初号試写を見る事ができた1

 4月25日、いよいよ完成した映画「包帯クラブ」の「初号試写」が観られる日がやってきました。小雨模様のどんよりとした空の下、天童荒太さんと待ち合わせて、調布の東京現像所に向かいます。
 堤幸彦監督はじめとする製作スタッフの面々に加えて、中村さん、兵頭さん(電通)、大岡さん、植田さん(TBS)、遠藤さん、野村さん(東映)、小川さん(SDP)、菅井さん(ホリプロ)、神さん、市山さん(オフィス・クレッシェンド)など製作委員会メンバーも顔を揃えています。
 石原さとみさん、柳楽優弥さん、田中圭さん、関めぐみさんなど出演者たちも次々に到着。彼らは、ロケ現場の延長のようなノリで和気藹々と近況報告しあっています。一足遅れてきた柳楽くんが髪を短くしたこと、例によって裸足にサンダルのことなどが話題になっているようでした。
 音楽のハンバートハンバートのお二人、エンディングテーマを歌っている現役高校生の高橋 瞳さんも緊張した面持ちで天童さんに挨拶しています。「王様のブランチ」中野プロデューサー自らビデオカメラを携えているのを見つけて、「人手が足りないんですね」とからかうと苦笑いしていました。
 この日がくるまで、ちゃんと試写を観ることができるかどうか、本当に心配でした。ぼくは、いい映画であってほしい、話題になり成功してほしいと、なによりも願っています。そして、できれば映画がヒットし、本も売れればいいとも。だからこそ、なかなか冷静な気持ちでは試写に臨めないだろうと感じていました。
 でも、それ以上に、自分が繋いだ「バトン」の行方が気になって仕方がなかったのです。天童さんから渡してもらった作品を一冊の本として世の中に送り出し、それが映画化へと繋がっていきました。多くの読者に読まれるということだけではなく、こういう風に他のメディアの人たちが、天童さんが作品に込めたメッセージを、すなわちバトンを引き継いでくれていることが嬉しかったのです。
 だから、まだまだ続くであろう、この長いリレーで、初めのころの区間を走った人間が、後続のランナーの走りをハラハラしながら眺めているといった心境です。「順位や勝敗はさておき、しっかり走ってほしい」と祈るような気持ちでいるのです。こういうぼくが、純粋に一人の観客として映画を観ることができるかどうか不安だったのです。
 映画が始まると、予想通り、「ワラ」「シオ」「ディノ」とお互いに呼び合う姿を見ているだけでウルウル、「すっかるくなった」「ごやっけさー」といった台詞にまたウルウルと、後で、隣席の天童さんに「松田さん、ずっと泣いていましたね」と言われてしまうような状態でした。
 でも、すぐに、ちょくちょく出てくる涙のことは気にしないことにしたのです。それに気をとられていると、映画そのものを観ることができなくなるからです。そこで、流れてくる涙を汗のように拭いながら、極力冷静に画面に集中していきました。
 こういう風に居直ってみると、不思議と気持ちも落ち着いてきて、映画に没入することができました。それでも、クライマックス・シーンにくると、熱い涙が噴出してきて、ついつい嗚咽を漏らしてしまいそうになりました。
 映画を観終わった直後の印象は、以下のようなものでした。
 ①一人の観客として、お世辞抜きに、本当にいい映画を観せてもらったという満足感と感謝の気持ちでいっぱいでした。
 ②映画なりにオリジナルな部分もたくさんありながら、天童さんの書いた物語の骨格がしっかり生き続けているし、メッセージもストレートに伝わっていると感じられました。
 ③キャスティング、カメラワーク、ストーリーの緩急、カットの編集、インサートショット、音楽、主題歌、それぞれ見事にきまっていると感じました。
 ④決して通俗的にならず、かといって高踏的にもならず、ほどよいエンタテインメント作品に仕上がっています。
 ⑤軽さと真摯さ、笑いと感動、しなやかさと強さ、こういうものをあわせもったこの作品は、必ずや多くの観客に、とりわけ若い人たちの胸に届くだろうと思いました。