初号試写を見る事ができた2

 この映画「包帯クラブ」の成功要因をひと言で言えば、第一に「ピッタリのキャスティング」であり、第二に、堤監督の「職人的な監督術」だと思います。
 まず、キャスティングですが、見ているうちに、それぞれの役にそれぞれの役者さんがピッタリはまっている、まさに適役だと感じました。
 柳楽優弥くんは『誰も知らない』での、うちに秘めた喜怒哀楽を眼だけで表現する切ないまでの演技で、ぼくたちを圧倒しました。そのことは記憶に新しいでしょう。この作品では、一転して、インチキ関西弁などコミカルな部分や市庁舎屋上で走り回る演技など行動的で陽性な部分を前面に出していて、役者としての成長を感じさせてくれました。
 こういう動の部分が際立ってくることで、フッと遠くを見るような寂しげな表情など静の部分が強く印象に残るようになりました。そして、ラスト近く、自分の心の傷を告白するシーンでは、まさに柳楽くんならではの眼の演技で、深い哀しみを表現していました。

 石原さとみさんについては、当初、「綺麗すぎるんじゃないの」という危惧を述べる人がいましたが、結果としてははまり役だったと思います。やはり、綺麗だということは、映画を観る観客にとっては嬉しいもので、アップの表情の美しさには、ついつい見惚れてしまいました。
 一方で、自分の生き方に自信がもてず、「私には取り柄がない」と呟くときのうつろな表情、そして、厳しい状況に立たされたときの本当につらそうな表情を見ていると、思春期の少女の気持ちを見事に演じきっていると感じられました。
 また、この女優さんの演技を見ていると、綺麗さととともに「芯の強さ」が感じられ、それが随処で光っていました。吐き捨てるような台詞や啖呵のドスも利いていましたし、メンバーが感傷やムードに流されそうになるときに冷静にツッコミを入れるところなどもいい感じでした。
 この二人の主役を、貫地谷しほりさん、田中圭さんという準主役が際立った演技で見事に支えていました。貫地谷さんは、ここのところCFも多くなりNHKの連続テレビ小説のヒロインになるなど、まさに旬の女優さんですが、その弾けるようなエネルギーを、堤監督は効果的に引き出していました。
 田中さんは、場面によってコミカルだったり、シーリアスだったり、いろんなタイプの演技を見せてくれ、芸達者な人だなあと感心してしまいました。ぼくとしては、今年の助演男優賞をさしあげたいくらいでした。
 この四人に関めぐみさん、佐藤千亜妃さんを加えた六人がとってもいいチームを組んで、「包帯クラブ」を活き活きと演じていました。
 この映画は、若者たちが包帯クラブを始めるあたりまでは、コミカルにテンポよく進んでいきます。こうした軽めのストーリー展開には青春映画らしい心地好さがありました。そして、クラブの活動が本格化していく過程での、ドライブがかかっていく感じもとってもいいと思いました。
 こうした前半の軽さとスピード感があるからこそ、その後、物語にしだいににじみ出てくる「いのちに直面することの重さ」という真摯なテーマを、素直に受け止めることができるようになっていると感じました。
 そして、小説と違って、すべてを説明することなく、ポンと次の場面にとんでいかざるを得ないことも多いのですが、そのあたり、周到に組み込まれているインサートカットやきめ細かい編集によって、なめらかに繋がっていくという印象が残りました。
 カメラワークといい、カット割りといい、場面のつなぎ方といい、挿入カットといい、それぞれ無駄なく、効果的に組み立てられています。堤監督の職人的な監督術が最大限に発揮された作品だといってもいいのではないでしょうか。
 時には笑いながら、時には涙を浮かべながら、若者たちの真摯な行動に惹きつけられ、深い感動を覚える作品になっています。素晴らしい映画をつくってくれたスタッフ、キャストの皆さんには心から感謝したいと思いました。そして、若い世代の観客には共感をもって迎えられるのではないか、いや、そうあってほしいと切に願いました。