「王様のブランチ」出版情報ニュース(2007.8.18)

『木洩れ日に泳ぐ魚』と「写真家梅佳代」

<総合ランキング> (8/6〜8/12 日販オープンネットワークWIN調べ)

1位 坂東眞理子『女性の品格』(PHP研究所)
2位 奈須きのこ『DDD 2』(講談社)
3位 宮部みゆき『楽園(上・下)』(文藝春秋)
4位 空知英秋『銀魂 3年Z組銀魂先生 2』(集英社)
5位 江原啓之『人間の絆』(小学館)
6位 内田康夫『幻香』(角川書店)
7位 東野圭吾『夜明けの街で』(角川書店)
8位 田中森一『反転』(幻冬舎)
9位 西原理恵子『毎日かあさん(4)』(毎日新聞社)
10位 渡辺淳一『鈍感力』(集英社)

<特集・写真家梅佳代>

◎梅佳代『男子』(リトルモア)

梅佳代、1981年石川県生まれ。2007年、初写真集『うめめ』で新人写真家の登竜門・木村伊兵衛賞を受賞。東京はじめパリ、ロンドン、タイで展覧会を開催するなど、海外でも高く評価され、今、最も注目されている若手写真家の一人。その梅さんがこの夏、2冊目の写真集『男子』を発表しました。これは、大阪に暮らす小学生3〜4年生の男の子たちのユーモラスな表情・仕草をとらえたもの。梅さんの撮影スタイルは、日常の「おもしろいシーン」「ハッとした瞬間」を逃さずシャッターを切る、それだけ。そして、彼女の視線の先にある被写体はいつも「人」だということ。梅さんの作品に対する思い、創作方法などをうかがいました。

<今週の松田チョイス>

◎恩田陸『木洩れ日に泳ぐ魚』(中央公論新社)

松田 先頃、山本周五郎賞を受賞した恩田陸さんの最新サスペンス・ミステリー『木洩れ日に泳ぐ魚』です。
VTR・N 『夜のピクニック』で本屋大賞、吉川英治新人文学賞、『中庭の出来事』で山本周五郎賞を受賞した恩田陸さんの最新作『木洩れ日に泳ぐ魚』。この夜を限りに別れるという若い男女が、荷物をすべて片付けたアパートの一室で、最後の夜を過ごそうとしている。「あの事件」から1年、二人が過ごした地獄のような日々を終わらせるために、「あの男の死」について決着をつけなくてはならない。謎が謎を呼ぶ傑作サスペンス・ミステリー>
松田 登場人物は二人だけ。冒頭から異様な緊張感に包まれた独白が続いていきます。読んでいてゾクゾクして、「次はどうなる?」とグイグイと引き込まれていきます。そして、二人の会話は、「ある男の死」と二人の愛の秘密に向かっていくのです。ある出来事を思い出すと、それで大きく局面が変わり、さらに、それが別の発見へと繋がり、それまで見えていた風景がガラリと変貌してしまいます。まるでオセロ・ゲームのような感じです。特異なシチュエーションの男女の物語ですが、だからこそ、普遍的な「愛」の問題が鮮やかに見えてきます。恩田さんの成熟した物語術を感じさせられる傑作です。
優香
 私も読んだのですが、映画か舞台をみているような物語に引き込まれました。「禁じられた愛」だからこそ燃え上がるということも切々と伝わってきました。

<これからの「ブランチ」は?>

8月25日は「世界陸上」のために「王様のブランチ」はお休みです。
9月1日は「王様のブランチ」は11:00から約1時間、「本コーナー」はお休みです。ただし、「映画コーナー特別編」として「『包帯クラブ』in大磯高校」をお送りします。これは、谷原章介さんが大磯高校を訪れ、高校生たちと話し合い、映画「包帯クラブ」を中庭に設営したスクリーンで上映し、彼らの感想を聞くというドキュメントです。
9月8日・15日の「本コーナー」は『包帯クラブ』連続特集の予定です。天童荒太さん、堤幸彦監督が登場します。15日の「映画コーナー」には「包帯クラブ」の出演者たち(柳楽優弥くん、石原さとみさん、貫地谷しおりさん、田中圭くん、関めぐみさん、佐藤千亜妃さん)が生出演します。
ちなみに、8日の「松チョイ」は宮部みゆきさんの『楽園(上・下)』(文藝春秋)になると思います。
(このように、9月に入ると、15日公開の映画「包帯クラブ」関係のパブリシティが「王様のブランチ」中心に展開されます。TVスポットも流されますし、公開前日には主要情報番組には「包帯クラブ」の情報が流れます。「ニュース23」には天童さんが特別出演することになっています。)

「王様のブランチ」出版情報ニュース(2007.8.11)

古川日出男『ハル、ハル、ハル』

<文芸書ランキング> (7/30〜8/5 ブックファースト渋谷店調べ)

1位 宮部みゆき『楽園(上)』(文藝春秋)
2位 カート・ヴォネガット『国のない男』(日本放送出版協会)
3位 金城一紀『映画篇』(集英社)
4位 西尾維新『刀語8』(講談社)
5位 宮部みゆき『楽園(下)』(文藝春秋)
6位 竜騎士07『ひぐらしのなく頃に 第一話』(講談社)
7位 東野圭吾『夜明けの街で』(角川書店)
8位 松井今朝子『吉原手引草』(幻冬舎)
9位 諏訪哲史『アサッテの人』(講談社)
10位 古川日出男『ハル、ハル、ハル』(河出書房新社)

<特集・古川日出男>

◎古川日出男『ハル、ハル、ハル』(河出書房新社)

2006年に直木賞候補になった『ベルカ、吠えないのか?』で世界史を犬の視点でとらえ直し、同年三島由紀夫賞を受賞した『LOVE』では、東京の街を小学生や猫の視点で活き活きと描き出す。ジャンルに区分できない最先端を走る続ける作家・古川日出男。そんな彼の最新作が『ハル、ハル、ハル』。母親に捨てられた少年晴臣(ハルおみ)13歳、家出を繰り返す少女三葉瑠(みハル)16歳、家庭崩壊して鬱になったタクシー運転手原田悟(ハらださとル)41歳。絶望を抱えた三人のハルが、一挺の拳銃をきっかけに日常を逸脱していくサバイバルストーリーである表題作をはじめ、何かに追われつつ、何かを求めて暴走する男女を主人公にした連作小説集。この小説を通して、作家古川日出男の内面と特徴を解明すべくインタビューしました。
谷原 松田さん、古川さんはどんな小説を書かれる方なんですか?
松田 『ハル、ハルハル』という作品もそうなんですが、この(VTRの)しゃべりを見ていてわかると思うんですが、速射砲みたいにいろんなイメージや刺激的な言葉とか、魅力的なキャラクターとかがポンポンポンポン出てくるんですね。それを、読者が自分がそれまでに観てきた映画とか芝居とか自分の経験とかと結びあわせていくと、物語が読者の中にできていくという感じですね。だから、ライブ感覚に近い、舞台とか音楽、ギグとおっしゃっていましたが、ラップとかあんな感じなんです。
谷原 じゃあ、書いているときもライブっぽいんですかね。
松田 わりにノリノリで書いているのかもしれませんね。

「王様のブランチ」出版情報ニュース(2007.8.4)

『蝉時雨のやむ頃』と「タレント本ランキング」

(※印の著者にはインタビューしました。)

<タレント本ランキング> (6/15〜7/14 日販オープンネットワークWIN調べ)

1位 藤原紀香『紀香魂』(幻冬舎)※
2位 島田紳助『ご飯を大盛りにするオバチャンの店は必ず繁盛する』(幻冬舎)※
3位 劇団ひとり『陰日向に咲く』(幻冬舎)
4位 島田洋七『がばいばあちゃんの勇気がわく50の言葉』(徳間書店)
5位 島田洋七『がばいばあちゃん佐賀から広島へめざせ甲子園』(集英社)
6位 IKKO『IKKO女の法則』(世界文化社)※
7位 竹内結子『たびぼん』(SDP)
8位 千原ジュニア『14歳』(講談社)
9位 美輪明宏『世なおしトークあれこれ』(パルコ出版)
10位 高田純次『適当論』(ソフトバンクパブリッシング)

松田 タレント本っていうのは、だいたい売れるパターンが決まっているんです。早ければ1週間、だいたい1か月がピークで、あとはストンと売り上げが落ちてしまうんです。このランキングを見ていて、ちょっと違う傾向も出てきたなと感じましたね。劇団ひとりさんは発売から1年半経ってもまだ売れていますし、紳助さんの新書は、ジワジワと売れていて、普通のビジネス書や教養書の売れ方に近い動きをしていますね。タレント本もちょっと変わりつつあるのかもしれませんね。

<BOOKニュース>

◎タカアンドトシ『本音か!』(ワニブックス)※
◎沢尻エリカ『ERIKA2007』(SDP)※

<松田チョイス>

◎吉田秋生『蝉時雨のやむ頃』(小学館)

松田 今週は、少女漫画界の巨匠・吉田秋生さんの最新作『蝉時雨のやむ頃』です。
VTR・N 映画化された『吉祥天女』、『桜の園』や『BANANA FISH』、『YASHA(夜叉)』などの傑作を発表してきた吉田秋生さんの待望の最新作『海街Diary1 蝉時雨のやむ頃』。舞台は海辺の街鎌倉。古い家に暮らす三姉妹、幸、佳乃、千佳のもとに、15年前に別れた父親の死が伝えられる。その葬式で出会った、母親の違う妹すずも、鎌倉に越してくる。四姉妹の生き方と恋愛と家族の絆を、海辺の街の風景の中で鮮やかに描いた新シリーズ。>
松田 これまでにも、鎌倉を舞台にした吉田さんの作品はありましたが、この古都でもあり、潮の香りのする街の雰囲気がコマの間から匂い立ってくるようです。四姉妹はじめ、登場してくる人たちのキャラクターがそれぞれ個性的で魅力的で、彼女たちが生きて、考えて、恋している姿には、感動を覚えます。主役はもちろん、脇役から子役まで最高の芸達者を集め、極上のシナリオと手練れのカメラマンを擁して巨匠が満を持して撮った人情ドラマといった味わいで、小津安二郎の映画のようなテイストを感じました。
谷原 これまでの吉田さんの作品も好きで読んでいたんですが、この作品は、日常的な目線で描かれた登場人物一人一人が魅力的ですね。
松田 これからの展開も楽しみですね。