松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.2.21)

2009年02月22日

『廃墟建築士』と「ブーム到来!漢字勉強本」


<総合ランキング>  (文教堂書店全店調べ・2009年2月9日~2月15日)
① 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
② 清原和博『男道』(幻冬舎)
③ 押切もえ『モデル失格』(小学館)
④ M・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
⑤ 湊かなえ『告白』(双葉社)
⑥ 内田康夫『還らざる道』(祥伝社)
⑦ 野村克也『あぁ、監督』(角川書店)
⑧ 大前研一『さらばアメリカ』(小学館)
⑨ 山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所)
⑩ 中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル)


<特集・ブーム到来!漢字勉強本>
国のトップたるお方が「未曾有」を「みぞゆう」と読み、恥をさらしたあの事件。そこからぐんぐん部数を伸ばしている本が、漢字勉強本。たくさん出版されている漢字勉強本の中から、売れ筋の3冊を紹介。それぞれの著者(編集代表者)などにインタビュー。それぞれの本のウリ、オススメの問題を出題してもらいます。


①出口宗和『読めそうで読めない間違えやすい漢字』(二見書房)



現在87万部の大ベストセラー。著書の出口さんによると、漢字勉強本は去年の“おバカブーム”から徐々に部数を伸ばしていたが、麻生さんがきっかけとなって大ブレイクしたそうです。


②日本語倶楽部『読めないとバカにされる漢字1500』(河出書房新社)



“大人として必須の漢字1500”を集めた漢字勉強本で、現在11万部のベストセラー。民主党石井議員が直々に出版社に電話し、「おもしろかったので麻生さんへの質疑の際に使いたい」と連絡してきた話題の本。


③現代総合研修センター『漢字でゼッタイ恥をかかない本』(ロングセラーズ)



今年2月1日初版にもかかわらず、既に7万部を突破。パソコンや携帯が浸透して、漢字が書けない、漢字の変換ミスが多い現代っ子向けの漢字勉強本。“書けるようになる”、“変換ミスをなくす”にこだわった一冊。


<今週の松田チョイス>
◎三崎亜記『廃墟建築士』(集英社)



松田 架空の物語なのに不思議なリアリティがある短編集、三崎亜記さんの『廃墟建築士』です。
N ちょっと不思議な建物をめぐる奇妙な事件を描いた短編集『廃墟建築士』。犯罪率の高い七階だけを撤去する。魂の安らぐ空間・廃墟を新築する社会。夜のなると本が空を飛ぶ図書館。意識がある蔵の話。ありえないことなど、ありえない。現実と非現実が同居する4編収録の三崎亜記の最新作。>
谷原 実は、ぼくも読ませてもらったんですが、4編が収録されている短編集で、その中で「図書館」という1編があるんですけども、夜になると本たちが自由に飛び回るんですよ。本好きのぼくとしたら、その様を想像するだけでワクワクしちゃって。もしや、家にある本棚の本が飛んだりしたら、見たいような見たくないような、怖いような不思議なものですよね。
松田 「ナイト・ミュージアム」みたいな世界ですね。それぞれに、現実世界とちょっとズレた世界が描かれるんですね。でも、その世界では「あたりまえ」のことだと思われていて。そういうことを、法令とかマニュアルとか歴史記述といった、わりにクールな、客観的な文章で書かれているんですね。特別大げさに、「変なことがあるよ」って言ってないんだけど、そこから、すごく「情」みたいなもの、情感みたいなものがふつふつと湧き起こってくるんです。建物の話なんです、全部、それぞれの建物が、いつの間にか生き物みたいな感じで伝わってくるんですよね。本当に不思議なテーストが味わえる、楽しい作品集ですね。
谷原 不思議なリアリティがありますよね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.2.14)

2009年02月15日

『どこから行っても遠い町』と「村山由佳『ダブル・ファンタジー』」


<総合ランキング>  (三省堂書店全店調べ・2/2~2/8)
① 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
② バクラ・オバマ、English Expres編集部『オバマ大統領就任演説』(朝日出版社)
③ マーシー・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
④ 押切もえ『モデル失格』(小学館)
⑤ バクラ・オバマ『オバマ大統領演説』(コスモピア)
⑥ 清原和博『男道』(幻冬舎)
⑦ バクラ・オバマ、English Expres編集部『オバマ演説集』(朝日出版社)
⑧ 山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所)
⑨ 津村記久子『ポトスライムの舟』(講談社)
⑩ 中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル)


<特集・村山由佳『ダブル・ファンタジー』>
◎村山由佳『ダブル・ファンタジー』(文藝春秋)



奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら、そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。売れっ子シナリオライターとして活躍しながらも家庭での夫の支配的な態度に萎縮する日々を送っていた奈津は、年上の敬愛する演出家との情事を機に自らの女としての人生に目覚めていく。週刊文春で連載された村山由佳の衝撃の官能の物語。今回、仕事場で村山さんにインタビュー。「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズや直木賞受賞作『星々の舟』とは全く違ったストーリーを書いた理由、発想のきっかけ等をインタビューしました。
谷原 松田さん、『ダブル・ファンタジー』いかがでしたか?
松田 テーマがテーマなので、生々しいシーンもたくさん出てくるんですけども、全体としては、透明感というか清潔感がある作品ですね。恋愛小説をたくさん書いてきて、ストーリーテリングがものすごく上手い人なので、とても楽しめる作品ですね。


<今週の松田チョイス>
◎川上弘美『どこから行っても遠い町』(新潮社)



松田 昨年、ブランチBOOK大賞に選ばれた川上弘美さんの最新作『どこから行っても遠い町』です。
N 川上弘美の『どこから行っても遠い町』。裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房、一緒に小料理屋を営む元恋人の二人、不仲な両親のやりとりを傍らでみつめる小学生……。東京にある小さな商店街を行き交う人びとの、あやうさと幸福を描く。短編の名手・川上弘美の真髄を示す連作短編小説集。>
優香 はい、私も読ませていただきました。川上さんの作品って、微妙な気持ちの書き方がとてもリアルなんですよね。
松田 そうですね、この作品も、人と人との関係をしみじみと見つめたラブストーリーだと言えると思うんですよ。この町の人たちの暮らしには、それほど波乱はないんですね。でも、よく見つめていくと、それなりに悲しみや不幸せな部分もあって、それがいろんな物語を生みだしていくっていう感じです。優香ちゃんはどんな感じでした?
優香 私は、「ロマン」というお店をやっているおばあちゃまという人が、とってもセクシーで、口紅をピッタリ真っ赤とか真ピンクのを塗って、写真を撮るときに、マリリン・モンローのように撮るんです。ちょっと口を半開きにして。お茶目な部分があって、ズーッと一人でいるんですけども、でも、とっても寂しい思いをしていたりとか、そのギャップが切なかったりして、私は、このおばあちゃんが好きなんですけども。川上さんって、女性的な方なのかな、と思ったら、男性目線もとてもリアルに描いていて……
松田 子どもとかね……。一人一人の辛さとか悲しみみたいなものを、優しく包み込むように書いているんで、読んでいると、ここに出てくる一人一人がとっても愛おしく感じてくる。読んだ後に、ほのぼのとした気持ちになれる、本当にいい連作短編集ですね。

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.2.7)

2009年02月07日

『造花の蜜』と「西野亮廣『Dr.インクの星空キネマ』」


<総合ランキング>  (三省堂書店全店調べ・1/26~2/1)
① 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
② バクラ・オバマ『オバマ演説集』(朝日出版社)
③ バクラ・オバマ『オバマ大統領就任演説』(朝日出版社)
④ マーシー・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
⑤ 清原和博『男道』(幻冬舎)
⑥ 山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所)
⑦ 五木寛之『人間の覚悟』(新潮社)
⑧ 塩野七生『ローマの亡き後の地中海世界 下』(新潮社)
⑨ 大前研一『「知の衰退」からいかに脱出するか?』(光文社)
⑩ 湊かなえ『告白』(双葉社)


<特集・西野亮廣『Dr.インクの星空キネマ』>
◎西野亮廣『Dr.インクの星空キネマ』(幻冬舎)



人気お笑い芸人「キングコング」の西野亮廣さんが描いた渾身の力作絵本。フジテレビ「笑っていいとも」の番組中に描いた西野さんの絵を司会のタモリさんが絶賛。本格的に絵本を描くきっかけになったとか。素人とは思えぬ想像力と精緻な画力は、ファンならずとも読んでみたい1冊! どうして星は流れるの? どうして人は夢を見るの? 丘の天文台にひとりで暮らすおじいさん、時代遅れのハシゴ屋さん、村人から恐れられているバケモノ、世界中のみんなのために“夢の脚本”を書き続ける人。それぞれの思いで毎日星空を見上げる孤独な人たちが、小さな幸せを見つける感動のファンタジー。星空を見ることを忘れてしまった大人が泣く、子供が微笑む、優しさが心に沁みる物語。「はねるのトびら」の収録前にブランチをよくみているという西野さんを直撃。絵本を書くきっかけ、絵を描こうと思ったきっかけ、周りの人の反応などをインタビューをしてきました。
松田 素晴らしいですね。夢の世界で思う存分遊びたいという気持ちが緻密な絵から伝わってきます。そういう西野さんの夢の中に、ぼくたちが迷い込んだような奇妙な感覚のある不思議な絵本で、とっても楽しいですね。


<今週の松田チョイス>
◎連城三紀彦『造花の蜜』(角川春樹事務所)



松田 とんでもなく面白いミステリーです、連城三紀彦さんの『造花の蜜』です。
N 幼稚園でひとり息子が誘拐された。しかし、担任は開き直ったように告げる、「だって、私、お母さんに……あなたにちゃんと圭太クン渡したじゃないですか。」事件の不可解な幕開けから渋谷スクランブル交差点での身代金受け渡しまで、どんでん返しの連続にあなたは翻弄され続ける。事件の驚くべき真相とは……。>
松田 読んでみるとわかるんですが、とにかく驚くし、とにかく面白いんです。最初はシーリアスな誘拐劇として物語は始まるんです。緊迫感にあふれた描写の連続に引き込まれていくと、犯人の意外な動きがあって、物語がどんどんどんどん変わっていくんですね。その後に、何度も思いがけないどんでん返しが続いて、最後には、とんでもないところまで読者を連れてってしまうんです。……言えないのがつらいんですが。
谷原 ぼくも、読んだんですが、どんでん返しと言えば、この間「太チョイ」でも紹介したジェフリ・ディーヴァーがすごく有名じゃないですか。でも、それに負けないくらい、筋立てだとか、伏線のうまさみたいなものがあったりして。ただ違うのは、ジェフリ・ディーヴァーはとてもエンタテインメント性が強いとすると、こっちの方は、日本的な情動であったりとか、上質なドラマを観ているような読後感があって。ぼく自身、キャラクターの魅力にひきこまれて……犯人とそれを追う警部のキャラクターに……。
松田 あんまり言うとネタバレになっちゃいますよ。
優香 そうなんだあ。
谷原 すごい、引き込まれました。
小林 読みたーい。
松田 本当にいろんなミステリーの要素がいっぱい入っていて、一冊でミステリー大全集という感じの大傑作ですね、これは。
谷原 一度読み始めたら止まらない、怒濤のエンタテインメントを、皆さんぜひ読んでみてください。 

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.1.31)

2009年02月01日

『猫を抱いて象と泳ぐ』と「美内すずえ『ガラスの仮面』」


<コミックランキング>  (紀伊國屋書店全店調べ・1/20~1/26)
① 美内すずえ『ガラスの仮面』43巻(白泉社)
② 一条ゆかり『プライド』10巻(集英社)
③ 甲斐谷忍『LIAR GAME』8巻(集英社)
④ 大和田秀樹『機動戦士ガンダムさん』よっつめの巻(角川書店)
⑤ 日高万里『V・B・ロ-ズ』13巻(白泉社)
⑥ ツジトモ・綱本将也『GIANT KILLING』9巻(講談社)
⑦ 田辺イエロウ『結界師』23巻(小学館)
⑧ 高屋奈月『星は歌う』4巻(白泉社)
⑨ 畑健二郎『ハヤテのごとく!』18巻(小学館)
⑩ 大和田秀樹『なるほど・ことわざガンダムさん』(角川書店)


<特集・美内すずえ『ガラスの仮面』>
◎美内すずえ『ガラスの仮面』1~43巻(白泉社)



演劇史上不朽の名作と謳われる「紅天女」の試演に向け、自らの天女像を求める北島マヤと姫川亜弓。亜弓の特別稽古が報道され、ライバルが順調に稽古を進めていることを知り、焦るマヤ。しかし速水真澄の「おれに紅天女のリアリティを感じさせてくれ」という言葉に、マヤは演技のヒントを掴んでいく。コミック売り上げ累計5000万部、連載期間33年。少女マンガ界に君臨する『ガラスの仮面』。1月26日、約4年ぶりに最新刊(43巻)が発売になりました。作者の美内すずえさんに、仕事場でインタビューしました。仕事机にあったのは、墨汁、主人公のフィギュア、CDラック、そして44巻に収録されるであろう生原稿など。インタビューの内容は、「デビューのきっかけ」「タイトルの由来、作品誕生秘話」「約9000ページの中で、作者自身が一番好きなシーンは?」「自身の体験が投影されているシーンは?」「33年の連載中に困ったことは? 挫折は? やめたいと思ったことは?」「主人公北島マヤの恋の行方はどうなるのか?」「ラストをどうするのか?」などです。


<今週の松田チョイス>
◎小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文藝春秋)



松田 本当に気が早い話だと思われると思いますけども、「今年のベスト1」だと言いたくなる作品に出会ってしまいました。小川洋子さんの長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』です。
N 小川洋子の最新長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』。主人公は伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒン。バスに住む巨漢のマスターに手ほどきを受け、チェスの大海原に乗り出した。彼の棋譜は詩のように美しい。しかし、なぜか彼の姿を見た者はいない。無垢な魂を持つ少年の数奇な人生を、切なくも美しく描いた作品。>
松田 とにかく「素晴らしい!」の一言です。読み始めると、残りのページ数がなくなっていくのが惜しくてたまらないという、そんな感じなんですよね。そして、読み終わると、場面の一つ一つが映像となって頭の中に焼き付いて、繰り返し思い出せるという。チェスの話なんですが、からくり人形とチェスをする人たちとか、肩に白い鳩を載せた記録係の美少女とか、品のいい老婆と主人公がチェスをしていたりとか……。その主人公そのものが姿が見えないところでチェスを打つという、不思議なお話なんですね。
優香 私も読ませていただきまして、最初にタイトルが本当に面白いなあというか……。
松田 何だろうと思いますよね。
優香 はい。引き込まれまして、さっき松田さんがおっしゃっていたように、本当に外国映画のような、絵本のような、物語として、一枚一枚ていねいに読みたくなるような本だなあと思いました。私は、この中で、特に、この少年のことをズーッとズーッと応援してきて、一切否定をしない、暖かく見守るお祖母ちゃんが本当に素敵なんです。お祖母ちゃんもチェスのことは分からないので、なんか私と同じ気持ちでいられるなという感覚があったり。で、後半で、お祖母ちゃんが少年に話す一言があるんですけど、そこでわたしはグッときて……。素敵な、いい家族だなって。
松田 チェスのことは、ぼくらも分からないんですが、チェスの本当に素晴らしい対局を写した棋譜というのは詩のように美しいって書いてあるんですね。この物語自体が、哀しくて、切なくて、本当に美しいんです。まだ書かれたばかりの作品なのに、もう古典作品の風格がある。名作だと思いますね。
谷原 読書の達人、松田さんが選んだ、今年ナンバーワンの作品、ぜひ読んでみてください。

「本のコーナー」をネットしているのは、TBS・HBC(北海道)・TUY(山形)・TUF (福島)・SBC(長野)・UTY(山梨)・TUT(富山)
MRO(石川)・SBS(静岡)・ RCC(広島)・RSK(岡山)・ITV(愛媛)・NBC(長崎)・RBC(沖縄)・BS-iです。

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