『蛇衆』と「春のお出かけ本特集」


<総合ランキング>   (啓文堂書店全店調べ・3/16~24)
① 茅田砂胡『海賊とウェディング・ベル』(中央公論新社)
② 中村克『最後のパレード』(サンクチュアリ出版)
③ 加藤久仁生・平田研也『つみきのいえ』(白泉社)
④ 『CREA due Cat no.2 ネコ萌え!』(文藝春秋)
⑤ 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
⑥ 小宮一慶『どんな時代もサバイバルする会社の「社長力」養成講座』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
⑦ 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳 11号(中国四国)』(新潮社)
⑧ 渡辺淳一『欲情の作法』(幻冬舎)
⑨ 村上龍『無趣味のすすめ』(幻冬舎)
⑩ 内田康夫『砂冥宮』(実業之日本社)


<春のお出かけ本特集>
◎今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)



最新刊がランキング入り。累計120万部を突破した、今売れているおでかけ本。日本の鉄道、全線・全駅・全廃線――その全ての位置を日本地図上に正確に記載した日本初の地図が遂に誕生。さぞかしマニアックな一冊だろうと中を見ると……鉄道ファンならずとも、楽しい鉄道のおでかけが楽しめるシカケがいっぱい。地図が苦手な女性読者にも人気とか。


◎『東京さんぽ』『京都さんぽ』『おでかけさんぽ』(昭文社)



春の行楽シーズン到来。人気のおでかけ本を特集。書店のガイドブックコーナーを見てみると、目立つのは「さんぽ」の文字。異例の売り上げを誇る「ことりっぷ」(昨年2月に創刊、38冊で累計180万部)の最新刊も「さんぽ」がキーワード。アンケートで「じっくりゆっくり旅したい」という声が多く寄せられたことから始まった。


◎K&Bパブリッシャーズ『東京散歩マップ』(成美堂出版)



旅のガイドブックの老舗が制作した“散歩本”。20数年のキャリアを活かし、他社のおでかけ本にはないコース仕立てに特徴がある。その①散歩コース完全指定、その②スタート地点とゴール地点にはある工夫が、その③「コースの高低差」案内もある。


<今週の松田チョイス>
◎矢野隆『蛇衆』(集英社)



松田 スピードと迫真力、時代小説のニューウェーブ、矢野隆さんの『蛇衆』です。
N 室町末期、金のためにだけ戦う屈強な傭兵集団がいた。「蛇衆」。彼らが加勢した軍は絶対に負けない。しかし、侍たちの陰謀と裏切りに仲間を失ったとき、彼らははじめて自分たちのために戦うことを決意する。四百の軍勢対六人。「それでも私は行く」。ジェットコースターのように疾走する超絶時代アクション。>
松田 ぼくは、この矢野さんを、『のぼうの城』の和田さんと一緒に「時代小説のニューウェーブの旗手」という風に呼びたいと思うんです。なんといっても、文章が短いフレーズでたたみ込むように書かれていて、スピード感があって迫力があるんですね。戦闘シーンも圧倒的なすごさがあるんです。この文章の感覚って、やはり若い作家さんなんで、ゲーム世代の感覚だなあっていう気がしましたね。ただ、そういうゲーム感覚だけではなくて、蛇衆六人の不幸な生い立ちが明らかになっていくと、彼らの恋とか友情とか、そういった人間的な部分があらわになっていって、胸を打つんですね。最後には自分たちだけのための戦いに立ち上がるんですけども、そのシーンが圧巻なので、ぜひ読んでもらいたいですね。
谷原 ぼくも読ませてもらったんですが、普通、時代物でしたら、侍であるとか町人であるとか、封建社会の枠の中に注目することが多いと思うんですけども、今回の『蛇衆』は、そういう枠から外れたはぐれ者が主人公じゃないですか。それって、ぼくが大好きな隆慶一郎さんの流れに繋がるといいますか、隆さんの世界を、よりエンタテインメントとしてスピーディかつ大胆に作り替えているという意味で、とても楽しみな新人の作家さんがでてきたなと思います。
松田 そうですね。
谷原 戦国ブームにまだのっていない方、ぜひぜひ、この時代小説から入っていくのもいいかもしれません。