松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.26)

2008年07月27日

『もやしもん』と「特集・『上地雄輔物語』」


<BOOKニュース>
◎小林武史+AP BANG!『環境と欲望』(ポプラ社)



今年3月、小林武史の呼びかけによって集まったクリエイターやアーティストたちによって催されたイベント「AP BANG! 東京環境会議 TOKYO CREATORS MEETING」。ここから、昨今の環境問題のキーワードが見えてくる1冊の本が生まれました。SHIHO、茂木健一郎ほかのインタビュー、井上陽水と小泉今日子の対談などを収録しています。


<特集・初フォト&エッセイ『上地雄輔物語』>
◎上地雄輔『上地雄輔物語』(ワニブックス)



「ホントに俺が書きましたっ!」と強調するかのように、執筆のみならず、企画、構成、デザイン案まで手がけたという自信作。なんと、15日に締め切られた予約だけで6万部突破! 発売前からベストセラー間違いなしといわれる本書は、やんちゃだった少年時代、松坂選手(現レッドソックス)らとともに野球に明け暮れた青春時代、そしてブレイクした現在までを綴ったエッセイ。それに、故郷・横須賀をはじめ、思い出の地を巡るオール撮り下ろし写真を収録しました。このフォト&エッセイ集の発売直前、多忙きわめる上地さんへの独占インタビューにブランチだけが成功しました。少年時代のこと、青春をかけた野球のこと、偉大なる後輩・松坂のこと、本には書かなかった恋愛観などを伺いました。さらには、本に込めた熱い思いについても、惜しむことなく語った素顔満載のインタビューをお送りしました。


<今週の松田チョイス>
◎石川雅之『もやしもん』1~6(講談社)



松田 かなり風変わりだけど面白いコミック、石川雅之さんの『もやしもん』です。
 今年、二つの漫画賞(第12回手塚治虫文化賞マンガ大賞、第32回講談社漫画賞・一般部門)を受賞したことで話題が高まっているコミック、石川雅之『もやしもん』。「かもすぞー」。キャラクター化された菌たちが空中を飛び交い、しゃべる、世にも奇妙な菌漫画。タイトルの「もやし」とは酒造りなどに使う種麹のこと。主人公は「某農業大学」に入学した沢木惣右衛門直保。もやし屋の跡取りである彼は、菌が見え、さらに会話までできるという特殊能力をもっていた。直保は風変わりな教授やくせのある仲間たちと出会い、さまざまな騒動に巻き込まれていく。>
松田 これは、農業大学を舞台にした、ある種の学園ドラマ、青春ドラマなんです。いろんな奇妙な行事があったり、変な酒屋の謎を追求したり、そうかと思うと、突然、ブルゴーニュに飛んで、ワインのことを研究したりとか、不思議な話なんです。実は、読んでいくと、本当の主役は何かということがわかって来るんですね。菌やウィルスなんですね。発酵菌とか乳酸菌とかばい菌とか、そういう菌たちが発酵とか腐敗のメカニズムを説明してくれるんですね。すごく可愛いキャラクターなんですよ。最初は、「なんだか説明の多い漫画だな」と思うのですが、それが、だんだん楽しみになってきて、実は、この世の中っていうものは、フラフラしている人間たちが支えているんじゃなくて、しっかり働いている菌たちが支えているんだっていうことがよくわかるっていう面白い漫画です。
谷原 はい。世界は菌に満ちている。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.19)

2008年07月19日

『聖域』と「特集・茂木健一郎『脳を活かす勉強法』」


<BOOKニュース>
15日、第139回芥川賞・直木賞が決定しました。芥川賞は楊逸(ヤン・イー)さんの『時が滲む朝』、直木賞は井上荒野さんの『切羽へ』でした。
◎楊逸『時が滲む朝』(文藝春秋)



◎井上荒野『切羽へ』(新潮社)



谷原 松田さん、楊さんが中国人として初の芥川賞受賞で話題になっていますけども、直木賞の井上さんはどんな方なんですか。
松田 微妙な女性心理の揺らぎを繊細に描いていることで定評がある作家なんですね。これからも、成熟した女性の恋愛小説をいろいろ読ませてもらえるんじゃないかと思って、楽しみな作家ですね。


<特集・茂木健一郎『脳を活かす勉強法』>
◎茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)



脳と心の繋がりをわかりやすく解説して、現在65万部を突破した『脳を活かす勉強法』。その内容をより多くの学生に理解してもらおうと、都内の中学校で実践授業が開催されました。そこでは著者の脳科学者・茂木健一郎さんが壇上に立ち、脳の血流の流れる様子のグラフィックをリアルタイムでモニターで見られる装置を生徒に装着し、その状態で問題を出して、負荷を掛けたときの脳の状態を解説していました。今回は、その装置をレポーターのちえみちゃんにも体験させて頂きます。簡単な計算問題を解く際、時間の制限がない場合とある場合でどのように脳の状態が変化するのかをチェック。ゲーム感覚で進んでいく授業……。茂木さんの狙いはそこにありました。実は茂木さんもはじめから勉強ができたわけではないと言うことです。あることがきっかけになって、勉強を楽しいと思うようになり、それで脳内物質のドーパミンが分泌され、意欲を引き出していったんだとか。夏休みを機会に色々なことを体験し、楽しいと思うことを発見してほしいと語っていただきました。


<今週の松田チョイス>
◎大倉崇裕『聖域』(東京創元社)



松田 フレッシュな山岳ミステリーの傑作、大倉崇裕(たかひろ)さんの『聖域』です。
 安西おまえはなぜ死んだ? マッキンリーを極めたほどの男が、なぜ難易度の低い塩尻岳で滑落したのか。事故か、自殺か、それとも――。好敵手であり親友だった安西の死の謎を解き明かすため、山に背を向けていた草庭は、再び山と向き合うことを決意する。気鋭のミステリー作家が満を持して挑戦する山岳ミステリーの大傑作。>
松田 この作品は、グイグイと読まされる力とか、大自然や人物たちがクッキリと立ち上がってくるとか、本当に骨太な、読み応えのある力作なんですね。特に自然描写が素晴らしくて、特に山の描写が。たぶん、山に行ったことがある人も、ない人も、雪山の厳しいけれども美しい情景には惹きつけられると思うんですよね。そういう自然の中で育まれていく山の仲間たちのものすごく篤い友情と、それがそのままいかないように俗世間のいろんなことがからんでいって、事件が起きるんですけども。で、謎解きも意外性がありますし、最後には感動的なラストシーンが待っているという。今の暑さを吹き飛ばすよな、爽快なミステリーという感じがしましたね。
谷原 松田さんがおっしゃったように、ぼくも1日半でグイグイと引き込まれて読んでしまったんです。山の小説ということで、ぼく自身、山に登ったことはないんですけども、なんか、ぼくも山に登ったことがあるんじゃないだろうか、と知ったような気持ちになすなるような、「山もの」の読み物としての楽しみもありますし、あと、ミステリーとしても、事件の発端は山で起きるんですけども、どんどん展開していくのは街の中なんですね。現在進行形で謎が進んでいって、最後がまた山に行くんですね。だから、「山もの」としての楽しみもあるし、ミステリーとしての楽しみも二つあるんですね。みなさん、山に登りながら、夏休み、読んでみて下さい。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.12)

2008年07月13日

「芥川賞・直木賞の予想」と「特集・この夏のオススメのガイドブック」


<特集・ブランチ厳選 この夏のオススメのガイドブック>


夏休みまであとわずか。旅行に行く人、まだ計画が決まってない人、長い休みが取れない人、それぞれにぴったりの旅本を紹介します。


◎「ことりっぷ」シリーズ(昭文社)



仲のいい女友達と2泊3日のショートトリップ。働く女性が週末に行く小さな旅を提案。女性に嬉しい気配りたっぷりのレストランやホテルをセレクトし、実際の旅に即したモデルコースを提案。


◎「旅行読売 臨時増刊号 思いたったらひとり旅」(旅行読売出版社)



日本全国の一人泊歓迎の宿、オススメスポットなど133選を紹介します。また、昔町、ローカル線、温泉、グルメ、神社、花など目的別にも観光スポットを紹介しています。


◎おののいも『てくてく北京』(ワニブックス)



今年の海外旅行先で、注目なのは、オリンピックも開催される北京。この町を著者が歩きつくします。写真ではなく詳細で楽しいイラストで、著者がひとり旅で見たもの食べたものの全てを紹介してくれます。


◎『島田紳助のすべらない沖縄旅行ガイドブック』(幻冬舎)



今、一番売れているガイドブック(アマゾン調べ)。芸能界一の沖縄通による最強ガイドブック。沖縄渡航80回以上の紳助さんが独断と偏見で沖縄のいいところをピックアップし、楽しみ方を提案します。(紳助さんのインタビューあり)


<今週の松田チョイス>


小林 今週の<松田チョイス>は特別編です。来週15日に発表となります、第139回芥川賞・直木賞の予想を松田さんに言っていただきます。
松田 はい。
小林 まず、芥川賞からまいります。候補になったのは、こちらの7作品です。この中で、松田さんが注目するのは、楊逸(ヤンイー)さんの『時が滲む朝』です。


◎楊逸『時が滲む朝』(文藝春秋)



松田 前回も受賞直前まで言った楊さんなんですけども、今度の作品は、1989年の、中国の民主化運動が天安門事件で挫折するんですね。それに参加した若者たちが、その後、不遇な人生を送っていくという話なんです。彼らが、尾崎豊の歌にすごく共感する。挫折の重さみたいなものが切なく迫ってくるんですね。ちょうど、北京オリンピック開幕直前で、中国のことにいろいろ関心をもたれていると思うので、今、是非読んでもらうといい作品だと思います。受賞してもらうと、中国人作家で初の受賞ということですから、ちょっと期待したいなと思います。
小林 さて、続いて参りましょう。注目の直木賞です。候補になったのは、こちらの6作品です。この中で、松田さんが「本命」としたのは、この作品です。


◎山本兼一『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』(文藝春秋)



N 直木賞候補2回目となる山本兼一さんの『千両花嫁 とびきり屋見立て帖』。時は幕末、京都の茶道具屋の娘ゆずと店の奉公人だった真之介。二人は、駆け落ちして道具屋を構えたばかり。見立てと度胸と夫婦愛で、いわくつきの道具を捌き、勝海舟に坂本龍馬、新撰組とも渡り合う。夫婦の成長を軸に、商人の心意気を描く連作小説。>
松田 まず、キャラクターがとっても魅力的なんですね。道具屋の若夫婦と奉公人たちも素敵ですし、それに実在の坂本龍馬とか近藤勇とか高杉晋作なんかがからんでくる。だから、歴史的な事実とフィクションが見事に融合してて、本当にワクワク楽しませてくれます。それに、道具屋だけに、道具の「目利き」、道具話がまた、すごく楽しめるんですね。本当に、いぶし銀のような、味のある作品で、直木賞は新人賞なんですが、もうベテランの域に達している筆致だなあという気がしました。
谷原 ぼくも時代小説マニアなもので、チェックさせていただいたんですけども。いま、松田さんが「キャラクターが素晴らしい」とおっしゃったんですが、若夫婦の真之介とゆずさんの相性がすごくいいんですよね。道具の目利きを旦那さんがちゃんとやるんですけども、ゆずさんの方が、もともと道具屋のお嬢さんなんで、こちらの方が目利きのランクが上なんですよ。で、旦那さんは道具の目利きをするんですけども、幕末の志士たちの人物の目利きもするじゃないですか。町人と武士、志士たちというと、志士側で描かれている幕末物って多いんですけども、町人側から見た話なんですごく面白かったです。
松田 そうですね。町人が強くなってきた時代でもあるんですね。でも、主人公の夫婦がいいので、真之介は是非、谷原さんに演じてもらいたいし、ゆずさんは蒼井優さんかなあとか思ったりして。
谷原 いやあ、是非、やらせていただきたいですね。最後に若旦那の面目躍如のところもありますので、皆さん是非読んでいただきたいです。

「王様のブランチ」本のコーナー(2008.7.5)

2008年07月06日

『体育座りで、空を見上げて』と「特集・『島耕作』」


<文庫ランキング>  (6/23~6/29 三省堂書店全店調べ)
① 東野圭吾『さまよう刃』(角川書店)
② 梨木果歩『西の魔女が死んだ』(新潮社)
③ 小林多喜二『蟹工船』(新潮社)
④ 中山真敬『たった3秒のパソコン術』(三笠書房)
⑤ 村山由佳『夢のあとさき』(集英社)
⑥ 石田衣良『愛がいない部屋』(集英社)
⑦ 雫井脩介『クローズド・ノート』(角川書店)
⑧ 堂場瞬一『久遠(上)』(中央公論新社)
⑨ 有川浩『空の中』角川書店
⑩ 横山秀夫『クライマーズ・ハイ』(文藝春秋)


<特集・「島耕作」>
◎弘兼憲史『課長島耕作』(小学館)



◎弘兼憲史『部長島耕作』(小学館)
◎弘兼憲史『取締役島耕作』(小学館)



1983年から連載が始まった「島耕作」シリーズ。「課長編」、「部長編」、「取締役編」と着実に出世を重ね、現在も雑誌「モーニング」にて連載中だが、ついに社長に就任! まさに他に類を見ない「サラリーマン漫画の金字塔」として、存在感を放ち続けています。この社長就任を記念して「島耕作」を徹底特集しました。「島耕作」シリーズの大・大・大ファンである中川翔子さんに島耕作の魅力を語ってもらいました。さらに、しょこたんによる島耕作モテポイントBEST3を発表しました。(3位・博識、2位・冷静で聞き上手、1位・仕事への姿勢)


<今週の松田チョイス>
◎椰月美智子『体育座りで、空を見上げて』(幻冬舎)



松田 中学生という微妙な年頃の心の揺らぎを見事に描き出した、椰月美智子さんの『体育座りで、空を見上げて』です。
N 『しずかな日々』で野間児童文芸賞、坪田譲治賞を受賞した椰月美智子さんの新作『体育座りで、空を見上げて』。主人公の妙子は、ごくごくフツーの中学生。そんな彼女の中学3年間がきめ細かく描かれます。友人との関係、教師や親への反発、部活、試験、受験。揺らぐ思春期の心を綴った青春グラフィティです。>
松田 この小説では、ちょっとした波乱や軋轢はあるけれども、とりわけ大きな事件が起こるわけじゃないんですね。でも、だからこそ、少女の内面でブツブツと沸き上がってくるような不安とか不満とか、そういった感情の揺らぎみたいなものが、本当に切々と迫ってくるように伝わってくる作品なんです。こういう心の内面なんかも含めて、中学生という微妙な年代のかけがえのない輝きみたいなものを、本当に見事にとらえられていて、いま中学生の人も、かつて中学生だったあらゆる人も、是非読んでほしい青春のグラフィティだと思うんですね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、主人公は女性なんですけども、思春期って、男とか女とか関係ないんですよね。多少、違う部分があっても、子どもから大人に変わり始める第一歩っていうのは、感じていることっていうのは、みんな一緒だと思うんですよ。読んでみて思ったのは、最後の方で、すごく「大人はわかってくれない」って言ってるんですけど、ぼくも同じように思っていたんですけども、結局、いま振り返ってみると、あのときは、ぼくもわかろうとしていなかったな、大人のことを。だから、わかろうとしなかったら、わかってもくれなかったんだよなって思いましたね。
松田 そういう余裕がないということもあるんですね。
優香 わたしも読みまして、中学生の時って、思春期の時期に誰もが思う、独特の気持ちってあるじゃないですか。特に何が起きたわけじゃないんだけど、なにか苛立ったり、どうしていいかわからない。これから高校になって大人になるんだけど、子どもでいたいとか。その狭間で、どうしても身近にいる家族に当たってしまうという。でも、当たったときに、自分で悪いことしたなって思うんだけど、すぐに謝れず、それもどうしていいかわからないというモヤモヤ感が、すごくよく、上手に出てて共感しましたね。
松田 大人にみられたいけども、子供でいたいみたいな、矛盾していますよね。
優香 そうですね。
谷原 皆さんも、この作品で青春時代を思い出してみて下さい。

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