『のぼうの城』と「特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』」


 <総合ランキング>  (3/2~3/8 有隣堂書店全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 坂東真理子『女性の品格』(PHP研究所)
 3位 東野圭吾『流星の絆』(講談社)
 4位 堤未果『ルポ貧困大国アメリカ』(岩波書店)
 5位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 6位 西尾維新『零崎曲織の人間人間』(講談社)
 7位 大庭史榔『1分骨盤ダイエット』(三笠書房)
 8位 トルーマン・カポーティ、村上春樹訳『ティファニーで朝食を』(新潮社)
 9位 坂東真理子『親の品格』(PHP研究所)
10位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



<BOOKニュース>
◎ルーシー&スティーブン・ホーキング『宇宙への秘密の鍵』(岩崎書店)
あのホーキング博士と娘さんが、子どもたちのために書いたスペース・アドベンチャー。


<特集・水野敬也『夢をかなえるゾウ』>
◎水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)



ベストセラー『ウケる技術』の著者がおくる、愛と感動の自己改革「笑」説。主人公は、「人生を変えよう」と何かを始めるけれど、全部三日坊主に終わってしまうサラリーマン。そういう彼の前に、ある日突然、ゾウの姿をした「ガネーシャ」という神様が現れ、こう言います。自分が出す簡単な課題さえこなしていけば、お前は成功すると……。作者の水野さんは、モテないことを原動力に恋愛マニュアル200冊を読破、さらには就職活動に役立てようと自己啓発本200冊を読破したのですが、どちらでも失敗するというイタい過去がありました。本書では、そんな水野さんが、実際に実践して良かった教えを厳選して、おもしろおかしく紹介しています。100万部に届く勢いで売れているこの本の作者・水野さんの仕事場を直撃、インタビューしました。
谷原 松田さん。この本が一気にブレイクした理由は?
松田 「こうすれば成功する」という本は山ほどあるんですけども、こんなに笑える自己啓発本って初めてだと思うんですね。「ガネーシャ」というゆるーいキャラなんですが、それがいろいろ喋るんですが、すごくインチキくさいんですね。でも、逆に、いろいろ聞いていると面白いから覚えちゃうし、実は、古今東西のいろんな人たちの知恵が詰まっているんですね。それを笑いをまぶして伝えてくれるんですね。タイトルからして、「夢をかなえるゾウ」とダジャレですから、それぐらい気楽な気分でいると、いろんなものが吸収できるということ、ちょっと変わったタイプの面白い本ですね。
谷原 構えずに読めるというわけですね。


<今週の松田チョイス>
◎和田竜『のぼうの城』(小学館)



松田 、血湧き肉躍る戦国絵巻、和田竜さんの『のぼうの城』です。
N まったく新しい時代小説『のぼうの城』。時は乱世。天下統一を目指す秀吉の軍勢が、唯一落とせない城があった。武州・忍城。城主・成田長親は、領民からも「でくの坊」扱いされ、智も仁も勇もないと見られていた。この頼りない城主率いる二千数百の兵は二万の軍勢といかに戦ったのか。実際の史実に大胆な解釈を加えた戦国エンタテインメント小説。>
松田 この城主の長親というキャラクターがものすごく面白いキャラクターなんですね。「のぼう様」、「でくの坊」と呼ばれていて、部下や領民から親しまれている。というよりは、あまりにも頼りないので、支えてあげなきゃしょうがないという気分にさせる、不思議な城主なんです。そこに、豊臣の大軍勢が押し寄せてきて、関東の城はみんな落ちていく。で、弱小な城なんですけども、このお殿様は、なにをとち狂ったのか、「戦おう」って言い出しちゃうわけですよね。そこからが、部下たちの活躍も面白いし、攻める側も攻める側で知恵を使って攻めてくるし、それにスペクタクル・シーンがすごい迫力です。これは、なかなか映画にするのは難しいと思いますが、是非、黒澤明監督が蘇ってきて撮ってほしいと切に思いましたね。
谷原 ぼくも読んだんですけども、のぼうというのが親しまれつつも、バカにされたりしてるじゃないですか。なかに、かぞうという農民が出てくるんですが、忍城が取り囲まれてピンチに陥っているときに、敵方に寝返ってしまって、敵の仕事を手伝っているんですね。でも、ある時、「のぼう」が身を挺して出てきて撃たれるんです。すると、過去にいろんなことがあって侍が嫌いだった、普段は「のぼう」のことを「でくの坊」とバカにしていたかぞうが、実は「のぼう」のことが好きだったんだと気がついて、「よくものぼうを撃ちやがった」と、今度は、また逆に裏切って、それがきっかけで、忍城が唯一落ちない城になるというクライマックスのシーンで、ぼくはボロボロ泣いてしまいました。今年一番の痛快な本でした。皆さん、これは是非、是非読んで下さい。