初号試写を見る事ができた2

 製作委員会に参加している各社が、公開日に向けて活発に動き始めました。
 そんなある日、東映の孤嶋さんから朗報がもたらされました。彼は、これまでの経験をもとに、コミック化の道を探っていました。そして、打診していた「ヤングサンデー」編集部から、「やりましょう」という頼もしい返事が返ってきたというのです。「ヤングサンデー」といえば、優香ちゃんが大ファンだという『RAINBOW—二舎六房の七人—』(原作・安部譲二、作画・柿崎正澄)も、ぼくが「ブランチ」で紹介した『イキガミ』(間瀬元朗)も連載されています。どちらも、ギリギリの状況に追いつめられた若者たちが、必死に生きる姿をリアルに、感動的に描いた力作です。こういう作品と並んで掲載されるのは楽しみだと思いました。
オオイシヒロト(大石普人)さんの作品『キングスウヰーツ㈰』、『キャプテンどんかべ㈰』「ヤンサン」編集部との話し合いに、天童さんの原作を預かっている筑摩書房も加わり、権利関係の交渉を進めました。それと並行して、具体的な作業もはじまりました。「包帯クラブ」をコミックにする漫画家としては、オオイシヒロト(大石普人)さんに白羽の矢が立ちました。彼はこれまで、「ヤングサンデー」を舞台に、『キングスウヰーツ』全5巻(2005年)、『キャプテンどんかべ』全3巻(2006-7年)などの作品を発表してきています。主人公は、それぞれパティシエとサッカー部員なのですが、どちらも汗と涙をふんだんに流す若者たちです。目標に向かって、ひたむきに体当たりしていく彼らの姿には感動させられました。
 そうこうするうちに、登場人物(ディノ、ワラ、シオ、リスキ、テンポ)のイメージ画が届きました。映画の試写を見ていないというのに、オオイシさんの絵は、柳楽くんや石原さんはじめとするキャストの面々とどこか似通った雰囲気を醸し出しています。彼らが縦横無尽に動き回る姿が目に浮かぶようでした。ぼくは、直感的に「いい感じになりそうだ」と確信しました。

 引き続き、作業は急ピッチで進み、次に届いたのは、連載第一回のラフ原稿コピーでした。オオイシさんと編集部としては、すでに「包帯クラブ」が活動を開始していて、その一例を紹介するところから始めるつもりのようです。このエピソードは、サイドストーリーとして発表された「包帯クラブバンド通信」からとられています。鉛筆で勢いよく描かれたラフからは、登場人物たちの熱い思いと哀しみが切々と伝わってきました。さっそく、天童さんに届けるとすぐに、こういう感想が返ってきました。
「サイドストーリーの短いエピソードを、しっかりと絵&物語に表現されており、うれしいし、面白かったです。ジンロ(イジメにあっている少年)のお母さんのところなど、ジーンときました。誠実な漫画家さんであることが伝わってきます。今後も、思うように、自由に描いて下さって結構です。原作者として、読者としても、楽しみにしています。ムリにも、リクエストを見つけるとしたら、(希望というより、期待ですね)今後、ところどころでよいので、笑える場面があれば、楽しみが増すだろうなあ……と夢想します。」

 ぼくは、天童さんのメッセージを携えて、孤嶋さんたちと「ヤンサン」編集部を訪問しました。編集長の三上さん、副編集長で担当の福本さん、そして漫画家のオオイシさんが揃って出迎えてくれました。編集長は、「素晴らしい原作をいただいたので、いい作品に仕上げるように頑張ります」と力強く挨拶してくれました。
 福本さんは、付箋が山ほど付けられた『包帯クラブ』を手にしながら、「いい言葉や、大事な表現に線を引いていくんですが、どんどん増えていって、全部に引きそうになるんですよ」と熱く語ってくれました。オオイシさんは、最初は、飄々とした雰囲気でニコニコしていましたが、いざ作画の話に触れると、真剣な表情で「原作を読んでいると、いろんなイメージや場面が目に浮かんでくるんですよ」と話してくれました。
 7月12日発売号から連載を開始し、8月中旬に第1巻、9月中旬に第2巻を刊行するのが目標で、そのためには全10話ぐらいにしたいと考えているそうです。しかし、原作の大事な部分を落とさずに生かしていくと文字量が多くなってしまうし、そこから触発されたイメージを絵にしていくとページ数が増えていきそうだと悩んでいるようでした。原作が豊かにふくらんでいく姿を目の当たりにするようで、ぼくはワクワクしました。