書き続けることで時間が濃くなった

松田

3冊目の本ができました。どんな感じですか。

華恵

1冊目、2冊目は緊張していました。3冊目は、こうして本ができてくるのかと、どこか冷静に考えている部分があって、きっと、これからもこういう風に本ができていくのかなと思っています。あと、これまでと違っていたのは、webからというか、連載が本になるということは、もう原稿を直せないんだな、という覚悟のようなものと、手元を離れていってしまう、という寂しさのようなものを感じました。

松田

連載も初めてですし、webに本格的に書くというのも初めてでしたが、どうでした。

華恵

2週間に1本という連載だったので、月に2本、それに「野性時代」の連載が月1本、あわせて月に3本あるので、時期によって、「これはどれに書こう」なんて、どんどん書きたいことが出てくるときもあれば、忙しくて、学校とうちを往復しているだけで、面白いことが特にないというときもある。でも、昔のことを引っぱり出してきて、それについて最近考えたことを書いてみたら、案外かたちになっていた。そう思えた時は、新しい書き方ができたような感じがしましたね。

松田

書く前にメモを書いたりするんですか。

華恵

最初は、ノートに書いていたんですけども、多くなってくると、次のページと並べて見ることができないんですよ。それがすごく不便なので、便せんぐらいの紙に書いて、いらない部分を切ってノートに貼っていますね。

松田

書くことが見つからないということもありましたか。

華恵

ありますね。でも、案外ないと思っていても、自分の頭を絞るというか、生活を絞るとかしてみると、案外出てくるもんですね。あとは、こうやって続けたから、何にも考えずに過ごしちゃったということが、今までに比べたら少なかったですね。締め切りが迫ってくると、もう考えなきゃいけない、書かなくちゃいけないというので、そうなると、時間が濃くなってくるというか、毎日の生活の中でも、いろんなものを拾うようになってきました。それも面白いなあって思いましたね。だから、常に書いているというのが居心地いいという感じはあります。たまに、次の原稿まで時間があると、あまり縛りがないので気が抜けるというか、まわりを注目しなくなるから、無駄な時間を過ごしているような感じで。いま、書いているものを全部やめちゃったら、物足りないし、同じ生活を送っているはずなのに、自分のもつ意識が薄っぺらになっていくようで不安です。

松田

それなら日記を書いていればいいんじゃないのかな。

華恵

日記は違うんですよね。考えていることじゃなくて、あったことの報告とかなんです。正直言って、一日の中で一番印象に残っていることって学校のことなんですよ。日記はそういうことが多くなりがちなんですよ。

松田

とりあえず吐き出しておいて、気持ちを整理するというか。

華恵

そうなんです。怒りもバーンとぶつけていくし、楽しいことも、第三者が読んだらしらけるような感じになるので。自分でも、後で読んで、なんでこのとき、こんな感情をもっていたんだろうって思いますから。でも、人が読むものということになると、ちゃんと自分で考えてという段階をふまえるので、書く内容も、自分の気持ちも、それをどういう風に書くかまで、全然違ってきますね。

ひとりの時間 華恵

これが、15歳のわたしです。
毎日の暮らしの中で、いろんな人たちとふれ合い、さまざまな出来事に出会います。そこで感じたこと、考えたことを文章に綴りました。

ひとりの時間

華恵 著

定価 1050円(税込)

華恵(はなえ)

1991年4月28日、アメリカ生まれ。6歳の時から日本に住む。10歳からファッション誌でモデルとして活動。2003年、短編映画「ハナとオジサン」で女優デビューし、TSUTAYAのテレビCMや「ガチャガチャポン!」(フジテレビ)などで活躍する。2000年、2001年と全国小・中学校作文コンクール東京都審査・読売新聞社賞を連続受賞、2002年、全国小・中学校作文コンクール文部科学大臣賞を受賞。2003年には、『小学生日記』(プレビジョン/角川文庫)を刊行し、その素直な感性と文章を高く評価される。2006年から筆名・芸名をhanae*から華恵に変更し、『本を読むわたし』(筑摩書房)を刊行する。現在、「webちくま」「野性時代」「山と渓谷」などにエッセイを連載中。2007年8月から「こちらアニマルプラネット新聞社」(アニマルプラネット)に出演中。10月に第3作『ひとりの時間』(筑摩書房)を刊行。