「王様のブランチ」出版情報ニュース(2006.12.2)

『夜は短し歩けよ乙女』と「幻冬舎新書」

松田哲夫

<総合ランキング> (11/20〜11/26 リブロ池袋本店調べ)

1位 早坂隆『世界の日本人ジョーク集』(中央公論新社)
2位 茅田砂胡『ソフィアの正餐会』(中央公論新社)
3位 F.S.フィッツジェラルド、村上春樹訳『グレート・ギャツビー』(中央公論新社)
4位 波頭亮『プロフェッショナル原論』(筑摩書房)
5位 田中宥久子『田中宥久子の整形マッサージ』(講談社)
6位 井上勝生『幕末・維新』(岩波書店)
7位 城繁幸『若者はなぜ3年で辞めるのか?』(光文社)
8位 山里亮太『天才になりたい』(朝日新聞社)
9位 アンソニー・ロビンズ『一瞬で自分を変える方法』(三笠書房)
10位 C.バウリーニ『エラゴン〜遺志を継ぐ者(1)〜(3)』(ヴィレッジブックス)

<特集・幻冬舎 新書参入!>

☆香山リカ『スピリチュアルにハマる人、ハマらない人』(幻冬舎)
☆手嶋龍一・佐藤優『インテリジェンス武器なき戦争』(幻冬舎)

今年は、『国家の品格』はじめとして、教養系新書の大ヒットが続きました。ここ数年、「新書戦争」と呼ばれる動きが活発でしたが、今年は、さらにソフトバンク、朝日新聞社などが新規参入して、ますます熱い戦いが繰り広げられています。そこに、今回、幻冬舎も新たに参入することになりました。見城社長インタビューをはじめ、編集会議、装丁打ち合わせなどを直撃。一つのシリーズが立ち上がる姿をドキュメントしました。
寺脇 松田さん。これからも新書の世界が熱くなりそうですね。
松田 たしかに、新書はベストセラーが出やすいメディアではあるんですけども、実は100冊の1冊ぐらいしか10万部を超える本は出ないんですね。だから、非常に過当競争で、たくさん出ているけれども、競り勝たなければならない。ただ、読者にとってみれば、競い合うことで魅力的なタイトルがたくさん出てくるわけで、選択肢が広がるので、もっともっと競い合ってほしいと思いますね。

<哲ちゃんのBOOKナビ!>

☆森見登美彦『夜は短し歩けよ乙女』(角川書店)
松田 弱冠27歳、期待の新人・森見登美彦さん。『夜は短し歩けよ乙女』という奇想天外なロマンチック・コメディです。読み終わった時のぼくの気持を書いてみました。
面白い!なんて面白いんだ!
VTR 天然キャラの少女「黒髪の乙女」は、夜の京都先斗町に、神社の古本市に、大学の学園祭にと、むこうみずに飛び込んでいきます。そこで出会う奇妙な人物たちと、奇想天外で幸せな体験。一方、「乙女」を慕う大学の「先輩」は、そんな彼女の危機を救わんと、とんでもない騒動に巻き込まれていくのです。ドタバタコメディの先にロマンスが待つ極上のエンタテインメント!>
松田 というお話なんですが、軽快な語り口で、スピーディーに物語が展開していくので、読者はどこに行くのかわからないジェットコースターに乗せられているような気分になります。でも、次々に、色鮮やかで、見所満載のアトラクションが繰り広げられるという感じなので、笑って、驚いて、楽しんでいるうちに、本当に幸せなハッピーエンドをやってくるという……。
寺脇
 ハッピーエンド、いいですね。
松田 あきらかに作者の妄想が作り出した世界だということはわかっているんですけども、「もっともっとその世界にいたいなあ」と思わせるような。たとえて言えば、往年の、古き良き時代のハリウッド映画っていう感じで、「この人とこの人は恋愛関係になる」とわかっていて、ちゃんとそうなっていくのが気持ちいいんですね。

「王様のブランチ」出版情報ニュース(2006.12.9)

『失われた町』と「角田光代」

松田哲夫

<総合ランキング> (11/27〜12/3 リブロ池袋本店調べ)

1位 村上春樹訳『グレート・ギャツビー』(中央公論新社)
2位 早坂隆『世界の日本人ジョーク集』(中央公論新社)
3位 茅田砂胡『ソフィアの正餐会』(中央公論新社)
4位 手嶋龍一・佐藤優『インテリジェンス武器なき戦争』(幻冬舎)
5位 畠中恵『みぃつけた』(新潮社)
6位 波頭亮『プロフェッショナル原論』(筑摩書房)
7位 ほぼ日刊イトイ新聞『金の言いまつがい』(東京糸井重里事務所)
8位 よしもとばなな『ベリーショーツ』(東京糸井重里事務所)
9位 アンソニー・ロビンズ『一瞬で自分を変える方法』(三笠書房)
10位 ケビィン・トルドー『病気にならない人は知っている』(幻冬舎)

<特集・角田光代『薄闇シルエット』>

☆角田光代『薄闇シルエット』(角川書店)
昨年は『対岸の彼女』で直木賞受賞、今年は「ロック母」で川端康成賞を受賞した角田さん。12月9日からは『Presents』を原作とする映画も公開されます。ますます、活躍の場が広がり、月に29本の締切があるという人気作家角田光代さんの仕事場を訪問しました。最新作の『薄闇シルエット』は、友人と古着屋を経営しいるハナ(37歳)が主人公。仕事は順調な彼女は、ある日、十年来のつきあいの彼氏から「結婚してやる」と言われ、それに違和感を感じる。それからというもの、仕事や恋愛や結婚について模索していくうちに、その違和感はしだいしだいに大きくなっていくのだが……。
寺脇 松田さん、角田さんの作品の魅力はどんなところに……。
松田 柔らかさと芯があるという部分ですよね。そして、心理描写が、すごくきめ細かくて、読者の胸に落ちてくるという感じですね。この小説も、普通の女性の生き方を描いているんですが、心理の襞をギリギリと描いてくるので、引き込まれていきますね。

<哲ちゃんのBOOKナビ!>

☆三崎亜記『失われた町』(集英社)
松田 作者の三崎亜記さんは、昨年『となり町戦争』でデビューしました。タダモノではない作家だな、と思ったんですが、その後、『バスジャック』という短編集で、この才能は本物だと確信しました。そして、第三作目『失われた町』という作品です。読んで、感想を帯にしました。
この作家の驚異的な進化に圧倒された!
<VTR 30年に一度、一つの町の住民が忽然と消えてしまう不思議な現象「消滅」。この現象に人生を狂わせられた人々が、運命に導かれるように出会い、消滅を引き起こす「敵」に立ち向かっていく。消滅を食い止めることはできるのか? そして、人々は喪失の悲しみを乗り越えられるのか?>
松田 この「消滅」という現象は、静かで何が起こっているのかわからないけども、喩えようもなく怖いんですね。それに立ち向かっていく人たちの、美しくて悲しい戦いが何十年にもわたって続けられていくという話なんです。人が一人もいなくなった町にある日、突然、灯がともって点滅するとか、すごく印象的な綺麗なシーンがあったりするんです。それから、たくさん女性が出てくるんですが、それぞれの人が、恋人を失ったり、消滅によって愛が引き裂かれていったりするんですね。その女性達がスックと立っていてカッコいいんです。そして、戦いの中の悲しみのようなものが押し寄せてきて、最後には感動的なラストが待っているんです。本当に力のある作家だなあと思いましたね。

「王様のブランチ」出版情報ニュース(2006.12.16)

『犬は神様』と「ほぼ日刊イトイ新聞」

松田哲夫

<総合ランキング> (12/4〜12/10 三省堂書店全店調べ)

1位 石原真理子『ふぞろいな秘密』(双葉社)
2位 村上春樹訳『グレート・ギャツビー』(中央公論新社)
3位 『このミステリーがすごい!2007年版』(宝島社)
4位 東野圭吾『使命と魂のリミット』(新潮社)
5位 アンソニー・ロビンズ『一瞬で自分を変える方法』(三笠書房)
6位 石井裕之『「心のブレーキ」の外し方』(フォレスト出版)
7位 野口嘉則『鏡の法則』(総合法令出版)
8位 原ゆたか『かいけつゾロリ まもるぜ!きょうりゅうのたまご』(ポプラ社)
9位 『かんたん年賀状素材集2007年版』(技術評論社)
10位 ケビィン・トルドー『病気にならない人は知っている』(幻冬舎)

<BOOKニュース>

めくると同時に、華やかなアクションが巻き起こり、目の前にファンタジーの世界が飛び出してくる! 「紙の魔術師」の異名をとり、世界中で人気のポップアップ絵本作家、ロバート・サブダ氏、マシュー・ラインハート氏が来日! その制作の裏側をちょっとだけ見せてくれました!

<特集・「ほぼ日刊イトイ新聞」〜糸井重里密着〜>

今、6冊同時刊行が話題になっている「ほぼ日ブックス」。「ほぼ日」とは、コピーライターの糸井重里さんが主宰するPC版ウェブサイト「ほぼ日刊イトイ新聞」のこと。1998年にはじまって、毎日休むことなく更新中。タモリや大貫妙子など大物から無名の一般人まで、多彩な執筆陣による厖大な量の読み物、オリジナルの手帖やTシャツといったグッズの発信、イベントなど、さまざまな企画がここから生まれている。次々に書籍化されるコンテンツを生み出す「ほぼ日」主宰者・糸井重里氏に密着! あふれる発想力の秘密に迫りました! 松田 (糸井さんとは)昔から友達なんです。あって話していると、いろんな発見があるんですね。いろんな人が彼にあいにくるというのは、そういうことだと思うんですよ。コピーライターの時代から「面白いものを発見する」、「おししいものを発見する」ことの天才ですから、本当にあきることがない人ですね。次々と面白い本を出すので、まあ、我々のライバルなんで、こちらも頑張らなければなあと思いますね。

<哲ちゃんのBOOKナビ!>

☆山本容子『犬は神様』(講談社)
松田 銅版画家・山本容子さんの『犬は神様』という本です。版画が添えられた、とても素敵な本です。帯コピーを考えてみました。
犬と人との深い愛の物語
<VTR 山本容子さんのエッセイ『犬は神様』。「犬はいつも人間と一緒にいる生き物だ。……そして思う。一緒に過ごした人間は時を経て変化するけれど、犬はいつも変わらない。」有名銅版画家が綴った、犬たちと過ごした日々の記録。とりわけ、アーティストとして独り立ちしようと奮闘してきた16年間、まさに同志のように付き添い、その生を全うしたルーカスとの日々は切なく胸に迫ります。>
松田 この本のタイトルは、英語で書くと「DOG is GOD」なんですね。ひっくり返すと犬が神になるんですね。神とは言っても、あがめ奉る神じゃなくて、「守り神」というか「守護神」というか、いつも傍にして支えてくれる。僕も犬を飼っていたから、よくわかるんですが、犬の面倒を見ているような気がしているんですが、実は、犬に支えられているんですね。飼い主に頼り切っているように見えて、実は、飼い主の方が犬によって支えられているんだということですね。山本容子さんの絵とあわさって、素敵な本になっています。クリスマス・シーズンですので、プレゼントにいいと思いますので是非……。
寺脇 関根さんもライル君と仲良しですが、どんな感じなんですか。やっぱり友達っていう感じなんですか……。
関根 ぼくの息子のような感じもするんですけども、時々さとしてくれる先輩のようなね、そんな感じもするんですよね。
寺脇 共通の言語がないわけですからね。目で訴えあうとか、何か優しく見守ってくれるとか。
関根 とにかく、「まっすぐ生きろよ」ということを教えられますね。
寺脇 そういう、いい関係ができているんですよね。ペットとかいうよりも、なんか同志のようなね。

「王様のブランチ」出版情報ニュース(2006.12.23)

「第5回 輝く!ブランチBOOK大賞」

松田哲夫

今年最後の「ブランチ」でしたが、これまで10年8ヵ月、MC(司会)を務めてきた寺脇康文さんが番組を「卒業」しました。同じく、第1回から出演していた関根勤さんも恵俊彰さんも「卒業」しました。この日の番組は「寺脇さんまつり」と題して、10年8ヵ月の懐かしい映像満載でした。「本のコーナー」では、「BOOK大賞」を発表しました。

<第5回 輝く!ブランチBOOK大賞>

★新人賞
万城目学『鴨川ホルモー』(産業編集センター)
 鬼や式神を操って戦う摩訶不思議な競技「ホルモー」。このゲームに魅せられた大学生達の青春の日々を描く一大スペクタクル。松田審査委員長が「デビューしたばかりとは思えない実力の持ち主」と絶賛。万城目さん、今のお気持ちをひと言。
万城目 ようやっと一人前の作家になれたかなという感じがします。
 万城目さんは京都大学卒業後、某一流メーカーに就職、しかし、三年前に小説家を志して退職し、文学賞への投稿を続けてきました。
白石 あのお話ができるまで、どれくらいの期間がかかったんですか?
万城目 一ヵ月ぐらいですかね。その時、結構、生活がカツカツでして、就職するか否かという決断期で、これを書いてダメだったら、お国に帰って就職しようかな、とそう思っているときなんで。
 背水の陣で、見事デビュー、今後はどういう作品を?
万城目 誰が読んでも、すごい、わかりやすい面白さの本を書きたいなと。また、不思議な変な話を書いていきたいと思っています。

★BOOK大賞
小川洋子『ミーナの行進』(中央公論新社)
 2006年BOOK大賞は、今年も質の高い作品を発表、小川洋子さん。名作『博士の愛した数式』が累計200万部突破。さらに、現在、小川さんの本は、世界10ヵ国以上で翻訳されており、特にフランスでは絶大な支持を得ています。なんせ今年は、小川さんの小説が原作のフランス映画「薬指の標本」まで公開。異論なしの受賞です。
松田 (表彰状を読む)「表彰状、小川洋子殿。あなたは多くの名作を生み出し。私たちに深い感動を与えてくれました」。おめでとうございます。
小川 どうも、ありがとうございました。
 海外での評価の高さを裏付けるように、来年一月には、フランス政府から勲章(フランス芸術文化勲章シュバリエ)を授与されるそうです。これは、日本の作家としては二人目の栄誉(1997年に筒井康隆さんが受賞しています)。
小川 日本の田舎の片隅で書いた小説が、知らない間に、遠い世界にちゃんとたどり着いて、そこからもご褒美がもらえるというのは、ありがたいことです。
 今年、発表した『ミーナの行進』も話題に。病弱な少女ミーナが、さまざまな本と出会うことで、成長していく姿が描かれています。
松田 『ミーナの行進』って、本とか物語とか、そういうものが、こんなに大事なんだよということを改めて教えてくれる本だったなあっていう気がするんですよね。
小川 自分自身が、本によって育てられてきたという、その本への感謝の気持ちを、いつか小説にして残したいなと漠然と思っていたというのが、この『ミーナの行進』という作品で、ちょっとかたちにできたかなあと思っています。
松田 来年の抱負は?
小川 やはり、いい小説を書きたいと思って、コツコツ毎日書くということ、それ以外にできませんので、来年も日々、言葉と格闘して、世界を一つ作り上げていくという生活になりそうですね。
寺脇 さ、審査委員長、ズバリ決め手を。
松田 『ミーナの行進』というのは、本当に素晴らしい小説で、発表されたときから古典の風格があるというような作品で、是非皆さん読んでいただくといいと思いますが。それから、フランスはじめとして世界で読まれる……まあ、村上春樹さん、吉本ばななさん、そして小川洋子さんという、世界的な作家になっていて、フランス映画も素晴らしい作品なんですよ。日本人の原作がフランス映画になるって、やっぱり凄いことだなあと思いますね。これからも楽しみですね。

<審査員特別賞・3部門>

★恵俊彰賞
宮部みゆき『名もなき毒』(幻冬舎)
 3年ぶりとなる、宮部さんの現代ミステリー、ふとしたことから連続殺人事件に巻き込まれていく、大企業のサラリーマン杉村。悪意やねたみ、日々の暮らしの底に潜む小さな毒が犯罪にまで繋がっていく過程が克明に描かれます。今回は、代理で、担当編集者に賞状をお渡ししました。すると、後日、宮部さんから直筆のお手紙が。「この度はブランチBOOK大賞『恵俊彰賞』をまことにありがとうございました。とても嬉しいです!! 地味な主人公の地味な話の地味なシリーズですが、今後もしっかり書き続けて参ります。2006.12.23。宮部みゆき拝」。恵さん、数ある本のなかからこの本を選んだ理由は?
 だいたい、僕が選ぶということ自体がおこがましい話ですけれども。まあ、面白いですよ。読みやすい。そして、『模倣犯』とか『理由』とか、宮部作品って読み応えのあるストーリーが多いんですけども。この作品は、実に優しいタッチで、ひょんなことから事件を解いていったり、その中で出会っていく人間関係だとか、すごい展開が速いんですよね。それで、予想もしなかった人が犯人でもあるし。本当に面白かった。

★関根勤賞
劇団ひとり『陰日向に咲く』(幻冬舎)
 小説家デビューを果たした劇団ひとりさん。処女作『陰日向に咲く』は、ホームレスに憧れるサラリーマンやアイドルに恋するオタクくんなど、愛すべき主人公たちの姿を描いた連作短編集。笑いの中にも人生の悲しみや憂いがにじむ文章で、作家としての才能を発揮。その高い力量で、多くの人を驚かせました。
(賞状を受け取った劇団ひとりさん、涙ぐんでみせてくれました。)
劇団ひとり (次回作については)ずっと考えているんですけども、いいのができないんですよね。ホストの話。ホストがお客さんとピクニックに行くんですよ。それで遭難しちゃうんですね。凍死寸前になるんです。で、お客さんも衰弱しちゃうんですね、女性がね、ホステスなんです。そして、この瀕死の状態でチークを踊るというね。「心までは遭難しちゃいないんだ」という。「おれはホストだぜ」と言って、瀕死の女性を抱えてチークを踊るという話を考えてたんですが、あまりにも飛びすぎていて、書けないんですよね。難しいんですよね。それ、リアルに書けたら面白いと思うんですけどね。前回はさすがにね、断ったゴーストライターというのをね、次回は取り入れてみようかなと。太田プロというのは、そういう節操なく、もってくるんですよ。「劇団ひとり忙しいんだから、ゴーストでいいよ」って。僕は、「それはなしです」ってね。で、無理矢理書いたんですよ、自分でね。でもね、今になればね、使ってもいいんじゃないかって。いま、小説の腕はあるんだけども、どうしても世にでれない書き手の皆さん。よかったら、僕のゴーストになりませんか。あなたが4、ぼくが6という取り分でいかがでしょうか。ゴーストをお待ちしています。
関根 最後までシャレっぽいですよね。すべてが演技の中で。ああいう演技力がある人ですから、この本、彼が演じているようで、立体的に見えてくるんですよ。短編集なんですけども、一つ一つが妙にからまっていくんですよね。長編としても読めるという、不思議な作品。特に、マイナーなアイドルに賭けるファンを描かせるとね、本当に彼にしか書けない世界があって。ビックリしましたよ、面白くて。

★寺脇康文賞
三浦しをん『風が強く吹いている』(新潮社)
 今年7月、直木賞を受賞した三浦さんの受賞後第一作です。ぼろアパートに住む10人の学生達が箱根駅伝を目指す青春小説。
白石 (賞状を読み上げる)「表彰状。三浦しをん殿。あなたが書いた『風が強く吹いている』は、寺脇康文審査員をして『今年、一番面白かった小説と言わしめました』」おめでとうございます。
三浦 ありがとうございます。
 学生陸上の最高峰ともいえる箱根駅伝を、素人ばかりで目指す、途方もない夢を抱き、努力する若者達の姿は、前向きに生きる勇気を与えてくれます。
白石 箱根駅伝をテーマにした理由というのは、何なんですか?
三浦 お正月にテレビでやっているのを見るのが、前から好きだったんですよ。それで、若い男性達が正月そうそう頑張ってますので、何でかなあというのをすごく知りたいなあというのがあって、それでですね。実際に箱根駅伝に出ている大学の陸上部の皆さんに取材に協力していただいたり、実地にそのコースを見たりとかしましたし。
白石 実際に箱根のコースを歩いたんですか。
三浦 要所要所では歩いたりしたんですが、まあ、車通りが多くて危険というのを言い訳に、ほとんど車の中からですね(笑)。歩くのもつらいですから。
 この本を通して三浦さんが伝えたいこととは。
三浦 何かに一生懸命取り組む人の気持ちには、何かできるできないは関係ないんだということをくみ取っていただければなあと思います。
 最後に、寺脇さんへこんなメッセージが。
三浦 ありがとうございます。光栄です。「相棒」楽しみにしてます。ただのファンね(笑)。
寺脇 ありがとうございます。まさに、三浦さんがおっしゃった通りなんですよ。ものすごく面白かった。
優香 松田さん、みなさんが選んだ本はいかがですか。
松田 どれも素晴らしい作品で、まだ読んでいない人は羨ましいです。正月休みに、是非読んでみて下さい。
来年1月6日からはMCに谷原章介さんを迎えます。優香ちゃんともども、よろしくお願いします。僕の推薦する本のコーナーも<今週の松田チョイス>とタイトルは変わりますが、同じようにオススメの本を紹介していきます。よろしくお願いします。