「特集・川上弘美『風花』」


<総合ランキング>  (5/5~5/11 オリコン調べ)
 1位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 3位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 4位 茂木健一郎『脳を活かす勉強法』(PHP研究所)
 5位 『ヘキサゴンドリルⅡ』(扶桑社)
 6位 西尾維新『傷物語』(講談社)
 7位 TBSイブニングファイブ『余命1ヶ月の花嫁』(マガジンハウス)
 8位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 9位 小栗左多里、トニー・ラズロ『ダーリンは外国人 with BABY』(メディアファクトリー)
10位 『ポケモンぜんこく全キャラ大事典』(小学館)


谷原 松田さん、最近のランキングだと実用書が目立つんですが、小説はどうなんですか?
松田 総合ランキングだとどうしてもノンフィクションが強くなっちゃうんですが、小説の方で言うと、本屋大賞の『ゴールデンスランバー』が山本周五郎賞も受賞して話題になっています。これから、ベテラン、新人、いろいろ話題作が目白押しなので楽しみだと思います。


<特集・川上弘美『風花』>
◎川上弘美『風花』(集英社)



『センセイの鞄』、『夜の公園』、『真鶴』など、恋愛小説の名作を次々と生み出してきた川上弘美さんが、一組の夫婦にフォーカスを絞って書く、初めての小説『風花』を発表しました。主人公は結婚7年目の「のゆり」。彼女は、ある日、匿名の電話によって、夫の卓哉に恋人がいることを知らされます。離婚をほのめかす夫、夫婦の間にたちこめる、微妙なざわめき。途方に暮れながら、揺れ動きながら、自分と向き合い、少しずつ前に進むようになった「のゆり」、33歳の物語。何気ない日常のささやかな描写を織り交ぜながら、自分の人生と夫との距離を見つめ直す女性の心理をきめ細かく描いた恋愛小説の傑作。この作品が、どのように誕生したのか、川上さんが考える「夫婦」とは、「結婚」とは。2年前の「ブランチ」登場以来のTV出演となる川上さんが、気軽にインタビューに答えてくれました。(レポーター:金田美香)


<VTR>
私(松田)もロケに同行して、川上さんの話を聞かせていただきました。VTRでも出てきましたが、特に印象に残った言葉を二つ再録してみます。
*主人公の「のゆり」が「結婚」についてゆるやかに問うていく。そういう描写を通して描きたかったものは?
川上「私の年代っていうのは、仕事を続けるにしても、辞めるにしても、結婚はするもんだという、そういう風に、なんとなく思っていた最後の年代のような気がするんですけれども。いまの20代、30代の女の人たちは(男の人も同じだと思うんですけど)、こうあるべきだということがなくて自由と言えば自由、でも、じゃあ自分たちはどうしたらいいのか、いろいろな選択肢があるだけに、きちんと考えようとすればするほど迷っちゃうんじゃないかなって思うんです。……でも、それはものすごく幸せなことだと思うんですよね。……自分で選んで、どんなに拙く見えても、どんなに幼く見えても、一歩一歩自分で何かを掴んでいってほしいなあって思って書いていったような気がします。」
*川上さんは、この作品を書くことで何を伝えたかったのか?
金田「のゆりと卓哉を通して川上さんが伝えたかったことというのは?」
川上「それ、難しい質問なんですよ。たぶんね、小説を書いてて、伝えたいことって、私はないかもしれない。それよりも、とにかく読んでいただいて、その読んだ方が、何かを感じてくだされば嬉しい。その触媒、きっかけになれば嬉しいなあ。私が書いた通りのそのものを、『あ、そうですか』と受け取って、その通りのままっていうんじゃなくて、一行があったら、その一行で自分のことを考えたり、今までのことを思い出したり、それで、全然違うことを考えたり、それが、もしかすると一番嬉しいかもしれない。」


<スタジオ>
優香 私も、この『風花』読みましたけれども、恋愛小説って、ちょっと苦手な意識があったんですけども、すごく読みやすくて。なぜかと思ったら、恋愛だけじゃなくって、現実的なことが、ちょうどいい具合に混ざり合っているんで、すべてがリアルというか。白黒ハッキリつけたいし、だけどグレーな部分も、あっ、やっぱあるよなあって思って。そのグレーの部分がリアルなんですよ。
谷原 ぼくも読んだんですけども、正直言って、怖かったです、この本、男の立場からすると。女性が主体にして描かれているんで。男って理屈っぽいけども、実は夢見がちで、女の人は一見受け身に見えるけども、決断したらとっても現実的なんだなって感じて。
優香 最終的に思ったのは、女の人は強いなっていうこと。優柔不断だけど、最後にはね。谷原 とっても芯が強いですよね。この本読んでいて、途中から、ある女優さんをイメージしていたんですけども、和久井映見さんの顔が、すっと浮かんできたんですよね。松田さん、川上さんの物語は面白さに加えて文章のうまさも言われていますね。
松田 そうですね。いま言われたような感想をもたれるというのは、このしなやかでなめらかな文章なんですね。こういう文章だからこそ、非常に深い心理的なものをえぐり出すこともできるんですね。この小説は、夫婦の危機の物語ですね。激しい修羅場はひとつもないんですよね。静かに静かに二人の関係が壊れていく、だけど、その中で、新しい感情が少しずつ少しずつ育っていくんです。読む人によっては、それを「怖い」と思うかも知れませんし、ある種の「優しさ」というかな、大事なものを大切にしたいという意味での優しさもあると思うんですよね。だから、川上さんが最後に言ってましたが、読む人によって、感じ取り方が全然違う。もしかすると、読んでいる人の心理が写る鏡みたいな作品なんじゃないかなっていう気がしましたね。
優香 これも、読んだ後に、みんなで話し合える本ですよね。
松田 男の人も女の人も、年配の人も若い人も、それぞれの読み方をすると思いますね。
谷原 美香ちゃん、お目にかかって、とても雰囲気のある方でしたね。
金田 そうなんですよ。まるで、小説の主人公の方のような存在感があるんですよね。でも話すと、優しくて包み込んでくれるような、お母さんのような印象も受けますし。女性の魅力がたっぷりで、憧れですね。
谷原 世の男性にも是非読んでいただきたい恋愛小説です。