『ウォッチメイカー』と「三浦しをんと文楽の世界」


<特集・三浦しをんと文楽の世界>
三浦しをん『あやつられ文楽鑑賞』(ポプラ社)



三浦しをん『仏果を得ず』(双葉社)



直木賞作家・三浦しをんさんが、いまはまっているのが日本の伝統芸能「文楽」の世界です。どこか敷居が高く、難しそうというイメージがある「文楽」ですが、三浦さんは、この世界に魅せられて、昨年、2冊の本を刊行しました。ちょっととっつきにくいけど、じっくりつきあってみると楽しい「文楽」の世界を三浦さんの案内で覗いてきました。
谷原 松田さん、本の方もかなり面白いですか。
松田 小説の『仏果を得ず』というのがとても面白いんです。伝統芸能の話っていうと、面倒くさそうな気がするんですが、これは物語を楽しみながら、文楽の魅力を知ることができるんです。出てくる登場人物が、ものすごく個性的で愛すべきキャラクターばかりで、その人達が、しをんさんの絶妙な語りにのって物語が展開されるあたりは素晴らしいですね。文楽の世界に出会って、しをんさんの語りが、また一段と冴え渡っているという気がしますね。


<今週の松田チョイス>
◎ジェフリ・ディーヴァー『ウォッチメイカー』(文藝春秋)



松田 『このミステリーがすごい!』と「週刊文春」という二つの権威あるミステリー・ランキング海外部門で1位に輝いたジェフリ・ディーヴァーの『ウォッチメイカー』という作品です。
VTR 世界中で愛されるジェフリ・ディーヴァーの「リンカーン・ライム・シリーズ」。第1作『ボーンコレクター』は映画化もされ、大ヒットに。主人公は、事故によって体の自由がきかなくなった一流の科学捜査官リンカーン・ライムと彼の手足となって現場に赴く新任の鑑識捜査官アメリアのコンビ。現場に残されたわずかな手がかりを頼りに、冷酷な殺人鬼と息詰まる頭脳戦を繰り広げます。そのシリーズ最新作となるのが『ウォッチメイカー』。犯人は、ウォッチメイカーを名乗り、残忍な殺人現場に必ず名刺代わりのアンティーク時計を遺していく。時計のように緻密な連続殺人計画をライムたちは食い止めることができるのか? 『このミステリーがすごい!』海外部門で1位、「週刊文春」ミステリー・ランキングでも1位に輝いた、いま必読の1冊です。>
松田 さすがに、軒並みNO.1に輝いた作品だけあって、読み出すと、超高速のジェットコースターに乗せられたみたいに、グイグイグイグイ、ハラハラしながら読み進むんですね。で、このリンカーンとアメリアのコンビというのは、『ボーンコレクター』から7作目になるんですが、サスペンスも意外性も飛び抜けて優れた作品です。色濃いキャラクターがたくさん出てくるんですけども、特に、冷酷な事件を計画して実行していくウォッチメイカーという犯人像が強烈で、圧倒的で、本当に魅力を感じてしまうほど悪い奴なんです。それで、物語を読んでいくと、ほかの事件がからんできたり、途中で意外とあっさりと犯人が捕まってしまうんですね。これで終わりかと思っていると、それから、とんでもないどんでん返しが次々にやってくるという、もう、ミステリーファンにはたまらない1冊ですね。
谷原 ぼくも読ませてもらったんですが、ウォッチメイカーというキャラクターが、とても緻密な犯罪計画を立てていくんですね。で、そのウォッチメイカーのキャラクターに引きずられるように、ぼくは、かれこれ4日間ぐらいで読んだんですけども。おかげで、大掃除がどんどん遅くなりましたけどもね(笑)。ウォッチメイカーという人物を作り上げたジェフリ・ディーヴァーさんというのはすごい方だなあと思いますね。松田さんもおっしゃったように、これで終わったと思ったら、さらに別の展開が待っているという、もう、ずーっとジェフリ・ディーヴァーの手の上で転がされ続けた506ページでした。ミステリーファンの方、必読です。是非読んでください。