『どこから行っても遠い町』と「村山由佳『ダブル・ファンタジー』」


<総合ランキング>  (三省堂書店全店調べ・2/2~2/8)
① 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
② バクラ・オバマ、English Expres編集部『オバマ大統領就任演説』(朝日出版社)
③ マーシー・シャイモフ『「脳にいいこと」だけをやりなさい!』(三笠書房)
④ 押切もえ『モデル失格』(小学館)
⑤ バクラ・オバマ『オバマ大統領演説』(コスモピア)
⑥ 清原和博『男道』(幻冬舎)
⑦ バクラ・オバマ、English Expres編集部『オバマ演説集』(朝日出版社)
⑧ 山本兼一『利休にたずねよ』(PHP研究所)
⑨ 津村記久子『ポトスライムの舟』(講談社)
⑩ 中谷巌『資本主義はなぜ自壊したのか』(集英社インターナショナル)


<特集・村山由佳『ダブル・ファンタジー』>
◎村山由佳『ダブル・ファンタジー』(文藝春秋)



奈津・三十五歳、脚本家。尊敬する男に誘われ、家を飛び出す。“外の世界”に出て初めてわかった男の嘘、夫の支配欲、そして抑圧されていた自らの性欲の強さ。もう後戻りはしない。女としてまだ間に合う間に、この先どれだけ身も心も燃やし尽くせる相手に出会えるだろう。何回、脳みそまで蕩けるセックスができるだろう。そのためなら、そのためだけにでも、誰を裏切ろうが、傷つけようがかまわない。「そのかわり、結果はすべて自分で引き受けてみせる」。売れっ子シナリオライターとして活躍しながらも家庭での夫の支配的な態度に萎縮する日々を送っていた奈津は、年上の敬愛する演出家との情事を機に自らの女としての人生に目覚めていく。週刊文春で連載された村山由佳の衝撃の官能の物語。今回、仕事場で村山さんにインタビュー。「おいしいコーヒーの入れ方」シリーズや直木賞受賞作『星々の舟』とは全く違ったストーリーを書いた理由、発想のきっかけ等をインタビューしました。
谷原 松田さん、『ダブル・ファンタジー』いかがでしたか?
松田 テーマがテーマなので、生々しいシーンもたくさん出てくるんですけども、全体としては、透明感というか清潔感がある作品ですね。恋愛小説をたくさん書いてきて、ストーリーテリングがものすごく上手い人なので、とても楽しめる作品ですね。


<今週の松田チョイス>
◎川上弘美『どこから行っても遠い町』(新潮社)



松田 昨年、ブランチBOOK大賞に選ばれた川上弘美さんの最新作『どこから行っても遠い町』です。
N 川上弘美の『どこから行っても遠い町』。裸足で男のもとへ駆けていった魚屋の死んだ女房、一緒に小料理屋を営む元恋人の二人、不仲な両親のやりとりを傍らでみつめる小学生……。東京にある小さな商店街を行き交う人びとの、あやうさと幸福を描く。短編の名手・川上弘美の真髄を示す連作短編小説集。>
優香 はい、私も読ませていただきました。川上さんの作品って、微妙な気持ちの書き方がとてもリアルなんですよね。
松田 そうですね、この作品も、人と人との関係をしみじみと見つめたラブストーリーだと言えると思うんですよ。この町の人たちの暮らしには、それほど波乱はないんですね。でも、よく見つめていくと、それなりに悲しみや不幸せな部分もあって、それがいろんな物語を生みだしていくっていう感じです。優香ちゃんはどんな感じでした?
優香 私は、「ロマン」というお店をやっているおばあちゃまという人が、とってもセクシーで、口紅をピッタリ真っ赤とか真ピンクのを塗って、写真を撮るときに、マリリン・モンローのように撮るんです。ちょっと口を半開きにして。お茶目な部分があって、ズーッと一人でいるんですけども、でも、とっても寂しい思いをしていたりとか、そのギャップが切なかったりして、私は、このおばあちゃんが好きなんですけども。川上さんって、女性的な方なのかな、と思ったら、男性目線もとてもリアルに描いていて……
松田 子どもとかね……。一人一人の辛さとか悲しみみたいなものを、優しく包み込むように書いているんで、読んでいると、ここに出てくる一人一人がとっても愛おしく感じてくる。読んだ後に、ほのぼのとした気持ちになれる、本当にいい連作短編集ですね。