それから、4年の歳月が過ぎていきました。天童荒太さんは、1995年に発表した『家族狩り』を文庫化するにあたって、その基本的な骨格を生かして、まったく新しい物語として書き起こしていくという作業に集中していました。この成果が文庫版『家族狩り』(新潮社)として、2004年2月から全5冊で刊行されました。天童さんは、重いテーマをじっくり抱え込みながら、迫力のある物語に結実させていったのです。

ぼくは、このつらくて重い物語を引き込まれるように読み進みました。ささやかな光明が差してくるラストに深い感動をおぼえました。そして、『永遠の仔』から5年という月日を待っていた甲斐があると思いました。こういう物語を届けてくれた天童さんに深甚なる感謝の気持ちを送りたいと思いました。そこで、この年の「ブランチBOOK大賞」に選びたいと提案すると、スタッフも出演者も大賛成してくれました。
天童さんに伝えると、「『ブランチ』なら」と、民放番組に初出演してくれました。そこで、ぼくが代々木公園で寒風に吹かれながらインタビューしました。天童さんは、「新しい形で書く、しかも文庫で出すというのは、どう受け止めてくれるのか、不安もあった仕事でした。思った以上の人たちに気に入られて、ブランチさんにも評価していただいて、『よくやったなあ』と肩叩かれるような幸福感があります」と語ってくれました。
そして、2005年がやってきました。この1月から、ぼくは「ちくまプリマー新書」という新しいシリーズを立ち上げ、編集長になりました。このシリーズの企画書に、ぼくはこういう文章を添えました。
「新しい『新書』を刊行します。従来の『新書』の読者層は大学生から中高年の男性でした。この『新書』は、より若い読者、小学校高学年から中高生ぐらいの年代の読者にまっすぐ向き合っていきます。その上で、中高年読者、女性読者などまで、幅広い読者層にひろがっていければいいと思っています。これまでの『新書』よりも、よりベーシックでより普遍的なテーマを、子供たちにもわかりやすい表現で伝えていきます。子供たちの知的好奇心を刺激し、それに応えられるものを目指します。」
創刊ラインアップには、橋本治さん、内田樹さん、玄侑宗久さん、吉村昭さん、最相葉月さんの力作が並び、クラフト・エヴィング商會のお洒落な装幀とあいまって、好評のうちにスタートを切ることができました。
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天童さんとは、折々にお目にかかって、物語のこと、出版のこと、世の中のことなどを話すようになっていました。ぼくは、その時々に一番関心のある話をすることが多いので、当然、「プリマー新書」の話題にはよくふれていました。そういう話をしているとき、ふと「天童さんに一冊書いてもらえないだろうか」と思いついたのです。もちろん、永年かかって紡ぎ出しつつある大きな物語が、天童さんの目の前にあることは重々承知していました。
新書という身軽なメディアであることの特性を生かすつもりで、「小説をお願いするというわけにはいかないでしょうが、エッセイのような、それほど構えない軽いものを、新書でどうですか。『永遠の仔』や『家族狩り』などを書く過程でお調べになったこと、読者からの反応によってインスパイアされたことなどを『「永遠の仔」「新・家族狩り」創作ノートより』というようなかたちでお書きになったら、長大な物語をお書きになる『箸休め』にもなるのではないでしょうか」と提案してみたのです。
当然、「いま、そういうものを書くゆとりはありません」という答が返ってくるものだと覚悟していました。ところが、意外なことに、天童さんは「考えさせてください」と真剣な顔で言ってくれたのでした。
- 01「王様のブランチ」から始まった
- 02『永遠の仔』という作品の衝撃
- 03文庫版『家族狩り』が刊行される
- 04『包帯クラブ』が生まれた
- 05さらに成長していく物語
- 06映画化への道が開かれる
- 07製作委員会・ロケハン・脚本
- 08クランクインそしてロケ地訪問
- 09撮影はクライマックス(前)
- 10撮影はクライマックス(後)
- 11「初号試写」を観ることができた(1)
- 12「初号試写」を観ることができた(2)
- 13「初号試写」を観ることができた(3)
- 14堤監督からバトンが返ってきた
- 15コミック化も始動する(前)
- 16コミック化も始動する(後)
- 17完成会見・完成披露試写の日
- 18夜空の試写会 in 大磯高校
- 19映画公開へのカウントダウンが始まる
- 20映画公開と読者からのメッセージ
- 21DVDの発売、韓国での上映・出版などなど
- 227年がかりの大作『悼む人』が完成する(前)
- 237年がかりの大作『悼む人』が完成する(後)









