東 一昨年から夏限定企画として続けている文豪怪談傑作選シリーズが、この2008年9月刊行の「室生犀星集」で10巻めになります。これはめでたい!(笑)ということで、一貫して本書にすばらしいカバー絵を描いてくださっている金井田さんと対談しようということになりました。本を見ただけではわからない、制作秘話なども含めて、いろいろお話ができればと思います。
実はこの企画が決まって、カバーの相談になったとき、あ・うんの呼吸で金井田さんに決まったんですよね(笑)。編集部から金井田さんはいかが? と打診があったのですが、私のほうも、金井田さんがパロル舎で出されている一連のお仕事、『冥途』や『夢十夜』を念頭に置いていたので、ああ、よくぞ、と。
金井田 こういう仕事は、ほんとうに大好きなもののど真ん中なので、嬉しかったですね。
東 こうした絵は、どういう手順で仕上げているんですか。
金井田 私は、絵を描いて色をつけますが、その色は指定なんです。DICの何番、というふうに特色インクを指定する。だから作品は、自分の手元では完成せず、印刷してはじめて完成です。
東 すると、このシリーズの場合は?
金井田 ふつうは自分で細工するところを、デザイナーの山田英春さんがタイトルの枠を描いていらっしゃるので、ついでにやってください、みたいなことで(笑)。簡単に色づけしたものをお渡しして、枠やタイトルの色との響きあいで、それが不適当な場合は変える、というかたちでやってもらっています。山田さんの枠が、私はすごく気に入ったんです。タイトルの下がぼけているでしょう、これがすごくコンセプトに合っていて。とにかく枠の邪魔にならない絵、を心がけました(笑)。
東 そんな(笑)。ところで、文豪怪談のアンソロジーとお聞きになって、どんなイメージを持たれましたか。
金井田 川端、鴎外、吉屋信子、鏡花、という最初のラインナップを見たとたんに、吉屋信子であれっと思って、これはちょっと仕掛けがあるシリーズなんだ、と。表題作を題材に描くというのは決まっていたんですけど、とにかくゲラは全部読ませてください、とお願いしました。好きなものなので、ここは遊んで、自分も楽しんで描くしかないと。
東 それは編纂する側としても本望というか、アンソロジスト冥利に尽きるというものです。やはり各作家のトータルなイメージをつかんでいらっしゃるから、これだけ深みのある作品ができるんでしょうね。
金井田 でもじつは、怪談であるという頭で読むと、また違うんだな、という面白さはありましたね。はじめの川端もそうでしたが、小説でないものも、括りで最後のほうに出てきたりしますよね。企画がアグレッシブというか。
東 根が貧乏性なもので(笑)、せっかくの機会なので……と、ついつい詰め込んじゃうんですよ。
――それでは、各巻ごとに、どうイメージを作られていったのか、お話いただけますか?