「特集・伊集院静『羊の目』」


<総合ランキング>  (6/15~6/21 有隣堂全店調べ)
 1位 Jamais Jamis『AB型自分の説明書』(文芸社)
 2位 Jamais Jamis『B型自分の説明書』(文芸社)
 3位 Jamais Jamis『A型自分の説明書』(文芸社)
 4位 勝間和代『勝間和代のビジネス頭を創る7つのフレームワーク力』(ディスカヴァー・トゥエンティワン)
 5位 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
 6位 編集工房桃庵編『おつまみ横丁 すぐにおいしい酒の肴185』(池田書店)
 7位 中村俊輔『察知力』(幻冬舎)
 8位 前田敬子・岡優太郎『まこという名の不思議顔の猫 続』(マーブルトロン)
 9位 姜尚中『悩む力』(集英社)
10位 五木寛之・香山リカ『鬱の力』(幻冬舎)
谷原 松田さん、今週のランキングですが、『鬱の力』、『悩む力』、『察知力』、『フレームワーク力』と、タイトルに「力」という文字を使った本が人気を集めているようですが。
松田 結構、流行りみたいですね。注目したいのは、「鬱」とか「悩む」とか、どっちかというと「力」とは反対の、ネガティブなイメージの言葉を組み合わせるというのも多いんですね。『老人力』や『鈍感力』もそうだったんですが、わりと大ヒットに繋がるんですが、そのミスマッチが逆にインパクトになっているんですね。
谷原 ネガティブなものに力を付けることでポジティブに変えていくという。
松田 逆にひっくり返すということですね。


<特集・伊集院静『羊の目』>
◎伊集院静『羊の目』(文藝春秋)



1992年、『受け月』で直木賞、1994年、『機関車先生』で柴田錬三郎賞を受賞し、人と人の絆を温かく、時に優しく描いてきた伊集院静さん。彼は作詞家として近藤真彦に提供した『愚か者』で、1987年に日本レコード大賞を受賞、その他『ギンギラギンにさりげなく』などのヒット曲も生み出しています。そんな伊集院さんの最新作『羊の目』は今までの作品とは一線を画しています。初めてエンターテイメント性を意識したというストーリー展開。実はその裏には以前かわした高倉健さんとの約束があったということです。読後に浮かび上がってくる「家族」や「死」などのキーワードを伊集院さんはどう考えるているのか、伊集院さん自身の怒涛のような人生と小説の内容をリンクさせながら紹介します。小説の舞台でもある浅草・隅田川のほとりに佇む日本家屋でインタビューし、最後に達筆の伊集院さんに「美は強い」と描いていただいた書を拝見。その言葉に託する思いを伺います。
<あらすじ>
昭和8年、ある捨て子が武美と名付けられ戦前の浅草で育つ。 「裏切る事は卑怯なこと」という「任侠の掟」を教えられ、武美は自分を拾ってくれた辰三のために、命ぜられるまま殺しを重ねていく。しかし東京進出を図る四宮組の親分の命を狙うも失敗。武美はロサンゼルスへ逃れるが、その地でも追ってきた四宮組の刺客との死闘を演じる。その後、武美はある人の手引きで安全な場所、すなわち刑務所で25年過ごす。出所後に舞い戻った東京で、任侠として、武美の最後の戦いが繰り広げられる。


谷原 松田さん、『羊の目』ですが、いかがでした。
松田 とてつもないスケールのエンタテインメントで、終始圧倒されるんですけどもね。主人公の少年が「男」になっていく、育っていく姿がすごく印象的ですし、それと同時に、
彼が信奉しているピュアでタフなアウトローの美学みたいなものがものすごい迫力で迫ってくるんですね。今の時代、いろんな意味で指針を揺れているというか、見失いつつある時代なんで、こういう一途な男の生き方というものが語りかけてくるものは、ものすごく大きいなっていう気がしますね。