第30回太宰治賞

第30回太宰治賞贈呈式が行われました

第30回太宰治賞贈呈式は2014年6月16日、東京會舘にて行われ、

受賞者には、記念品及び賞金100万円が贈られました。





【贈呈式レポート】
6月16日(月)、東京丸の内の東京會舘で第30回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の贈呈式が行なわれました。

 まず三鷹市の清原慶子市長が主催者挨拶を行ないました。
 毎回の選考会がいかに厳しいものか、そのなかで今回、選考委員の小川洋子さんがおっしゃった「ことばの力でもっとも遠いところまで連れていってくれた作品」という言葉に震える思いがしたと披露。井鯉こまさんがご妊娠中にこの作品を書かれたこと、お子さんを産むと同時に小説も産んでくれたことに感謝し、厳しい選考会で選ばれてきた今回の受賞作に大いに期待すると述べました。

 次に筑摩書房の熊沢敏之社長が主催者挨拶を行ないました。
 昨年の受賞作「さようなら、オレンジ」が、芥川賞、本屋大賞、三島賞の候補作に選ばれ、大江健三郎賞を受賞したことを紹介し、多元的に評価される作品が太宰治賞から出ていることをとてもありがたいと思っていると述べました。そして、この作品の破天荒でスケールの大きなところから、ガルシア・マルケスをはじめとするラテンアメリカ文学を思い出したこと、そのスケールを保ってがんばってほしい、とエールを送りました。

 そして、選考委員を代表して小川洋子氏が、選考過程と選評の発表をしました。
 まず、この太宰治賞は、他の新人賞ではお目にかかれないようなユニークで個性的な作品を毎回選出していること、今回の受賞作も例外ではなく、とてもあくの強い作品である、と紹介しました。あくが強い、これを言い換えると、不親切な小説で、本来読者が必要だと思いそうな情報がなにも提供されない。読者はわけがわからないまま、この世界に引きずり込まれてしまう。その勇気と才能は、たいへんなものだと思う。井鯉こまさんは、プレッシャーはあるだろうが、ここに集まった人みんなが応援団だと思ってがんばってください、述べました。

 表彰状、正賞および副賞授与のあと、井鯉こま氏が受賞の挨拶をしました。

 栄えある賞をいただきありがとうございます。今回いちばん嬉しかったのは、選評をもらったこと。一人で読んでは書き、ひとしれず新人賞に応募するという個人的な作業から生まれた作品が、自分以外の読者を得たのだという、世界が開かれていくような感じがした、と述べました。

 最後に、荒川洋治氏による乾杯の音頭で、パーティへと移りました。

*選評と受賞作、それに最終候補作品は『太宰治賞2014』にて読むことが出来ます。