。猫は別に話すわけではないですし、クールなものですから、特別なことをするわけじゃないんです。ただ、猫がひとときある家族にいることで、その家族のゆがみとか問題とか、そこにいる人々の孤独みたいなものがあぶりだされていくんです。いろんなドラマが、そこに生じる。本当にうまいつくりになっているなあって思うんですけども。ぼく自身は、いかにも重松さんらしいなあと思う、リストラされた一家の主が思い出を作ろうとして猫を借りてくるんだけど、家族はそれどころじゃない。「お父さん、なに舞い上がってんのよ」みたいにどんどんバラバラになっていく。だけど、あることをきっかけにして家族がまたきゅっと繋がっていくという。最後はホロリと感動させられる素敵な物語集でしたね。
優香 私も読みまして、本当に重松さんて、なんでこんなすごいんだろうというか、短編で短いんですけども、ギュギュッと詰まっていて。こんなにも違うお話をたくさん書けるって、やっぱすばらしいなあって思いました。それと、私は、この中で唯一、猫目線のお話があって、子どもたち二人が出てくる……。
松田 家出するんですよね。
優香 はい。「旅に出たブランケット・キャット」というんですけども。小さい頃って、動物に守られたいっていう願望ってなかったですか? 空想で妄想でそういうことを考えていたんですけども、まさにそういう感じで、猫が助けてくれたり、守ってくれたり、それがまた、ホンワカ、ジーンとして、とても温かいお話で、本当に気持ちいいですよね。
松田 そうですよね。気ままに生きているような猫なんだけど、それが逆に癒しになるという、すごくいいお話ですよね。
優香 猫の気持ち、よく分かっているな重松さんという感じですね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.17)

2008年05月17日

「特集・川上弘美『風花』」


<総合ランキング>  (5/5~5/11 オリコン調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 3位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 4位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 5位 『ヘキサゴンドリルⅡ』(扶桑社)
 6位 西尾維新『傷物語』(講談社)
 7位 TBSイブニングファイブ『余命1ヶ月の花嫁』(マガジンハウス)
 8位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 9位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
10位 『ポケモンぜんこく全キャラ大事典』(小学館)


谷原 松田さん、最近のランキングだと実用書が目立つんですが、小説はどうなんですか?
松田 総合ランキングだとどうしてもノンフィクションが強くなっちゃうんですが、小説の方で言うと、本屋大賞の『ゴールデンスランバー』が山本周五郎賞も受賞して話題になっています。これから、ベテラン、新人、いろいろ話題作が目白押しなので楽しみだと思います。


<特集・川上弘美『風花』>
◎川上弘美『風花』(集英社)



『センセイの鞄』、『夜の公園』、『真鶴』など、恋愛小説の名作を次々と生み出してきた川上弘美さんが、一組の夫婦にフォーカスを絞って書く、初めての小説『風花』を発表しました。主人公は結婚7年目の「のゆり」。彼女は、ある日、匿名の電話によって、夫の卓哉に恋人がいることを知らされます。離婚をほのめかす夫、夫婦の間にたちこめる、微妙なざわめき。途方に暮れながら、揺れ動きながら、自分と向き合い、少しずつ前に進むようになった「のゆり」、33歳の物語。何気ない日常のささやかな描写を織り交ぜながら、自分の人生と夫との距離を見つめ直す女性の心理をきめ細かく描いた恋愛小説の傑作。この作品が、どのように誕生したのか、川上さんが考える「夫婦」とは、「結婚」とは。2年前の「ブランチ」登場以来のTV出演となる川上さんが、気軽にインタビューに答えてくれました。(レポーター:金田美香)


<VTR>
私(松田)もロケに同行して、川上さんの話を聞かせていただきました。VTRでも出てきましたが、特に印象に残った言葉を二つ再録してみます。
*主人公の「のゆり」が「結婚」についてゆるやかに問うていく。そういう描写を通して描きたかったものは?
川上「私の年代っていうのは、仕事を続けるにしても、辞めるにしても、結婚はするもんだという、そういう風に、なんとなく思っていた最後の年代のような気がするんですけれども。いまの20代、30代の女の人たちは(男の人も同じだと思うんですけど)、こうあるべきだということがなくて自由と言えば自由、でも、じゃあ自分たちはどうしたらいいのか、いろいろな選択肢があるだけに、きちんと考えようとすればするほど迷っちゃうんじゃないかなって思うんです。……でも、それはものすごく幸せなことだと思うんですよね。……自分で選んで、どんなに拙く見えても、どんなに幼く見えても、一歩一歩自分で何かを掴んでいってほしいなあって思って書いていったような気がします。」
*川上さんは、この作品を書くことで何を伝えたかったのか?
金田「のゆりと卓哉を通して川上さんが伝えたかったことというのは?」
川上「それ、難しい質問なんですよ。たぶんね、小説を書いてて、伝えたいことって、私はないかもしれない。それよりも、とにかく読んでいただいて、その読んだ方が、何かを感じてくだされば嬉しい。その触媒、きっかけになれば嬉しいなあ。私が書いた通りのそのものを、『あ、そうですか』と受け取って、その通りのままっていうんじゃなくて、一行があったら、その一行で自分のことを考えたり、今までのことを思い出したり、それで、全然違うことを考えたり、それが、もしかすると一番嬉しいかもしれない。」


<スタジオ>
優香 私も、この『風花』読みましたけれども、恋愛小説って、ちょっと苦手な意識があったんですけども、すごく読みやすくて。なぜかと思ったら、恋愛だけじゃなくって、現実的なことが、ちょうどいい具合に混ざり合っているんで、すべてがリアルというか。白黒ハッキリつけたいし、だけどグレーな部分も、あっ、やっぱあるよなあって思って。そのグレーの部分がリアルなんですよ。
谷原 ぼくも読んだんですけども、正直言って、怖かったです、この本、男の立場からすると。女性が主体にして描かれているんで。男って理屈っぽいけども、実は夢見がちで、女の人は一見受け身に見えるけども、決断したらとっても現実的なんだなって感じて。
優香 最終的に思ったのは、女の人は強いなっていうこと。優柔不断だけど、最後にはね。谷原 とっても芯が強いですよね。この本読んでいて、途中から、ある女優さんをイメージしていたんですけども、和久井映見さんの顔が、すっと浮かんできたんですよね。松田さん、川上さんの物語は面白さに加えて文章のうまさも言われていますね。
松田 そうですね。いま言われたような感想をもたれるというのは、このしなやかでなめらかな文章なんですね。こういう文章だからこそ、非常に深い心理的なものをえぐり出すこともできるんですね。この小説は、夫婦の危機の物語ですね。激しい修羅場はひとつもないんですよね。静かに静かに二人の関係が壊れていく、だけど、その中で、新しい感情が少しずつ少しずつ育っていくんです。読む人によっては、それを「怖い」と思うかも知れませんし、ある種の「優しさ」というかな、大事なものを大切にしたいという意味での優しさもあると思うんですよね。だから、川上さんが最後に言ってましたが、読む人によって、感じ取り方が全然違う。もしかすると、読んでいる人の心理が写る鏡みたいな作品なんじゃないかなっていう気がしましたね。
優香 これも、読んだ後に、みんなで話し合える本ですよね。
松田 男の人も女の人も、年配の人も若い人も、それぞれの読み方をすると思いますね。
谷原 美香ちゃん、お目にかかって、とても雰囲気のある方でしたね。
金田 そうなんですよ。まるで、小説の主人公の方のような存在感があるんですよね。でも話すと、優しくて包み込んでくれるような、お母さんのような印象も受けますし。女性の魅力がたっぷりで、憧れですね。
谷原 世の男性にも是非読んでいただきたい恋愛小説です。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.10)

2008年05月10日

「特集・劇団ひとり&立川談春」


<総合ランキング>  (4/28~5/4 オリコン調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 『ヘキサゴンドリルⅡ』(扶桑社)
 5位 西健一郎『日本のおかず』(幻冬舎)
 6位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 7位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 8位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
 9位 『無双OROCHI魔王再臨 コンプリートガイド』(光栄)
10位 『CINEMA SQUARE Vol.18』(日之出出版)


<特集・劇団ひとり&立川談春>
◎劇団ひとり『そのノブは心の扉』(文藝春秋)



お笑い芸人としては、総勢十数名のキャラクターを演じ分け、俳優としては映画「嫌われ松子の一生」、TVドラマ「電車男」「純情きらり」で好演し、作家としては小説『陰日向に咲く』がベストセラーになり、映画化もされた。今、ノリにノっている男「劇団ひとり」の初のエッセイ集が刊行されました。“ひとりで遊び、ひとりで悩み、ひとりで書いた”この本。めくるめく「ひとりワールド」が全開です。劇団ひとりさんにインタビューしました。


◎立川談春『赤めだか』(扶桑社)



17歳で天才・立川談志に入門。「修業とは矛盾に耐えることだ」と言われ、理不尽に怒ったり、思わぬところで優しかったりする師匠に翻弄される苦闘と苦笑の日々。「上の者が白いと言えば黒いもんでも白い」という前座生活の苦労と二つ目になることができた喜び。笑わせて、泣かせて、しっかり心に残る修業物語。落語家達の奇妙な生活を活き活きと描き、落語の面白さを教えてくれる一冊。高座前の談春さんを直撃しました。


谷原 松田さん、この2作品の魅力は?
松田 劇団ひとりさんは、本当に文章がうまい人で、このエッセイ集でも、奇矯な行動を、わりに淡々と報告するんですね。面白おかしくしようとしない。だから逆に、読んでいると面白さが増していくという文章芸がある人ですね。立川談春さんも、笑いをとろうとしないで、淡々と奇妙な世界を書いていくんですが、読み進めるにしたがって、ふつふつと笑いがこみ上げてきます。だから、二人とも笑いのコツみたいなものをちゃんと掴んでいる人だなあって思います。また、立川談志さんというキャラクターがメチャクチャ面白いので、それを読んでいくのも楽しみですね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.3)

2008年05月04日

『さようなら窓』と「特集・森田まさのり『べしゃり暮らし』」


<総合ランキング>  (4/21~4/27 文教堂書店全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 『あいのり10 Fate~めぐり逢い~』(学研)
 5位 北方謙三『楊令伝5 猩紅の章』(集英社)
 6位 小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)
 7位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
 8位 高橋克徳他『不機嫌な職場―なぜ社員同士で協力できない』(講談社)
 9位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
10位 伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』(新潮社)


<特集・森田まさのり『べしゃり暮らし』>
◎森田まさのり『べしゃり暮らし』1~5(集英社)



累計5000万部を超える大ヒット作となった『ろくでなしBLUES』で連載デビューし、現在放送中のドラマ「ROOKIES」の原作者でもある森田まさのりさんの最新作『べしゃり暮らし』を特集しました。ウケるためなら命がけ!? 吉竹高校3年の吾妻圭祐は自称「学園の爆笑王」。その才能を昼の放送で遺憾なく発揮していた。ある日、大阪から転校してきた元芸人・辻本潤と出会い、コンビを結成。紆余曲折しながらもプロのお笑い芸人を目指す青春ストーリー。森田さんの作品の特徴は、超リアルで写実的な絵。その秘密は、森田さん自らによるカメラ取材にありました。今回は、お笑いライブの舞台裏取材に同行し、その綿密な取材ぶりを目の当たりにします。また、仕事場では、森田さんが、最も神経を使うという、人物の表情を描く瞬間も披露してくれました。また、作品への熱い思いも語っていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎東直子『さようなら窓』(マガジンハウス)



松田 歌人の東直子さんが書いた最新長編小説『さようなら窓』です。
N この家はあたしの家じゃない。ゆうちゃんの家。繊細な感受性から複雑な家庭に疲れてしまったきいちゃん(築)。そんな彼女が安らかに眠れるように、彼氏のゆうちゃん(佑亮)は夜ごとお話を聞かせてくれる。それはどこかはかなく哀しい人たちのお話だった。きいちゃんが優しいゆうちゃんにさよならするまでが綴られる、切なくも温かい恋物語。>
松田 主人公のきいちゃんに、本当に心優しいゆうちゃんが夜ごとに話をしてくれるんですね。そのお話に包まれて、幸せな時を過ごしているんです。言ってみれば「現代版・千夜一夜物語」といったテーストのお話なんですね。そのお話に出てくる登場人物は、どこかはかなげで、哀しみを抱えていて、だけど、一話一話、とってもしみじみ温かさを感じさせられるお話なんですね。繊細なきいちゃんなんですけども、縁の薄かった実の父親の最期を看取ることになって、そのことがきっかけになって、自分の足で歩きだす。自分の哀しみみたいなものを抱えながら、歩き出そうとして、それで、優しいゆうちゃんと別れる、「さようなら」する。だけど、悲しい別れじゃなくて、自分がもっと成長していくための別れなんで、きいちゃんに「また逢おうね」って言いたくなるような優しいラストなんですね。
小林 本当にゆうちゃんが優しくて、こんな優しい男性がいるのは、きいちゃん幸せ者だなあって思いながら読んでいたんですけども。東さんの独特の表現で、ゆうちゃんがきいちゃんにお話してくれるお話の登場人物とかが、すごく不思議なんだけど、また愛すべきキャラクターで、なんかあったかくなるような。私は、こういう恋愛もあるんだなと最後に思いました。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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