『きりこについて』と「東村アキコ『ママはテンパリスト』」


<総合ランキング> (有隣堂書店全店調べ・6/7~6/13) 
① 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
② 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
③ 西尾維新『偽物語 下』(講談社)
④ 小林よしのり『ゴーマニズム宣言SPECIAL天皇論』(小学館)
⑤ エリカ・アンギャル『世界一の美女になるダイエット』(幻冬舎)
⑥ よしたに『ぼく、オタリーマン。 4』(中経出版)
⑦ 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字』(二見書房)
⑧ 蛇蔵・海野凪子『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)
⑨ 横浜市ふるさと歴史財団:編『横浜 歴史と文化 (開港150周年記念)』(有隣堂)
⑩ 出口宗和『読めそうで読めない間違いやすい漢字 2』(二見書房)


<特集・東村アキコ『ママはテンパリスト』>
◎東村アキコ『ママはテンパリスト』1~2(集英社)



「すいません。育児ナメてました」。「コーラス」(毎月28日発売)で、連載当初から爆発的人気を誇るこの作品は、革命的面白さの新世代育児エッセイコミック。漫画連載を多数かかえる作者は、初の育児に毎日テンパりまくり(=あわてて動揺しっぱなし)。そして、ママは授乳を止めさせる珍妙なゴルゴ作戦をたてるかと思えば、イタズラを叱るママに対して、あまりにも予想外すぎる爆笑リアクションを繰り返す息子ごっちゃん。そのデンジャラスな魅力に夢中になるファンが、年齢・性別問わず続出。育児に役立つ情報が一切ないという漫画なのに、読み始めたらやみつきになること間違いなし。今回、ブランチでは東村さんの仕事場を直撃。彼女の爆笑育児エピソードや執筆環境など、漫画家として母としての日常についてうかがいました。


<今週の松田チョイス>
◎西加奈子『きりこについて』(角川書店)



松田 いつも活きのいい物語を届けてくれる西加奈子さんの最新作『きりこについて』です。
N 「きりこはぶすな女の子」。だけど、両親の愛情をいっぱいに浴びて育ったから、自分がぶすだなんて思ってもみなかった。大好きなこうた君から冷たく言われるまでは。体育館の裏で出会った猫「ラムセス2世」は、そんなきりこに美しさの意味、生きる意味を問いかける。西加奈子が描く、心温まる物語『きりこについて』。>
谷原 松田さん、この本の魅力を一言で言うと?
松田 「元気印のおとぎ話」(松田の一言フリップ)です。風変わりなお話なんですが、読むと元気をもらえる、勇気をもらえる、現代のおとぎ話なんですね。主人公のきりこは、団地に住む女の子なんですが、「お姫様」のような気持ちで日々を暮らしています。でも、ある出来事がきっかけとなって、落ち込んで引きこもってしまうんです。彼女に付き従っているのが、人の言葉のわかる賢い猫「ラムセス2世」なんです。その猫の手助けで、きりこは再び元気を取り戻していくんですね。その間に、深刻な問題が次々に出てくるお話なんですが、とってもチャーミングな登場人物がたくさん出てきますし、語り口がとても不思議な語り口なんで、だんだんと、読んでいるぼくたちが幸せな気分になっていく、元気になっていく。とっても素敵なおとぎ話だなあって思いましたね。
谷原 デミちゃんも読んだんだよね。
出水 そうなんです。主人公のきりこちゃんというのが、ちょっと美的な尺度から言うと、容姿というのがあまり恵まれていないんですけども、それを一時期コンプレックスに思うところはあっても、結局は、そういうところにはとらわれないで、自分の中で確固たる信念をもって力強く生きる様が描かれていて、それが「ラムセス2世」という猫の視点で描かれていて、それがちょっと面白いポイントでもあるんですけども。前向きに生きていく姿勢が、私は共感できましたし、世の中の流れにとらわれすぎて、意外に自由になれない自分がいたりするので、自由になっていいんだなあって力をもらえた一冊でした。
谷原 男が読んでもいい感じですかね。
出水 はい、面白いと思いますね。
松田 猫好きには楽しいと思いますし、ぼくは、それほど猫が得意ではないんですが、この「ラムセス2世」は結構好きになりましたね。
谷原 梅雨の時期に爽やかに気持ちにさせてくれる、この1冊、是非読んでみてはいかがでしょうか。