新・ちくま文学の森15 絵のある世界 ─絵のある世界

鶴見 俊輔 編集 , 安野 光雅 編集 , 森 毅 編集

堀内誠一/川上澄生/坂本直行/モース/シートン/木村荘八/小出楢重/有元利夫/岡本一平/上田哲農/谷内六郎/キャロル/クレー 他

新・ちくま文学の森15 絵のある世界 ─絵のある世界
  • シリーズ:シリーズ・全集
  • 1,922円(税込)
  • Cコード:0393
  • 整理番号:
  • 刊行日: 1995/12/20
    ※発売日は地域・書店によって
    前後する場合があります
  • 判型:四六判
  • ページ数:400
  • ISBN:4-480-10135-7
  • JANコード:9784480101358
鶴見 俊輔
鶴見 俊輔

ツルミ シュンスケ

1922−2015年。哲学者。1942年、ハーヴァード大学哲学科卒。46年、丸山眞男らと「思想の科学」を創刊。65年、小田実らとベ平連を結成。2004年、大江健三郎らと「九条の会」呼びかけ人となる。著書に『アメリカ哲学』『限界芸術論』『アメノウズメ伝』などのほか、エッセイ、共著など多数。『鶴見俊輔集』全17巻もある。

安野 光雅
安野 光雅

アンノ ミツマサ

安野 光雅(あんの・みつまさ):1926年島根県津和野生まれ。画家・絵本作家として、国際アンデルセン賞、ケイト・グリーナウェイ賞、紫綬褒章など多数受賞し、世界的に高い評価を得ている。主な著作に『ふしぎなえ』『ABCの本』『繪本平家物語』『繪本三國志』『片想い百人一首』などがある。2020年、逝去。

森 毅
森 毅

モリ ツヨシ

1928年東京生まれ。東京大学数学科卒業。京都大学教養部教授を長く務める。著書に『まちがったっていいじゃないか』(ちくま文庫)、『数学の歴史』(講談社学術文庫)、『対談 数学大明神』(安野光雅氏と共著、ちくま学芸文庫)ほか多数。2010年7月逝去。

この本の目次

あやとりかけとり より(竹久夢二)
えげれすいろは詩画集(川上澄生)
虫類図譜抄(辻まこと)
タヌキ(手塚治虫)
サーバーのイヌ・いぬ・犬 序章(サーバー)
囮り船(岡本一平)
東京における生活(モース)
避難小屋(今和次郎)
密林の彷徨(小松真一)
戦中気儘画帖より(武井武雄)
隅田川両岸一覧 抄(木村荘八)
氷魚の村君(菅江真澄)
はるかなる山(上田哲農)
山で見た星(野尻抱影)
森の悲劇(シートン)
私の草木漫筆より(坂本直行)
足の裏 春の彼岸とたこめがね(小出楢重)
劉生絵日記 より(岸田劉生)
わが家の食卓(鴨居羊子)
パリからの旅 より(堀内誠一)
シャガール わが回想 より(マルク・シャガール)
ゴッホの手紙 より(ヴァン・ゴッホ)
クレーの手紙 より(パウル・クレー)
へたも絵のうち より(熊谷守一)
もうひとつの空より(有元利夫)
ジャコメッティ 私の現実より(ジャコメッティ)
イーナ・ワトソンへ(ルイス・キャロル)
ある絵の伝記(ベン・シャーン)
マオリの古代信仰 より(ゴーギャン)
歌と歌絵(チッペワ族)

読者の感想

2009.9.16 義翁

  絵でも字でもうまくかこうなんて
  とんでもないことだ

 と、収録作の『へたも絵のうち』の冒頭で熊谷守一は書いている。もしかしたら、この言葉は絵というものの魅力、その秘密を解く鍵になるものなのではないか・・・と思いました。
 絵は、紙と鉛筆さえあれば、誰にでも、描こうと思えば描けてしまうもの。それなのに、この世には「絵かき」という職業が存在する。誰にでも描こうと思えば描けてしまうものなのだから、絵を飾りたいと思ったら自分で描いて飾ったってよさそうなのに、現実には、絵は、大抵のところ、買って、飾る。よって、「絵かき」という職業が成立している。つまり、絵かきの描く絵には、誰にでも描けるようなものではない何か、魅力(という言葉ではちょっと、しっくりしない物足りない気がするのだけれど、他にちょうどいい言葉が見付からないので、とりあえず、魅力、のようなもの)があるワケなのだろうと思うのです。どうやらそれは「上手い絵」だから売れるのではないらしい・・・。
 おそらく、絵かきのこころが、その絵のなかに見えるから、それが見る者に響くから、だから人は絵かきの絵を買うのだろう。だから「絵かき」が成り立つのだろう。・・・絵かきとは、そんな、響く絵が描けるひと。
 では、そのように響く絵を描くにはどうしたらいいのかというと、冒頭のこの二行、この境地、なのではないか、と思うのです。この熊谷守一の短い二行は、絵かきについて、絵(もしくは書)そのものについて、総じて芸術というものについて、厳しくもあたたかく、的確に(少なくともその一面を)言い表していると思うのです。
 また更に、熊谷守一はこんな事も書いている。
 人というものは、絵の「価値を信じようとする。あんなものを信じなければならぬとは、人間はかわいそうなもの」なのだ、と。ならば、そんな、絵なんてものをただひたむきに描くことで生活しなければならない絵かきという存在こそ「かわいそう」の最たるもの・・・だよなあ、としみじみ考えさせられてしまいました。
 ・・・本書は、ただでさえユニークな『文学の森』のシリーズの中でも特に異色な一冊。ぱらぱらとページをめくるだけで、いろいろな絵が目にとびこんできて、読まずとも、見て、楽しむことができる。今までこの広い世界に文学全集のたぐいは数々あれど、こんな一冊は前代未聞なのではないかと思います。「文学」を拡大解釈していったら、とうとう「絵」に行着いた、ということなのでしょうか。頭のやわらかい素敵な発想ですね。
 ただ、欲を言わせていただければ、彩色の施されている絵はカラーで印刷して見せていただきたかったなァ、と・・・。これはちょっとゼイタクというものでしょうか、ネ。

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