西加奈子さんインタビュー 脳みそつるつるエッセイ集のできるまで 聞き手・松田哲夫(担当編集者)
間違いから始まったweb連載
松田 最初のエッセイ集ができました。どんなお気持ちですか。
西 エッセイを本にしてくれるとは思わんかったからエーッと思った。うれしいです。
松田 おととしの暮れに、小学館の石川さんと3人で飲んでたんですよね。
西 お豆腐屋さんでしたね。
松田 そのとき、「エッセイを頼まれて書いたんだけど、枚数間違えちゃった」って話してくれたんですね。
西 「私の好きな映画」みたいなコラムで、「3枚」と言われたんですよ。それは、原稿用紙3枚やのに、自分のパソコンで書く1枚が1200字なので、「なげえな」と思いながら書いていたんですよ(笑)。エッセイって、こんなに長いんやと思って。
松田 3倍書いたんですね。それで送ったんですか。
西 いや、気づいたんですよ。「あれ、長すぎねえか」と思って。それで、削って送ったんです。「仁義なき戦い」のことを書いたんです。
松田 ついつい熱くなって……。
西 そうそう、「仁義」だからよかったけど、みんな大変やなあと思って……(笑)。
松田 「仁義なき戦い」だと熱くなるんですか。
西 書くことがいっぱいあったから。
松田 「webちくま」の連載では、「仁義」のことも心おきなく書いてましたね。
西 枚数気にしないで書けるからよかった。「仁義」は長いけど、他のものは短いとか……。そういう感じでできるのが楽しかった。
松田 雑誌とか新聞にくらべてwebのいいところは、書きたいように枚数を加減できるからね。
西 そうそう。
松田 それで、「長すぎたのを削って送った」って聞いて、「じゃあ、もとの読ませてよ」っていったら、すぐに送ってくれましたよね。それ読んで、すっごく面白かったので、「エッセイの連載しようよ」って言ったんです。それで1月から連載始めたんですよね。
西 そうですよ。その話から2〜3週間ぐらい。「じゃあ、始めましょう」みたいな感じで。こんなに簡単に始まるもんなんやって(笑)。
松田 なんの準備もなしに始めて焦んなかったですか。
西 いやあ全然。松田さんが「自由に」っておっしゃってくださったから、自分で思ってて、普段、松田さんとしゃべっているようなことを書きゃいいんかと思って書いたんで。絵も自由に描けたし、楽しかったですね。
松田 絵はなんで頼んだんだろう……あっ、わかった。「王様のブランチ」で「新人賞」を差し上げたんですよね。その賞状を届けに西さんのお宅にうかがったとき、絵を見せてもらったんですよね。段ボールに描いた絵なんか見せてくれて……。
西 そうやそうや。
松田 すごくいい絵だなあって思って。webだとカラーでもいけるし、それ楽しいんじゃないかなあって思って、絵もついでに頼んじゃった。
西 うれしいですね。絵の依頼が最近増えてきて……。絵だけの依頼とか、小説も書いて絵も描いてください、とか。
松田 ということは、エッセイも絵もお仕事としてやったのは、この「ミッキーかしまし」が最初だったんですね。
西 そうそう。