『菜種晴れ』と「特集・石田衣良“恋愛の極意”」


 <総合ランキング>  (5/19~5/25 三省堂全店調べ)
 1位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 奥野宜之『情報は1冊のノートにまとめなさい』(ナナコーポレートコミュニケーション)
 4位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 5位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 6位 鈴木貴博『カーライル』(ダイヤモンド社)
 7位 築山節『脳と気持ちの整理術』(日本放送出版協会)
 8位 今尾恵介『日本鉄道旅行地図帳』(新潮社)
 9位 野口嘉則『3つの真実』(ビジネス社)
10位 中日新聞社『ドアラ・チック』(PHP研究所)


<特集・石田衣良“恋愛の極意”>
◎石田衣良『傷つきやすくなった世界で』(日本経済新聞出版)



◎石田衣良ほか『恋のトビラ』(集英社)



1997年、『池袋ウェストゲートパーク』でオール讀物推理小説新人賞を受賞してデビュー。2003年には、『4TEEN』で第129回直木賞を受賞。現在、連載小説を9本、エッセイを4本抱えている、超人気作家・石田衣良さん。これまで、小説やエッセイを通して、若い世代を見つめ、メッセージを送り続けてきた石田さん。この10年で、人びとは余裕を失い、傷つきやすくなってしまったという。それは、「恋愛」についてもいえるのだそうです。今回は、、この5月の刊行された最新エッセイ集『傷つきやすくなった世界で』とアンソロジー小説集『恋のトビラ』のお話を糸口に、リポーター・白石と恋愛談義に花を咲かせました。これを受けて、スタジオでも恋愛談義になりました。谷原さんは、ぼくのもそのネタで振ってきましたが、受けにくいのでかわしてしまいました。
松田 恋愛論も含めて、ああいう風に発言する作家の人って珍しいんですね。みんな作品だけ書いている人が多くて。だから、ああいう人って先輩としては貴重だと思うんですよね。アドバイスしてくれる作家として、知識人として。


<今週の松田チョイス>
◎山本一力『菜種晴れ』(中央公論新社)



松田 女性の心にも響く人情時代小説、山本一力さんの『菜種晴れ』です。
 江戸末期、地方の菜種農家に生まれた二三(ふみ)は、わずか五歳で江戸深川の油問屋の養女となる。泣くのは一人の時だけ、過酷な試練にさらされながらも、気丈に新しい生活を受け入れ、力強く生き抜いていく。なぜなら、二三は人びとをうならせる絶品の天ぷらを作ることができたから。幕末の江戸、困難に立ち向かい、前へ前へと歩んだ一人の少女の波瀾万丈の半生を描く長編時代小説。>
松田 なんと言っても、主人公の女性のキリッとした姿が目に浮かぶようで、それがとても素敵なんです。この魅力的なヒロインを取り囲んでいる、周りの人たちも情が厚い人たちばかりで、とても素敵なんです。こんな素敵な人たちに、実は、過酷な運命が襲いかかる、だから読んでいて、胸を締め付けられるような辛い気持ちになります。でも、主人公は、どんな状況になっても、けなげに真っ直ぐに生きていくんですね。本当に素晴らしい感動的な時代小説だなあって思いましたね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですけども、二三は田舎の農家から江戸にもらわれていって、環境の変化というか、試練とかがいっぱいあるじゃないですか。でもそういうものに負けないで成長していく、そういう一人の成長物語として、一代記としていいなと思いました。あとそれから、今の日本人がなくしてしまったものが、ここにあるような気がします。
松田 そうですね。江戸町人の品格のようなものが、すごく伝わってきますね。