ロゲルギストのお泊まり会/木下とも

『物理の散歩道』の著者ロゲルギストの集会は毎月一回で、会場が各家庭をまわるようになった頃のメムバーは高橋秀俊・今井功・磯部孝・近角聰信・近藤正夫・大川章哉・木下是雄でした。みなさん大学研究室の現役の教員だったと思いますが、海外出張でもない限り全員出席だった由。当番の家では夕食をお出しするのにどの奥様も奮闘されたことでしょう。娘とともにはりきったわが家の場合をふりかえってみました。
 ロゲルギストの集りは夕食からはじまって深夜に及びます。木下が一九七五年、目白の学習院舎宅から東海道線東京駅より一時間の茅ヶ崎に引越してからは、木下が当番の場合のみ一泊していただくことになりました。
 東京から到着されるお客様をお迎えして夕食がはじまります。 茅ヶ崎はお魚がおいしいので、新鮮な魚料理をメインに季節の家庭料理、若干のお酒類。鍋もの(魚介類の白菜鍋など)もよくしました。例えば一九八〇年五月二十四日には
 生ビール、ピスタチオ、蚕豆塩ゆで、ザラ干し、二十日大根
 刺身(赤鰺・かつお・いさき)、豚肉とさやえんどう炒めもの、グリーンアスパラとトマト、木の芽田楽、小松菜のおひたし、漬物(かぶ・キャベツ・人参の糠漬)、味噌汁(さやえんどう)
 苺、和菓子、ラムネ、キスミーチョコ、品川巻、ピーセン。
 翌日朝食(パン)トマト茹玉子かざり、生ハム、グリーンアスパラバタいため、バナナ、コーヒー、チーズ、クロワッサン他。
 全員たのしそうに召上って下さいましたが、いわゆる健啖家や酒豪はおられません。今井先生は酒の肴ふうのおいしいもの(うるか、しおから)がわかる方、高橋先生は本来魚料理や和風はにがてかも。
 夕食がすむと、くつろいで籐椅子に席をうつし、いよいよ本番がはじまります。毎回どなたかが「こんなものをみつけた」とおもちゃをとり出されて話がはじまるので、私の家ではロゲルギストの会を「おもちゃ」と呼びならわしておりました。ケン玉で大いに盛り上がったこともありました。
 お話の内容はわかりませんが、話題はつきぬらしく深夜に及びます。いつもどなたか一人が途中でぐっすりひと眠りなさるようでした。高橋先生は眠るどころか一番はりきってしゃべっていらっしゃいました。
 十二時近く、原稿当番と次回の期日の打ち合せがすむと、おひらきとなり就寝準備です。
 八帖の和室にふとんを敷き並べ、ホステルシーツの袋に入って、四人おやすみいただきます。書斎では、机を片よせて場所を作り、進駐軍の折畳みベッドを二つ並べました。こちらに立候補なさるのは近藤・近角先生で、しばってある紐をほどいて脚を組み、布キャンバスをはってベッドに仕立てるまでを、工夫しながらこれ又たのしまれました。お二人は翌朝ベッドを解体して小さく紐でまとめる作業までして下さいました(キャンバスの上には戦時中の幅細のふとんをのせておやすみいただきました)。
 翌朝はパン食です。昨夜にくらべ皆様非常に言葉少なく、ごきげんよく召上ると、十時にはお引上げです。外交辞令のない方々ですからにこやかに簡単なご挨拶のみで、さわやかなこと。近藤先生は往復ジープでした。


 ロゲルギストは大正生まれです。
 木下は「物理であつかうのはものの世界で人間の世界ではない」と申しておりましたが、ロゲルギストのお仲間とかくも親しく話しあっているにもかかわらず、おつきあいはせず年賀状の交換もありません。何年間ご無沙汰していても、お互いに消息をしりたいという発想がない人種のようです。
(きのした・とも ロゲルギスト同人木下是雄夫人)

『新 物理の散歩道』
ロゲルギスト著
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