右翼は言論の敵か

鈴木 邦男

なぜテロが起きるのか、右翼は言論の敵対者なのか。新右翼とよばれた著者が忘れられた右翼思想家たちを紹介し、右翼運動の論理と心情、その実態に迫る。

右翼は言論の敵か
  • シリーズ:ちくま新書
  • 836円(税込)
  • Cコード:0231
  • 整理番号:821
  • 刊行日: 2009/12/07
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:新書判
  • ページ数:256
  • ISBN:978-4-480-06521-6
  • JANコード:9784480065216
鈴木 邦男
鈴木 邦男

スズキ クニオ

1943年福島県生まれ。早稲田大学政経学部卒業。在学中から民族派学生運動に参加、全共闘運動とは激しく対立する。生長の家系の「全国学協」の初代委員長に就任。その後、組織の内紛で運動を離れ、産経新聞社に勤務。72年に「一水会」を結成。新右翼として注目される。99年「一水会」代表を辞任、顧問に。幅広い分野の人たちと交流をもち、様々テーマで執筆活動を続けている。著書に『新右翼』『夕刻のコペルニクス』『公安警察の手口』『愛国者は信用できるか』『愛国と米国』r失敗の愛国心』など多数がある。

この本の内容

社会を震撼させるテロ。右翼は「言論の自由」の敵なのか。右翼は自分たちに言論の場がない、だからテロに訴えるのだと主張する。そんな右翼をメディアの側は言論活動の当事者とは認めにくい。そして人々は実態を知らぬまま恐怖心を募らせる―。こうした堂々巡りが何十年も続いてきた。右翼はもともと何を目指していたのか?新右翼の旗頭といわれた著者が、知られざる右翼思想家たち、運動の理想と現実、カネと暴力の実態を論じる。

この本の目次

序章 右翼とは何者か
第1章 右翼と街宣車
第2章 十七歳の愛国心
第3章 大学紛争と三島事件
第4章 右翼から遠く離れて
第5章 昭和維新運動の戦後
第6章 反貧困と右翼思想
第7章 右翼運動のカネと暴力
終章 “言葉”を伝えるたたかい

読者の感想

2010.1.26 山本和幸

「右翼は言論の敵か」。 ―この問いに対して、多くの国民は是とするだろう。
むしろ、「街宣」と「言論」という言葉は、まったく正反対の存在であるとなんとなく考えている人の方が多いのかもしれない。


鈴木邦男氏のように多くの右翼とは一線を画す異端的な言論スタンスが私は好きだからというのが最大の理由である。「なんだ、鈴木邦男ファンか。」とがっかりされた方は、ちょっと待ってほしい。

右派の中にも、彼が「新右翼」や「民族派」という枠組みにカテゴライズされ、
自分と近い存在とされていることに不満を持つ人は多いことだろう。私自身、
彼が映画「靖国」を礼賛し「愛日映画」などと主張していた事には非常に違和
感を感じる。しかし、彼の言うとおり、観る前から批判するのは、荒唐無稽そ
のものだ。因みに、私は映画「靖国」を観る機会に恵まれた。その上で、この
映画は「愛日映画」に非ず、酷評せざるを得ない作品だと言わざるを得ない。

しかし、人は少なからず様々な先入観に惑わされている。たとえ、その映画が
靖国神社などから反発を受けたという事実を知らなくてもだ。例えば、中国人
が作ったからなどといったことにより、先入観を作っているのかもしれない。
自らの立場に対し、観念的に陶酔するのではなく、「右翼」に対して、批判的
に、かつ冷静に見られる者こそ「新右翼」なのだと、本書を通して改めて確信
した。

維新とは、天壌無窮の我が国体を守りながら、大胆な体制変革を志向する運動
だ。すなわち、天皇陛下を中心とする国のかたち以外は、全てが改革の対象と
なる。従って、現下のわが国を覆う諸問題を鑑み、明治維新にも昭和維新運動
にもない、これまでにない大変革だということだ。単なる観念的な復古主義者
は要らない。

ということは、そこに「常識」など存在しないのだ。むしろ、私達は「常識」
を創造することに取り組んでいかねばならない。

であるならば、どんな意見でも一旦耳に入れて、自らの頭で考えてみる必要が
ある。そこで、他者に惑わされることなく、それを評価し、賛同できないので
あれば、その対案を考える。それこそが、日本の未来を切り開く“維新者”に
なろうとする心構えではないのか。

戦後、思想を模索することは蔑ろにされ、多くの悪法や悪辣な政治家を駆逐す
るなどといった対症療法的な運動ばかりが展開され、思想を真摯に模索するこ
とは優先事項ではなかった。そういった運動を否定するわけではないが、そこ
には「創造」や「建設」といった概念はないことは言うまでもない。そのよう
な「創造」や「建設」と無縁の運動は「維新」を遠ざけるだけだ。

本書は、事前知識がなくとも読めるから、日本の思想・政治運動史などについ
て今から学ぼうとしている人にもお勧めできる。政治運動をしている身として、
私自身も色々と考えさせられる点も多々あった。

また、本書では彼が出会った様々な右翼思想家について多くの筆を割いている。
「大物」と呼ばれるような多くの思想家に出会っていたからこそ、彼の異端的
なスタンスは展開できるのだろう。私は権威主義的な発想が嫌いではあるが、
里見岸雄、葦津珍彦などから直に話しを訊いてみたかったなと思いながら読ん
だ。が、私は本書に挙げられていたような人物以上に、現代日本で少数派とし
て圧迫される鈴木邦男氏にこそ、話を訊いてみたい。

「鈴木邦男嫌い」にこそ、ぜひ読んでほしい。それでも、鈴木邦男氏の本を読
むのが嫌な方は、今度から「私はこの問題に関してこう思うが、あの鈴木邦男
ならどう思うだろうか」と考えてみたらどうだろうか。

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