『スリーピング・ドール』と「大沢在昌『黒の狩人』」


<総合ランキング>(三省堂書店全店調べ・11/3~11/9)
① 竹中平蔵『竹中式マトリクス勉強法』(幻冬舎)
② 東野圭吾『聖女の救済』(文藝春秋)
③ 海藤尊『イノセント・ゲリラの祝祭』(宝島社)
④ 太田あや『東大合格生のノートはかならず美しい』(文藝春秋)
⑤ 姜尚中『悩む力』(集英社)
⑥ 東野圭吾『ガリレオの苦悩』(文藝春秋)
⑦ 神谷秀樹『強欲資本主義ウォール街の自爆』(文藝春秋)
⑧ フィリップ・C・マグロー『史上最強の人生戦略マニュアル』(きこ書房)
⑨ 神田昌典+勝間和代『10年後あなたの本棚に残るビジネス書100』(ダイヤモンド社)
⑩ 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)


<特集・大沢在昌『黒の狩人』>
◎大沢在昌『黒の狩人(上・下)』(幻冬舎)



中国人ばかりを狙った惨殺事件が続けて発生した。手がかりは、頭部と四肢を切断された死体のわきの下に残された「五岳聖山」の刺青だけ。手詰まりとなった捜査に駆り出されたのは、新宿署のアウトロー刑事・佐江と謎の中国人・毛、そして外務省の美女・由紀。中国人殺しは、中国政府による”処刑”なのか。やがて事件は、日中黒社会を巻き込んだ大抗争へと発展した──。裏切りと疑惑の渦の中、無数に散らばる点と点はどこで繋がるのか。誰が誰の敵で、誰の味方なのか。やがて、国家をも揺るがす真実が浮かび上がる。逆転につぐ逆転、予測不能──。現実を凌駕した驚天動地のエンターテインメント巨編、ついに刊行。今回、著者の大沢在昌さんをインタビュー。作品ついてはもちろん、ハードボイルドな作風にも伺える、大沢さんにとっての男性像について伺います。
谷原 松田さん、新作の『黒の狩人』いかがでした。
松田 魅力的で癖のある登場人物が次々と出てきて、場面ごとに迫力あるドラマが展開されていくんですね。だから、かなり複雑な物語なんですけども、ぐいぐい読まされますし、最後まで緊張の糸が途切れないという感じで、さすがに大沢さんだと思いましたね。本当に熱いドラマですね。


<今週の松田チョイス>
◎ジェフリ・ディーヴァー『スリーピング・ドール』(文藝春秋)



松田 リンカーン・ライム・シリーズでおなじみの、ジェフリ・ディーヴァーの新作『スリーピング・ドール』なんですが、新らしいヒロインが誕生しました。
 ドンデン返しの魔術師と呼ばれる人気ミステリー作家ジェフリ・ディーヴァー。彼の最新ミステリーが『スリーピング・ドール』。一家惨殺事件を起こしたカルト指導者ダニエル・ペルが脱獄、逃走した。捜索の指揮をとるのはキャサリン・ダンス。人間のしぐさや表情を読み解く「キネシクス」の名手。嘘を見破るダンスと他人をコントロールする天才ペル。お互いの裏をかく頭脳戦が始まった。>
松田 とにかく面白いです、これは。ヒロインのキャサリン・ダンスがとっても魅力的で……。リンカーン・ライムというのは超人的な探偵だったんですが、ダンスの場合には、人間的な弱さも持っているんですね。家族とのつきあい方なんかも、よく描かれていますし。そういうダンスが摑まえようとしているのが、凶悪犯のペルという男で、これがまた、人間の心を操る天才なんですね。二人の駆け引きが、本当に手に汗握るという感じで……。そして、ジェフリ・ディーヴァーお得意のどんでん返しが、「エーッ」という感じで、何度も来るんですね。
谷原 ぼくも読ませていただいたんですが、本当は、来週紹介するという話が、急に今週になって、夢中になって三日半で読んだんです。『ウォッチメイカー』のサブストーリー的なところがあるじゃないですか。『ウォッチメイカー』の犯人って、自分の定めたルールは絶対に守っていくという、とっても理知的な知能犯なんですが、それと対照的に、今度のペルというのは、同じように人をコントロールする天才なんですけども、時に、自分で自分をコントロールできない、直情的な欲望に身を任せるというか……。
松田 人間的な弱さをもっているんですね。それが、捜査官のダンスの人間的な弱さとちょうどいい感じでハラハラさせるんですよ。
谷原 魅力的なんですよね、キャラクターが。
松田 本当にキャサリン・ダンスがチャーミングで素敵だなあと思いますし、このシリーズ、ずっと続けていってほしいなあって思いますね。
谷原 そうですね。松田さんとぼくをトリコにしたキャサリン・ダンス、皆さんもきっと、その魅力にはまると思います。