8月から9月にかけて、公開に向けてのパブリシティ活動が急ピッチで進んでいます。試写会が各地で開催され、「観たよ、いい映画だね」という声がいろんなところから届きます。「王様のブランチ」で隣に座っているはしのえみさんも、「新幹線の中でポケットDVDで観てたんだけど、涙がボロボロでてきて困った」と話しかけてきました。
オフィス・クレッシェンドの神さんから、高橋瞳さんのエンディングテーマ「強くなれ」(ソニー・ミュージックレコーズ)のプロモーション・ビデオが届きました。堤監督が演出したこのPVは「通常版」と「映画インサート版」の2パターンがあります。「通常版」には、さまざまな子供や若者が、スケッチブックに「家族のこと」「ほしいもの」「楽しいこと」「将来の夢」「怒っていること」「つらいこと」などを書いて見せるインサート・ショットが入っています。観ていると、いまの時代に生きる若い人たちの素顔が垣間見えてくるようで、小柄な体からパンチのある声を響かせている高橋さんの歌う姿とあいまって、見事な映像作品になっています。ああ、これも「包帯クラブ」から生まれた表現の一つなんだと思いました。

天童荒太さんにも、雑誌や新聞、ラジオやテレビなど、いろんな媒体でのインタビューをお願いすることが多くなってきました。天童さんはその一つ一つに誠実に対応してくれました。インタビュー原稿にはていねいに目を通され、まとめた人の意図を尊重しながら、よりよいい表現、より伝わりやすい言葉になるようにと大幅に手を入れてくれました。
「婦人公論」でおこなわれた柳楽優弥くんとの年齢差30歳という対談は傍で聞いていても楽しいものでした。日ごろ、インタビューなどではあまり多くを語らない柳楽くんが、うちとけて話している姿に、マネージャーさんもびっくりしていました。彼の、「僕はこの『包帯クラブ』の撮影後、通りすがりの人でも、この人にも傷があるのかなあ、それはどんな傷なんだろうと思いを巡らすようになりました」という言葉が、10代ならではの感受性だなあと感じました。
9月21日に「ニュース23・金曜深夜便」で放送される予定の膳場貴子キャスターによる天童さんへのインタビューも聞き応えのあるものでした。特に、天童さんの克明な創作ノートを、驚きと好奇心満々の表情で食い入るように見つめていた膳場さんの姿が目を引きました。そして、天童さんが作品を書くとき、その背景を事細かく構築してから執筆にかかるという話を聞いて、膳場さんが、「報道も同じで、伝えることは短くても、そのために、背景をきちんと取材していないと」と語られ、作家とニュースキャスターの仕事の共通点にふれたあたりは印象深いものでした。
9月8日、「王様のブランチ・本コーナー」での「『包帯クラブ』特集」第1弾は天童さんと堤監督の対談で、それをうけてぼくも短く映画についてコメントしました。いよいよ、泣いても笑っても公開まであと1週間というところまできました。はやる気持ちを抑えるように、ぼくは原作『包帯クラブ』を久しぶりに開きました。そこには、小説としての世界が変わらずに静かに広がっていました。「ああ、いま、いろんな人にバトンが渡って、さまざまな表現として花開いているものの根源がここにあるんだ。すべては、ここから始まったんだ」と思うと感慨深いものがありました。
読み進むうちに、映画やコミックには出てこない、小説だけの描写や場面が強く訴えかけてきました。「ブランコ君」に代表される、久遠という街の過去の歴史、そして、ワラ、ディノはじめ6人の未来の姿、これらからは、この小さな作品のスケールの大きさがあらためて伝わってきました。また、ワラはこの「包帯クラブ」に出会うまでは「ナキ」とも呼ばれ泣き虫だったこと、カレシとのH体験で深く傷ついていたことなど、いまの思春期の女の子のもつ気持ちの揺れ幅を見事に捉えていると感じました。
そして、次に掲げるような言葉が目にとまりました。小説を読んだ人も、映画を観た人も、コミックを読んだ人も、こういう風に感じ取ってくれたらいいなあと思いました。
「自分以外の人の、どうして傷ついたかという話は、わたしたちの世界を広げてくれる。自分が一番傷つきやすく、一番繊細だって、知らないうちに自己チュー、高ピーになっていた内面のこわばりを、人々の傷や痛みが、いつのまにかほぐしてくれる。」
- 01「王様のブランチ」から始まった
- 02『永遠の仔』という作品の衝撃
- 03文庫版『家族狩り』が刊行される
- 04『包帯クラブ』が生まれた
- 05さらに成長していく物語
- 06映画化への道が開かれる
- 07製作委員会・ロケハン・脚本
- 08クランクインそしてロケ地訪問
- 09撮影はクライマックス(前)
- 10撮影はクライマックス(後)
- 11「初号試写」を観ることができた(1)
- 12「初号試写」を観ることができた(2)
- 13「初号試写」を観ることができた(3)
- 14堤監督からバトンが返ってきた
- 15コミック化も始動する(前)
- 16コミック化も始動する(後)
- 17完成会見・完成披露試写の日
- 18夜空の試写会 in 大磯高校
- 19映画公開へのカウントダウンが始まる
- 20映画公開と読者からのメッセージ
- 21DVDの発売、韓国での上映・出版などなど
- 227年がかりの大作『悼む人』が完成する(前)
- 237年がかりの大作『悼む人』が完成する(後)



