初号試写を見る事ができた2

 映画が完成し、初号試写も終わり、公開日も9月15日と決定。その日に向けて、パブリシティが本格的に始動しました。その第一歩として、完成した映画をどのように宣伝していくかを考えるために、「スニークプレビュー」というものがおこなわれました。まず、ネットを通じて、作品名などは一切伏せて「『切ない青春映画』を見ませんか」という告知をします。これに対して応募があった中から抽選で選ばれた人たちを、30代、20代、10代に分けて観てもらうということです。
 この試写会は、5月前半、東映の試写室でおこなわれました。どういうものなのか、どんな反応があるのか、好奇心もあって、10代向けの回に同席させてもらいました。
 ぼくにとって、この映画は二回目なので、要所要所で涙は出てきたものの、比較的冷静に鑑賞できました。観終わった後の率直な感想としては「重い映画なのに気持ちがいい」というものでした。そして、「重い」ということは、決して悪いことではないと思いました。なぜなら、天童さんが書かれた重いテーマがちゃんと受け継がれているということなのですから。
 この日は、上映後に各10人くらいのグループに分かれて、ヒアリングもおこなわれていました。この日、観に来ていた人が、ほとんど帰らずに出席していたのは驚きでした。ヒアリングの内容もなかなか興味深いものでした。「『包帯クラブ』という題名を知って、どういう風に感じましたか」という質問に「ホラー映画かと思った」、「血が出たりして、こわい映画かと思った」と答えているのが意外でした。考えてみると、何の説明もなしにこのタイトルを見たら、こういう反応がでてきてもおかしくありません。しかし、10代の人たちは、どんな映画か分からずに観ているのに、とってもいい印象をもってくれていました。そして、重さも含めて、この映画に描かれているものをしっかりと受け止めてくれているという手応えを感じました。
 5月16日、「包帯クラブ」製作委員会の宣伝分科会が開かれ、スニークプレビューのアンケート結果が報告されました。これまでにもスニークプレビューをおこなった経験のある東映さんのまとめでは、「満足度が高いこと」が第一にあげられていました。こういう試写の場合、何の映画かまったくわからないので、結構、シビアな点数をつける人もいるそうです。でも、今回はほぼ9割の人たちが満足したと答えていました。特に、10代、20代といった若い層に好評なようで、それは何よりだと思いました。
 次に、「しっかり受け止めてくれていること」も指摘されました。「印象に残ったシーン」という項目には、「ディノとワラの出会いのシーン」、「ディノがビルの屋上に包帯を巻くシーン」などがあげられていて、制作者の意図がきちんと伝わっていると感じられました。
「この映画にはどんなキーワードが当てはまると思いますか」という質問には、「感動」、「泣ける」、「重い」、「面白い」、「癒し」、「明るい」、「笑える」、「暗い」といった順に答えが多かったようです。「重い」「暗い」と「明るい」「笑える」が同じぐらいだということは、この映画がもっている奥行きがきちんと受け止められているということなのでしょう。特筆すべきは、10代で「感動」「泣ける」が高いポイントになっていることでした。
 総じて、スニークプレビューの結果は上々でした。映画そのものは「面白い」という評価を得たと断言してもいいでしょう。こういう素晴らしい映画を、どのようにして多くの人たちに薦めていくのか、ぼくたちに課せられた責任は大きいと感じました。
 原稿をここまで書いてきたとき、オフィス・クレッシェンドの神さんからメールが届きました。堤監督がご自身のブログで、拙文についての感想をお書きになっているということでした。早速、アクセスしてみると、「6月7日」に、以下のような文章がありました。
「映画『包帯クラブ』の公式HPから行ける筑摩書房・松田哲夫氏の『「包帯クラブ」との長い旅』に感動。細かな観察眼で正確な現場レポートを書かれ、暖かい視線で関わった人々を描く。読むにつけこの原作の映画化に関われてよかったと思う。自分自身では客観的な“自己評価”は出来ないが、作品の発起人のお一人である松田氏からこのような暖かいお言葉をいただくと本当にうれしい。なんだか先生にほめられた気分。学生時代ほめられることはめったになかったので、非常にうれしい。ありがとうございます。」
 この文章を読みながら、「いえいえ、滅相もない。感謝の言葉を届けたいのは、ぼくの方です」と、ついついつぶやいてしまいました。そして、ぼくたちが繋いできたバトンが、しっかりと監督から届けられた、そういう手応えを感じたのでした。
 ぼくは、いま、鉢巻きや靴ひもを締め直して、再び走り出すための準備運動をはじめています。そろそろ、また次の走者にバトンを届けるべき時がきたようです。