松田哲夫の王様のブランチ出版情報ニュース

「王様のブランチ」本コーナー(2009.4.25)

2009年04月26日

『パラドックス13』と「浅田政志『浅田家』」


<総合ランキング>  (三省堂書店全店調べ・4/13~4/19)
① 中村克『最後のパレード』(サンクチュアリ出版)
② 湊かなえ『告白』(双葉社)
③ 『LESPORTSAC 35th Anniversary Special!! Style1 ビューティガール』(宝島社)
④ 東野圭吾『パラドックス13』(毎日新聞社)
⑤ 『LESPORTSAC 35th Anniversary Special!! Style2 キャンディドッツ』(宝島社)
⑥ 『LESPORTSAC 35th Anniversary Special!! Style3 ボヤージュ』(宝島社)
⑦ 海堂尊『極北クレイマー』(朝日新聞出版)
⑧ 蛇蔵『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)
⑨ 稲盛和夫『働き方』(三笠書房)
⑩ 梨花『Love myself・梨花』(宝島社)


<特集・浅田政志『浅田家』>
◎浅田政志『浅田家』(赤々舎)



父、母、兄、そして写真家本人の4人家族が、ラーメン屋や消防士や極道などに扮する『浅田家』。すべて、地元の三重県でいろいろな人の協力を得ながら撮影した写真は、「演出」の見事さ以上に、家族のかかわりがもたらす「記念写真」の力にあらためて驚かされる。浅田家の記念写真、それは自ら記念をつくっていく記念写真である。全員の休みを合わせ、場所を借り服を決め、シーンを皆で考え、タイマーのスイッチを押す。待っていてもなかなか来ない記念日を、写真を通じてつくり上げていく。そのとき写真は家族が集まるきっかけであり、記録でもある。この写真集『浅田家』が新人写真家に贈られる第34回木村伊兵衛賞を受賞。今回、写真家・浅田さんの撮影現場に密着しました。


<今週の松田チョイス>
◎東野圭吾『パラドックス13』(毎日新聞社)



松田 東野圭吾さん、ファン待望の最新作『パラドックス13』です。
N 運命の13時13分、突如、世界から人類が消えた。天変地異に襲われ、崩壊する東京。残された13人の中で善悪の価値観が壊れていく。大人気ミステリー作家東野圭吾が描く、究極のサバイバル・ストーリー『パラドックス13』。「世界が変われば、人殺しが善になることもある。」(東野圭吾)>
谷原 松田さん、こちらの作品を読み解くキーワードというのは?
松田 こちらです。(フリップに「サバイバル」「究極の謎解き」)
谷原 「サバイバル」ってどういうことですか。
松田 これまで、東野さんって、人間心理をきめ細かく描いたミステリーが多かったんですが、この作品では、壮大なサバイバル劇が展開されます。東京にとり残された13人。彼らに、想像を絶する天変地異が襲いかかるっていうお話なんです。そういう状況になると、善悪の基準とかですね、これまでの約束事が全部無効になっているということに、彼らは深い衝撃を受けるんです。
谷原 東野さんんというと、仕掛けの妙といいますか、とても筋立てがうまいと思うんですが、その中で「究極の謎解き」というのはすごいですね。
松田 本当に絶体絶命という状況になったときに、なんで、こんな過酷な世界が出現したのかという謎が解けるんですね。そして、驚くべきクライマックス・シーンががやってくる。本当にドキドキしますね。
谷原 一筋縄ではいかないんでしょうね、東野さんは。
優香 はい。なんかアピールがすごいみたいなんですが。
木本(「TKO」の一人。目の前に東野さんの本を積み上げて) ぼくは「東野圭吾依存症」なんです。大好きで、ほとんど全部作品を読んでいるんで。今回のもバッチシ読んでいるんですけども、感想とか求めません? ぼくもキーワードを書いてみました。「13人の共通点」。これはね、この東京に13人だけ生き残るんですよ。小さい子どもとか赤ちゃんとか青年とか、いろんな世代のいろんな人が出てくるんですけども、全部、ある共通点が浮かび上がってくるんですよ。
優香 何の共通点ですか?
木本 ゆうたらおもろないでしょう。そこを読むんやろ。
松田 そこに、謎解きがからむんですよね。
木本 東野さんの作品って90点以上あるんですが、どれも面白いんですが、今回は図抜けています。

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.4.18)

2009年04月18日

『恋文の技術』と「宝島社ブランドムック」


<総合ランキング>  (日販調べ・4/6~4/12)
① 空知英秋・大崎知仁『銀魂 3年Z組銀八先生 4』(集英社)
② 湊かなえ『告白』(双葉社)
③ 中村克『最後のパレード』(サンクチュアリ出版)
④ 浜崎あゆみ『Ayuのデジデジ日記』(講談社)
⑤ 海堂尊『極北クレイマー』(朝日新聞出版)
⑥ 渡辺淳一『欲情の作法』(幻冬舎)
⑦ 菅野和夫『ポケット六法』(有斐閣)
⑧ 梨花『Love myself・梨花』(宝島社)
⑨ 加藤久仁生・平田研也『つみきのいえ』(白泉社)
⑩ 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)


<特集・宝島社ブランドムック>
◎『キャス・キッドソンへようこそ』1~2(宝島社)
◎『Cher 2009 Spring/Summer Collection』(宝島社)
◎『LESPORTSAC 35th Anniversary Special!!』1~3(宝島社)



成熟した消費社会である日本に、特定の“ブランド信仰”はもはやないに等しい。しかし、ブランド好きのDNAは、幅広い年代に受け継がれている。そんな人達の嗜好を巧みに掬い上げているのが、宝島社のブランドムック。国内外のブランドと提携し、デザイナーや新商品などをオールカラーで紹介するムックに、ロゴ付きの雑貨(バッグ、Tシャツなど)をセットした。価格はそのアイテムによって1000円~3000円台の幅があるが、中心は1000円台前半。大人気の理由は、1冊にそのブランドの最新情報やコンセプトが詰め込まれ、しかもアイテムつきで1000円台で入手できるという「お得感」。不況の今、1000円台で好きなブランドアイテムをもつ夢を叶えるブランドムックに、ますます期待が寄せられる。4月中旬発売のバッグブランド「LeSportsac」のブランドムック制作過程に密着。編集者やブランド担当にインタビュー。ブランドムック本の魅力などを伺いました。


<今週の松田チョイス>
◎森見登美彦『恋文の技術』(ポプラ社)



松田 森見登美彦さんの奇想天外な面白小説、『恋文の技術』です。
N 地方に飛ばされた、うだつの上がらない大学院生。退屈を紛らわすために考えたのが「文通武者修業」。かつての仲間たちに手紙を書きまくる。友人の恋の相談に乗り、妹に説教を垂れ。でも本当に気持ちを伝えたい人には、思うような手紙が書けなくて。森見節満載、ほろにが可笑しい新・書簡体小説。>
松田 今の時代、携帯やメールが全盛で、「手紙」ってあまり書かなくなっていると思うんですね。こういう時代に、あえて全編「手紙」だけの小説を書くというところが、森見さんの面白いところで。手紙を書く人は一人でも、送る相手によって、文体とか表現とか内容とか変わってきますよね。そのへんの微妙なニュアンスを楽しんでいると、お話は、だんだんあやしげな雰囲気を漂よわせてくるんですね。最後には、アッと驚く仕掛けが待っているんですが。終始、森見さんの愉快なたくらみにのせられながら楽しんでいける、風変わりな恋愛小説でしたね。
谷原 デミちゃんも読んだんだよね。
出水 読ませてもらいました。なかなか、人の手紙って見ることないじゃないですか。だから、人のプライベートな部分を覗いているような、ドキドキするような感じもあるんですけども。やはり、送る相手によって、文体とか言葉の使い方が変わっていくので、人間のもつ多面性のようなものを垣間見ることができるようで。私も、アメリカに住んでいたときに、祖父母に手紙を送っていたんですが、実は、自分の意外な一面を、その手紙を通じて見られちゃったんじゃないかと、いま思い返して、恥ずかしくなっちゃったんですが。お手紙っていいなあ、書きたいなあと思う一冊でした。
谷原 宛てた人以外に読まれると恥ずかしいですね。さあ、皆さんも手紙の魅力、再認識してみたらいかがでしょうか。

「王様のブランチ」本のコーナー(2009.4.4)

2009年04月04日

『蛇衆』と「春のお出かけ本特集」


<総合ランキング>   (啓文堂書店全店調べ・3/16~24)
① 茅田砂胡『海賊とウェディング・ベル』(中央公論新社)
② 中村克『最後のパレード』(サンクチュアリ出版)
③ 加藤久仁生・平田研也『つみきのいえ』(白泉社)
④ 『CREA due Cat no.2 ネコ萌え!』(文藝春秋)
⑤ 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
⑥ 小宮一慶『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
⑦ 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳 11号(中国四国)』(新潮社)
⑧ 渡辺淳一『欲情の作法』(幻冬舎)
⑨ 村上龍『無趣味のすすめ』(幻冬舎)
⑩ 内田康夫『砂冥宮』(実業之日本社)


<春のお出かけ本特集>
◎今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)



最新刊がランキング入り。累計120万部を突破した、今売れているおでかけ本。日本の鉄道、全線・全駅・全廃線――その全ての位置を日本地図上に正確に記載した日本初の地図が遂に誕生。さぞかしマニアックな一冊だろうと中を見ると……鉄道ファンならずとも、楽しい鉄道のおでかけが楽しめるシカケがいっぱい。地図が苦手な女性読者にも人気とか。


◎『東京さんぽ』『京都さんぽ』『おでかけさんぽ』(昭文社)



春の行楽シーズン到来。人気のおでかけ本を特集。書店のガイドブックコーナーを見てみると、目立つのは「さんぽ」の文字。異例の売り上げを誇る「ことりっぷ」(昨年2月に創刊、38冊で累計180万部)の最新刊も「さんぽ」がキーワード。アンケートで「じっくりゆっくり旅したい」という声が多く寄せられたことから始まった。


◎K&Bパブリッシャーズ『東京散歩マップ』(成美堂出版)



旅のガイドブックの老舗が制作した“散歩本”。20数年のキャリアを活かし、他社のおでかけ本にはないコース仕立てに特徴がある。その①散歩コース完全指定、その②スタート地点とゴール地点にはある工夫が、その③「コースの高低差」案内もある。


<今週の松田チョイス>
◎矢野隆『蛇衆』(集英社)



松田 スピードと迫真力、時代小説のニューウェーブ、矢野隆さんの『蛇衆』です。
N 室町末期、金のためにだけ戦う屈強な傭兵集団がいた。「蛇衆」。彼らが加勢した軍は絶対に負けない。しかし、侍たちの陰謀と裏切りに仲間を失ったとき、彼らははじめて自分たちのために戦うことを決意する。四百の軍勢対六人。「それでも私は行く」。ジェットコースターのように疾走する超絶時代アクション。>
松田 ぼくは、この矢野さんを、『のぼうの城』の和田さんと一緒に「時代小説のニューウェーブの旗手」という風に呼びたいと思うんです。なんといっても、文章が短いフレーズでたたみ込むように書かれていて、スピード感があって迫力があるんですね。戦闘シーンも圧倒的なすごさがあるんです。この文章の感覚って、やはり若い作家さんなんで、ゲーム世代の感覚だなあっていう気がしましたね。ただ、そういうゲーム感覚だけではなくて、蛇衆六人の不幸な生い立ちが明らかになっていくと、彼らの恋とか友情とか、そういった人間的な部分があらわになっていって、胸を打つんですね。最後には自分たちだけのための戦いに立ち上がるんですけども、そのシーンが圧巻なので、ぜひ読んでもらいたいですね。
谷原 ぼくも読ませてもらったんですが、普通、時代物でしたら、侍であるとか町人であるとか、封建社会の枠の中に注目することが多いと思うんですけども、今回の『蛇衆』は、そういう枠から外れたはぐれ者が主人公じゃないですか。それって、ぼくが大好きな隆慶一郎さんの流れに繋がるといいますか、隆さんの世界を、よりエンタテインメントとしてスピーディかつ大胆に作り替えているという意味で、とても楽しみな新人の作家さんがでてきたなと思います。
松田 そうですね。
谷原 戦国ブームにまだのっていない方、ぜひぜひ、この時代小説から入っていくのもいいかもしれません。

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