パオロ・マッツァリーノ 戯作者

 教養・学術系の文庫には、小説・エッセイしか読まない一般人を拒むようなカタブツ感が漂います。読書時には詰め襟の学生服と制帽着用のこと、みたいなイメージが強いんです。
 その点、ちくま学芸文庫は、お堅い系文庫の看板を掲げながらも、ノーネクタイにジャケットくらいで迎え入れてもらえそうな、ビストロっぽいカジュアル感があります。白を基調とした装丁も貢献してるのかも。
 そういうわけで私は、普通の読書好きが読んでも楽しめるものを、何冊か選ばせてもらいました。難しい本は五分で投げ出す不埒な私が推すのですから、ウソ偽りはございません。
 なかでもいち押しは、『戦争における「人殺し」の心理学』。剣呑なタイトルとは裏腹に、この本が教えてくれるのは、基本的に人は人を殺せないのだという事実です。第二次大戦でも南北戦争でも、八割がたの兵士は、敵をなるべく撃たないように行動していたそうです。人間不信からの回復剤として、ぜひ。


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