さらに成長していく物語

 天童さんは、当初は120枚ぐらいの、長めの中編小説を書くつもりだったようでした。しかし、書き進むにつれて、しだいに構想がふくらんでいって、最終的には260枚の長編小説になりました。それだけにとどまらず、天童さんのなかでは、この物語の世界はさらに大きく広がりつつあったようです。
 天童さんは、このように語っています。
「『包帯クラブ』は、たぶんロングランできる内容のものかなという感覚は、いまはあります。読者との今後のやりとりというか、どんな声が返ってくるかによるんですけれども、育ててもらえる可能性はすごくある。背中を押してもらったりすることによって、いかようにでも伸びていく、成長しうる物語の根っこが詰まっているなという気がしています。
 今回の『包帯クラブ』は現代の、いまの時間の、ある数カ月の物語です。それが、次には十何年後をいきなり舞台にしてもいいし、あるいは次の年の重要な時期が物語になることもありうる。主人公のおばあさんの満州時代の話がいきなり出てきて、それが『包帯クラブ』の理念とも重なっていたりすれば、十分このシリーズのなかで通用していく。それこそ人生と同じで、あるいは社会と同じで、いろんなつながり方をしているということを、この物語を通してまた提示できる。」
 たしかに、天童さんはこの作品を執筆するにあたって舞台になる久遠市や鬼栖村の地図や歴史をノートに書き込んでいました。また、作中に登場してこない周囲の人物についてもメモしていました。そして、その一端をサイドストーリー「包帯クラブバンド通信」として「WEBちくま」で発表してくれたのです。

 2006年2月、『包帯クラブ』の刊行にあわせて、「王様のブランチ」の本のコーナーでは特集を組みました。天童さんは、「『王様のブランチ』には友情を感じているので」と、出演を快諾してくれ、緻密に書き込まれた『永遠の仔』の創作ノートもはじめて公開されました。
 天童さんへのインタビューは、予想以上に充実したものになりました。それを見て、「ブランチ」のプロデューサー、ディレクターは特集を2週連続にしてくれたのです。この特集を作り上げていく過程で、実は、「ブランチ」を支えているスタッフの中にも熱心な天童ファンがたくさんいることもわかりました。こうした熱意が結実して、密度の高い番組ができたのでした。
 自他共に許す天童ファンの関根勤さんは、VTRを見て、「面白さの源が、今日わかりました。すごいですね書くまでの準備が。『包帯クラブ』は、天童さんの入門にはいいですよ。こちらから読んで、『永遠の仔』の方にいくといいですね」と語ってくれました。また、優香さんは、「痛みって、人と比べられないじゃないですか。だから、もっとつらい人も、傷を負った人もいっぱいいるから、自分のは傷だって言っちゃいけないのかなって思っていたんです。でも、そうじゃなくてもいいんだよ、ということを感じました。本当にちっちゃいことでも、自分の傷だと認めてもいいんですね。本当に包帯巻きたくなりました」とコメントしてくれました。寺脇さんは、「登場人物たちが本当にいるんじゃないかという感じがして、この子たちの将来を全部見たいなっていう気になりました」と締めてくれました。