ハプスブルク・スペイン 黒い伝説 ─帝国はなぜ憎まれるか
十六世紀、新大陸からの銀を背景に世界覇権国となったスペインを凋落させたのは彼らを取り巻く「黒い噂」だった──歴史はいかに歪められるか、その構造に迫る。
1492年、スペイン王国はイスラム勢力からイベリア半島を奪還。同年発見された新大陸からの銀資産を背景に、16世紀スペインは一大世界帝国へのし上がった。カルロス1世とその息子フェリーペ2世によるハプスブルク家の支配で、スペインは黄金時代を迎える。だがその繁栄の裏で、大国の残虐非道ぶりを糾弾する怪文書がヨーロッパ各地を駆け巡る。新大陸での先住民虐殺、異端審問の過酷な拷問、王室内部のスキャンダル…「噂」が次第に「事実」として語られ、「黒い伝説」はスペイン帝国凋落の一因となった―。21世紀の今日にいたるまで、スペインに対する根深い偏見のもととなったプロパガンダは、一体誰が、どんな目的で流布させたのか。そこにはいかなる事実が含まれるのか。ヨーロッパ史の泰斗が緻密な検証から、歴史の「真実」が形作られる過程をあぶり出す。
第1章 黒い伝説前史(アラゴン連合王国の誕生
アラゴンのイタリア進出 ほか)
第2章 スペインとハプスブルク朝(ハプスブルク朝スペインの誕生
ハプスブルク朝のねらい ほか)
第3章 黒い伝説(カルロス1世の二つの顔
フランドル戦争 ほか)
第4章 スペイン人とその歴史(コムネーロスの乱から啓蒙期まで
スペインの衰退 ほか)
第5章 結び
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