松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.28)

2008年06月28日

「特集・伊集院静『羊の目』」


<総合ランキング>  (6/15~6/21 有隣堂全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『AB型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 勝間和代『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 5位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 6位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 7位 中村俊輔『察知力』(幻冬舎)
 8位 前田敬子・岡優太郎『まこという名の不思議顔の猫 続』(マーブルトロン)
 9位 姜尚中『悩む力』(集英社)
10位 五木寛之・香山リカ『鬱の力』(幻冬舎)
谷原 松田さん、今週のランキングですが、『鬱の力』、『悩む力』、『察知力』、『フレームワーク力』と、タイトルに「力」という文字を使った本が人気を集めているようですが。
松田 結構、流行りみたいですね。注目したいのは、「鬱」とか「悩む」とか、どっちかというと「力」とは反対の、ネガティブなイメージの言葉を組み合わせるというのも多いんですね。『老人力』や『鈍感力』もそうだったんですが、わりと大ヒットに繋がるんですが、そのミスマッチが逆にインパクトになっているんですね。
谷原 ネガティブなものに力を付けることでポジティブに変えていくという。
松田 逆にひっくり返すということですね。


<特集・伊集院静『羊の目』>
◎伊集院静『羊の目』(文藝春秋)



1992年、『受け月』で直木賞、1994年、『機関車先生』で柴田錬三郎賞を受賞し、人と人の絆を温かく、時に優しく描いてきた伊集院静さん。彼は作詞家として近藤真彦に提供した『愚か者』で、1987年に日本レコード大賞を受賞、その他『ギンギラギンにさりげなく』などのヒット曲も生み出しています。そんな伊集院さんの最新作『羊の目』は今までの作品とは一線を画しています。初めてエンターテイメント性を意識したというストーリー展開。実はその裏には以前かわした高倉健さんとの約束があったということです。読後に浮かび上がってくる「家族」や「死」などのキーワードを伊集院さんはどう考えるているのか、伊集院さん自身の怒涛のような人生と小説の内容をリンクさせながら紹介します。小説の舞台でもある浅草・隅田川のほとりに佇む日本家屋でインタビューし、最後に達筆の伊集院さんに「美は強い」と描いていただいた書を拝見。その言葉に託する思いを伺います。
<あらすじ>
昭和8年、ある捨て子が武美と名付けられ戦前の浅草で育つ。 「裏切る事は卑怯なこと」という「任侠の掟」を教えられ、武美は自分を拾ってくれた辰三のために、命ぜられるまま殺しを重ねていく。しかし東京進出を図る四宮組の親分の命を狙うも失敗。武美はロサンゼルスへ逃れるが、その地でも追ってきた四宮組の刺客との死闘を演じる。その後、武美はある人の手引きで安全な場所、すなわち刑務所で25年過ごす。出所後に舞い戻った東京で、任侠として、武美の最後の戦いが繰り広げられる。


谷原 松田さん、『羊の目』ですが、いかがでした。
松田 とてつもないスケールのエンタテインメントで、終始圧倒されるんですけどもね。主人公の少年が「男」になっていく、育っていく姿がすごく印象的ですし、それと同時に、
彼が信奉しているピュアでタフなアウトローの美学みたいなものがものすごい迫力で迫ってくるんですね。今の時代、いろんな意味で指針を揺れているというか、見失いつつある時代なんで、こういう一途な男の生き方というものが語りかけてくるものは、ものすごく大きいなっていう気がしますね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.21)

2008年06月21日

『田村はまだか』と「特集・槇村さとる『Real Clothes』」


先週(6月14日)は、9時前に発生した岩手・宮城内陸地震の影響で、「王様のブランチ」が中止になりました。そのために、先週の予定だった「特集」「松チョイ」が今週に繰り越しになりました。


<コミック・ランキング> (有隣堂アトレ恵比寿店 6/9~6/15)
 1位 尾田栄一郎『ONE PIECE』50(集英社)
 2位 浅野いにお『おやすみプンプン』3(小学館)
 3位 矢沢あい『Nana』19(集英社)
 4位 西村しのぶ『ライン』4(講談社)
 5位 瀧波ユカリ『臨死!!江古田ちゃん』3(講談社)
 6位 星野桂『D.Gray-man』15(集英社)
 7位 天野明『家庭教師ヒットマンreborn!』20(集英社)
 8位 黒丸・夏原武『クロサギ』19(小学館)
 9位 すえのぶけいこ『ライフ』18(講談社)
10位 井上雄彦・吉川英治『バガボンド』28(講談社)


<特集・槇村さとる『Real Clothes』>
◎槇村さとる『Real Clothes』1~4(集英社)



働いている女性の仕事や恋に対する等身大の悩みをリアルに描き、今、普段マンガを読まない20~30代の女性たちの間で、じわじわと人気となっているのが、槇村さとる『Real Clothes』(5/19・4巻発売・累計42万部)。主人公は、大手百貨店「越前屋」のふとん売り場勤務の天野絹恵(27)。「服なんてどうでもいい。表皮一枚のことじゃない」と思っていたのに、突然、エリート中のエリートが集まる婦人服第3部に異動……!? その手腕で4時間で1000万円を売り上げる部長・神保美姫や、その部下でやり手のバイヤーの田淵など、くせものぞろいの現場で、絹恵の人生が大きく動き始める……。35年にわたってマンガ界の第一線で活躍。作品には自分の働き方も反映していると語る槇村さん。今回はその仕事場での様子を紹介しつつ、読者から「力をもらえるセリフ」と評判の槇村流セリフ作り術など、作品作りの秘密について伺いました。


<今週の松田チョイス>
◎朝倉かすみ『田村はまだか』(光文社)



松田 久しぶりに、とっても気持ちのいい感動を与えてくれた長編小説、朝倉かすみさんの『田村はまだか』です。
N 札幌ススキノにあるとあるバーで、小学校の同窓会を終えた40歳の男女五人が「田村」を待っていた。大雪で列車が遅れ、クラス会に間に合わなかった「田村」。それぞれがある人との思い出を語り始めるが、「田村」はまだ来ない。人生にあきらめを覚え始めた世代が語り過ごした一夜は、怒涛の感動とともに幕を閉じる。>
松田 この作品は、絶妙な語り口のお話なんですね。クラス会で流れてきて、バーでグダグダ飲んでいる5人の男女という話なんですけども。なんとなく、名優揃いの舞台劇を観ているみたいな感じで、なんだか、バーのカウンターのこっち側にいて、彼らの話を盗み聞きしているみたいな臨場感があるんですよね。
優香 はい、そうなんです。私も読みました。本当におっしゃるとおりで、バーの空間がとっても良くて、みんなが「田村はまだか」って言うんですけども、そのセリフを言いたくなるように、田村さんを待っちゃうんですよね。
松田 そうですね。それで田村はなかなか来ないんですね。
優香 全然、来ないんですよ。
松田 その間に、ちょうど40歳の5人のそれぞれの人生が語られていくんですけども、いろいろ屈折していて、ちょっと人生を諦めかかっている人もいたりして。話を聞いていくと、なんで田村に会いたいと思っているかということがわかってくるんですね。それで、でも、田村はやってこないんですよ。ただ、最後には、人生っていろいろあるけどいいんだなあって、ある種深い感動のようなものが残る、不思議なテイストのお話ですよね。
谷原 田村は来るのか来ないのか、是非松チョイしてみてください。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.6.7)

2008年06月08日

『東京島』と「特集・和田竜」


<総合ランキング>  (5/26~6/1 文教堂書店全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 松本ぷりっつ『うちの三姉妹 7』(主婦の友社)
 5位 『ファイナルファンタジー11電撃の旅団編ヴァナ・ディール公式ワールドガイド アルタナの神兵編』(アスキー・メディアワークス)
 6位 桐野夏生『東京島』(新潮社)
 7位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 8位 氷川きよし『氷川きよしフォトエッセイ KIYOSEAON』(主婦と生活社)
 9位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
10位 宮部みゆき『孤宿の人 上』(新人物往来社)


<特集・和田竜>
◎和田竜『のぼうの城』(小学館)



◎和田竜『忍びの国』(新潮社)



時は乱世、天下統一を目指す秀吉の軍勢が唯一落とせない城があった。それは、周囲を湖に囲まれ「浮城」と呼ばれていた武州・忍城。城主・成田長親は何があっても泰然としていて、領民から「のぼう様」と呼ばれ、誰も及ばぬ人気があった。この忍城とその城主の物語『のぼうの城』は、3月15日放送の「松田チョイス」で取り上げ、谷原さんが大絶賛。今回、この小説に登場するお城のゆかりの土地・埼玉県行田市を和田さんが案内してくれ、創作秘話を聞かせてくれました。また、あわせて新作『忍びの国』についても語っていただきました。この新作は、戦国大名不在の国、伊賀の国に織田軍一万余が攻め込み、そこで繰り広げられた壮絶な戦いを描く。自らの欲のみに生き、他人を平気で踏みにじる、人でなしの集団である伊賀の忍びの者たちの人間離れした術と、この戦いの陰に咲いた純愛など、個性的なキャラクターが次々に登場し、息を継がせない戦いの場面が連続する戦国エンタテインメント大作。
谷原 松田さん、新作の『忍びの国』、いかがでした。
松田 『のぼうの城』も引き込まれるように読みましたが、新作『忍びの国』は伊賀の話なんですが、なんだか伊賀の忍者に首根っこを掴まれて、戦国の戦乱の中に投げ込まれたような、本当に、ハリウッド映画のような臨場感があって……。力のある若手の時代小説作家がうまれて、これから楽しみだなと思いますね。
谷原 やはり、『のぼうの城』に続くエンタテインメント時代劇なんですね。
松田 そうですね。とっても映像的ですからね、これも是非、映画にしてほしいと思いましたね。


<今週の松田チョイス>
◎桐野夏生『東京島』(新潮社)



松田 いつも強烈な作品でぼくたちの心を揺さぶる桐野夏生さんの最新長編小説『東京島』です。
 桐野夏生の問題作『東京島』。「あたしは必ず、脱出してみせる」。32人が流れ着いた無人島に、女は清子ひとりだけ。いつまで待っても助けは来ず、いつしか若者達は島をトウキョウ島と呼ぶようになる。果たして、ここは地獄か楽園か? 欲望をむき出しにして生きていく人間たちの姿を容赦なく描いて、読む者の手を止めさせない問題作、ここに誕生!>
松田 桐野さんは、これまでも極限状況に置かれた人間の、ギリギリと苛むようなシチュエーションを書いてきたんですけども、今回も凄まじい。31人の男と1人の女が無人島に漂着して、人間同士の対立とか嫉妬とか、人間のいやらしい部分がさんざんあって、それに直面せざるをえないような状況があって。だけども、読み進んでいくと、意外なことが次々と起こっていって、この人たちの運命が一変してしまうんですね。なかなか、読まないとわからないんですけども……。で、最後まで読むと、人間って結構強いんだなあ、たくましいんだなあという希望みたいなものが見えてくる、不思議なテイストの作品なんですね。なんか、優香ちゃんも読もうと思って……。
優香 本屋さんで、気になって買ってはいたんですけども……。きょう、紹介聞いて、やっぱり読もうと思いました。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.5.31)

2008年06月01日

『菜種晴れ』と「特集・石田衣良“恋愛の極意”」


 <総合ランキング>  (5/19~5/25 三省堂全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
 4位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 5位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 6位 鈴木貴博『カーライル』(ダイヤモンド社)
 7位 築山節『脳と気持ちの整理術』(日本放送出版協会)
 8位 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)
 9位 野口嘉則『3つの真実』(ビジネス社)
10位 中日新聞社『ドアラ・チック』(PHP研究所)


<特集・石田衣良“恋愛の極意”>
◎石田衣良『傷つきやすくなった世界で』(日本経済新聞出版)



◎石田衣良ほか『恋のトビラ』(集英社)



1997年、『池袋ウェストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。2003年には、『4TEEN』で第129回直木賞を受賞。現在、連載小説を9本、エッセイを4本抱えている、超人気作家・石田衣良さん。これまで、小説やエッセイを通して、若い世代を見つめ、メッセージを送り続けてきた石田さん。この10年で、人びとは余裕を失い、傷つきやすくなってしまったという。それは、「恋愛」についてもいえるのだそうです。今回は、、この5月の刊行された最新エッセイ集『傷つきやすくなった世界で』とアンソロジー小説集『恋のトビラ』のお話を糸口に、リポーター・白石と恋愛談義に花を咲かせました。これを受けて、スタジオでも恋愛談義になりました。谷原さんは、ぼくのもそのネタで振ってきましたが、受けにくいのでかわしてしまいました。
松田 恋愛論も含めて、ああいう風に発言する作家の人って珍しいんですね。みんな作品だけ書いている人が多くて。だから、ああいう人って先輩としては貴重だと思うんですよね。アドバイスしてくれる作家として、知識人として。


<今週の松田チョイス>
◎山本一力『菜種晴れ』(中央公論新社)



松田 女性の心にも響く人情時代小説、山本一力さんの『菜種晴れ』です。
 江戸末期、地方の菜種農家に生まれた二三(ふみ)は、わずか五歳で江戸深川の油問屋の養女となる。泣くのは一人の時だけ、過酷な試練にさらされながらも、気丈に新しい生活を受け入れ、力強く生き抜いていく。なぜなら、二三は人びとをうならせる絶品の天ぷらを作ることができたから。幕末の江戸、困難に立ち向かい、前へ前へと歩んだ一人の少女の波瀾万丈の半生を描く長編時代小説。>
松田 なんと言っても、主人公の女性のキリッとした姿が目に浮かぶようで、それがとても素敵なんです。この魅力的なヒロインを取り囲んでいる、周りの人たちも情が厚い人たちばかりで、とても素敵なんです。こんな素敵な人たちに、実は、過酷な運命が襲いかかる、だから読んでいて、胸を締め付けられるような辛い気持ちになります。でも、主人公は、どんな状況になっても、けなげに真っ直ぐに生きていくんですね。本当に素晴らしい感動的な時代小説だなあって思いましたね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、二三は田舎の農家から江戸にもらわれていって、環境の変化というか、試練とかがいっぱいあるじゃないですか。でもそういうものに負けないで成長していく、そういう一人の成長物語として、一代記としていいなと思いました。あとそれから、今の日本人がなくしてしまったものが、ここにあるような気がします。
松田 そうですね。江戸町人の品格のようなものが、すごく伝わってきますね。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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