特集 「双書Zero」創刊! 時代が、世界が、見えてくる!

「こんな思いを込めて、書きました」創刊を飾る、3人の著者から

 阿部真大
『ハタチの原点――仕事、恋愛、家族のこれから』
『ハタチの原点』では、「新卒一括採用」という慣習の見直しを提案しています。そういうことを言うと、新卒採用は、戦後、学校から会社への間断なき移行を可能にしてきたものであって、それをやめたら働く意欲のない若者を大量に生み出すだけだ、と批判する人もいるかもしれません。でも、その点については、私は、若者たちを信頼しています。
 新卒採用がなくなることで、彼らの労働に対するモティベーションは一層喚起されるでしょう。その理由についてはこの本に書いています。簡単に言うと、彼らは、戦後の若者たちとは大きく異なる、ポスト消費の時代を生きる若者たちで、「消費」よりも「仕事」をアイデンティティのよりどころとし、専業主婦よりも共働きを理想としている、ということです。
 個人的な話になりますが、生徒会の執行部をしていた中学3年生のとき、学校に「ノーチャイム制」なるものを導入しました。その際、「チャイムをなくすことで生徒たちはより時間を守るようになる」と主張したのですが、年齢もダブルスコアを超えた自分が、「新卒採用をなくすことで若者たちはより働くようになる」と、同じようなことを主張しているなどとは、当時の自分は想像もしなかったでしょう。
 新卒採用の是非をめぐる論争は、究極的には、大人たちの若者観をめぐる論争へと発展していくでしょう。この点までをも含んで、議論が活発化することを願っています。
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 澁谷知美
『平成オトコ塾――悩める男子のための全6章』
 若い男子の皆さんに向けて、女である筆者が、「生き方」を提案する本を書いた。「女が、いったいどういうつもりで?」と訝る向きもあろうから、ここで弁解する。
 わたしの専門は男性の性の歴史だ。資料を読んでいると、「男たるものかくあるべし」という文章をよく目にする。「男は家族を持って一人前」とか「包茎は手術すべし」とか。生き方からイチモツの具合まで、社会は男性にあれこれ指図する。
 こうした指図を真に受ける人は少なかろうと思っていた。が、そうでもない。それらの言葉がプレッシャーとなって、押しつぶされそうな人もいる。家族を持たなくても、友人によって豊かな人生は送れるし、友人がいなくても、楽しくやっていける。包茎は、皮をむくことができるなら、むしろ手術をしないほうがよい。なので、そういう情報をまとめた本があれば便利では、と、この本を書いた。原動力は、おせっかい精神だ。
「ああせい、こうせい」という「啓蒙」は控えた。男性の人生を生きていない者がやってはいけないことだと思ったからだ。ひたすらデータと事例にもとづいて、「こういう選択肢もあるけど、どっすか?」と「提案」することに努めた。
 啓蒙くさい所もあるかもしれない。そこは筆者の力量不足。すいません、と先に謝っておく。ともあれ、若い男性の皆さんが、ムダなプレッシャーから自由になり、楽しい人生を送る手助けになれば、これほど嬉しいことはない。
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 中島岳志
『朝日平吾の鬱屈』
 朝日平吾。
 この名前を聞いて、ピンと来る人は、ほとんどいないだろう。彼は、1921年9月に安田財閥のトップ・安田善次郎を暗殺し、その場で自殺を遂げた青年である。
 事件当時、朝日は31歳。
 早稲田大学や日本大学を中退し、中国東北部で馬賊隊に入隊するものの、長続きせず、大連を中心に大陸浪人生活を送るが、すぐに行き詰まり、日本へ帰国後に関わった労働運動でも疎外感を抱き、奮起して大石寺で修行生活に入るものの、これも間もなく挫折した。
 折りしも、第一次世界大戦後の不況が日本列島を覆い、貧困・格差が社会問題化していた。各地で労働運動が活発化し、資本家に対する不満が蔓延していた。
 行き過ぎた資本主義に対する強い批判が噴出する中、朝日平吾は一人、本郷の下宿で鬱屈していた。彼は、やることなすこと、すべてうまくいかなかった。神州義団という組織を発足しても、メンバーはまったく集まらず、日雇い労働者のための簡易宿泊施設「労働ホテル」の建設計画を立てても、誰も見向きもしなかった。
 私は、赤木智弘の「希望は、戦争」論を読んだときに、真っ先に朝日平吾を思い出した。そして、昨年6月に秋葉原通り魔事件が起きた際にも、朝日のことを思い出した。
 怨念、屈辱、挫折、不幸、生きづらさ……。
 生存と実存の根拠が奪われ、青年たちが複合的な鬱屈を抱え込んだ社会状況は、当時と今で酷似している。労働環境の不安定さが、存在不安を生み出す現在。そこで鬱積する実存的不満が、暴力を生み出さないためには、どうすればいいのか。
 そんな問題に向き合うために、この本を書いた。
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