中井久夫コレクション 私の「本の世界」
若きヴァレリーを襲った
「ジェノアの危機」の正体とは
精神医学関連書籍の解説、『みすず』等に掲載の年間読書アンケート等とともに、大きな影響を受けたヴァレリーに関する論考を収める。
【解説: 松田浩則 】
高校時代以来六十余年、精神科医となってからも、著者の傍らにはいつもヴァレリーの書があった。コレクション最終巻では、数々の書評や、読書をめぐる達意のエッセイに加え、精神科医としての深い読みから生まれた独自のヴァレリー論を収録する。著者にとってヴァレリーはいつも危機の中にあった。最初の危機は若き日、にわかに拡大した知的視界を前にして陥った「自己同一性拡散」である。自己の底に無限の力を感じるが、現実の前では無に等しいという感覚。そして嵐の夜に経験した超覚醒状態…。「ジェノアの危機」と言われるこの深刻な事態を、著者は自己支配のパラドックスという視点で読み解いていく。
1 ヴァレリーについて(ポール・ヴァレリーと青年期危機
船と海とヴァレリー ほか)
2 書評(書評の書評
ソーレル『人間の手の物語』 ほか)
3 本と仕事の周辺(バリント『治療論からみた退行―基底欠損の精神分析』あとがき
レンベルガー『無意識の発見―力動精神医学発達史』あとがき ほか)
5 読書アンケートに応えて(「翻訳の世界」翻訳書選者としてのコメント
「みすず」読書アンケート)
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