『生きる』と「真藤順丈『地図男』」


<総合ランキング> (三省堂書店全店調べ・10/13~10/19)
①水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
②伊坂幸太郎『モダンタイムス』(講談社)
③東野圭吾『流星の絆』(講談社)
④Jamais Jamais『O型自分の説明書』(文芸社)
⑤フィリップ・C.マグロー『史上最強の人生戦略マニュアル』(きこ書房)
⑥瀬尾幸子『もう一軒おつまみ横丁』(池田書店)
⑦竹中平蔵『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)
⑧姜尚中『悩む力』(集英社)
⑨副島隆彦『恐慌前夜』(祥伝社)
⑩太田あや『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)


<特集・真藤順丈『地図男』>
◎真藤順丈『地図男』(メディアファクトリー)



仕事中の“俺”は、ある日、大判の関東地域地図帖を小脇に抱えた奇妙な漂浪者に遭遇する。地図帖にはびっしりと、男の紡ぎだした土地ごとの物語が書き込まれていた。千葉県北部を旅する天才幼児の物語。東京二十三区の区章をめぐる蠢動と闘い、奥多摩で悲しい運命に翻弄される少年少女など――地図男が生み出す物語に没入した“俺”は、次第にそこに秘められた謎の真相に迫っていく。今回は、この「地図男」でダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞した真藤さんにインタビューしました。
真藤順丈 /1977年、東京都生まれ。プロの小説家になる前は映画監督の助手をしていた。2008年、『地図男』で、第3回ダ・ヴィンチ文学賞大賞を受賞。続いて、『庵堂三兄弟の聖職』で第15回日本ホラー小説大賞を受賞、さらに、『RANK』で第3回ポプラ社小説大賞特別賞を受賞し、3つの異なる作品で新人賞を連続受賞した。さらに「東京ヴァンパイア・ファイナンス」でも第15回電撃小説大賞銀賞を受賞。
谷原 松田さん、いかがですか。
松田 真藤さんの作品というのは文体がポップで軽快なんですね、リズム感があって。だから、結構バイオレンスなシーンがあったりグロテスクな描写もあるんですが、だけど、そういうものも爽やかに読ましてくれちゃうんですね。そこに、地図へのこだわりのようなマニアックなものをのせて物語を作っていくんで、これからどういう物語を語りだしてくれるのか、楽しみな新人ですね。


<今週の松田チョイス>
◎谷川俊太郎 with friends 『生きる わたしたちの思い』(角川SSC)



松田 詩人の谷川俊太郎さんがネットの仲間たちと一緒に作りました『生きる わたしたちの思い』です。
N 昨年、ネット上で、ちょっとした『生きる』ムーヴメントが起こりました。詩人谷川俊太郎さんの名作「生きる」(「生きているということ/いま生きているということ/それはのどがかわくということ/木漏れ日がまぶしいということ/ふっと或るメロディを思い出すということ/くしゃみすること/あなたと手をつなぐこと(以下略)」)、この詩のはじめの2行「生きているということ/いま生きているということ」、この後に続く言葉を一般の人々が考え、ネットのコミュニティーに次々に投稿したのでした。半年の間に投稿された詩はおよそ2000件。それらの膨大な投稿が再編集され、1冊の本になりました。あなたにとって「生きる」とは何ですか?>
松田 谷川さんは日本を代表する大詩人なんですが、誰にでもわかるやさしい言葉で、人間とか宇宙とかいった大きくて深いテーマを表現してきた人なんですね。この「生きる」という詩もそういう詩なんです。こういうシンプルな言葉で問いかけてくるので、そこに場所ができるんですね。その場所にみんなが集まってきて、それぞれの言葉で、自分の言葉で表現していく。それがズーッとつながっていって、連詩みたいなかたちで、これ全体が、いろんな人たちの言葉でできている詩集になっているんですね。ぼくが気に入っているのは「クレヨンの先が丸くなること」で、絵を描いていけば丸くなっていくじゃないですか、それと人間の成長みたいなものが、丸くなっていくことがよく出ていますね。それと、わりにドキッとしたのが「ふとした瞬間、わたしって死ぬんだなあって思うこと」で。サラッと言っている分だけ重いなあって思いましたね。そういう風に、普通の言葉でいろんなことを考えさせられる、すごく素敵な一冊でした。
谷原 慶太とか、「生きる、生きていること」という詩を考えると、どう思います。
慶太 ふだんはあまり意識しないんですけども、走って疲れたりなんかすると、「ああ、やっぱり生きてるなあ」っていうのがありますね。
谷原 若いなあ。元気だなあ。翔太は。
翔太 ぼくは、朝起きて、今日一日はじまるときとか、終わったときとか、その区切りに「生きてる」って思いますね。
谷原 日々、そのように思うの。
翔太 日々、思うわけではないんですが。
優香 大人ですねえ。