金持ちはますます金持ちになっている。だが、あなたはどうだろう?
中流階級がどんどん減っている。中流階級の縮小はアメリカの安定にとって、そして世界の民主主義そのものにとって脅威だ。私たちはあなたに金持ちになってもらいたい。そして、問題の一部ではなく、問題の解決の一部になってもらいたい

──ドナルド・J・トランプ
ロバート・T・キヨサキ

 ドナルド・トランプとロバート・キヨサキは二人とも心配している。心配の種は、金持ちがますます金持ちになる一方で、アメリカがますます貧しくなっていることだ。北極や南極の氷のように、中流階級が次第に姿を消し、アメリカは二つの階級でできた社会になりつつある。つまり近い将来、あなたは金持ちか貧乏人かのどちらかになる。ドナルドとロバートは、その時あなたに金持ちになってほしいと思っている。
 中流階級の縮小というこの現象は世界的に起こっているが、特に目立っているのは、英国、フランス、ドイツ、日本といった、ほかの国々より裕福な先進主要八カ国だ。
 連邦準備制度理事会の前議長アラン・グリーンスパンは、このことについて次のように言っている。「これまでに何度も言っているように、これは、民主主義社会――資本主義を基にした民主主義社会――にとって、何の注意も払わずに受け入れることは到底できない問題だ」。さらに彼は、アメリカにおける金持ちとそうでない人々との収入格差がどのようにしてここまで開いたのか、なぜこれほど急速に進んでいるのかについて説明し、それが、ひいては民主主義的資本主義そのものの安定を脅かすおそれもあると警告している。

問題は教育にある

 前議長が問題の主な原因として挙げたものは何だったか? 一言で言うとその答えは「教育」だ。グリーンスパン氏は、アメリカの子供たちの学力が、小学校四年生では世界の平均を上回っているが、ハイスクール三年生になるまでにはるかに下回ってしまうことを指摘し、「何とかしてこの事態をくいとめなければいけない」と言っている。
 ドナルド・トランプとロバート・キヨサキも、「教育」の欠如に責任があると考えている。だが、二人が注目しているのは、グリーンスパンが言っているのとは別の種類の教育、ファイナンシャル教育(お金に関する教育)だ。二人とも、アメリカにおいて、あらゆるレベルで質の高いファイナンシャル教育が欠如していることをとても心配している。どちらも、アメリカが世界で最も裕福な国から史上最大の債務国に転落したのは、ファイナンシャル教育が行われていないからだと考えている。アメリカの経済が弱体化し、世界の準備通貨であるアメリカドルの力が弱まることは、世界の安定のためにならない。アメリカの外では「アメリカがくしゃみをすると世界が風邪をひく」などとよく言われるが、まったくその通りだ。

二人とも教師

 ドナルド・トランプとロバート・キヨサキは二人とも起業家・投資家として成功している。どちらもビジネスをしているし、国際的に認められている。それと同時に、二人は教師でもある。ベストセラーを書いていて、教育用のボードゲームを考案したり、ファイナンシャル教育のイベントで講演したりしている。それに、テレビで教育番組をやっている点も同じだ。ドナルド・トランプにはNBCのメガヒット番組『ジ・アプレンティス』(研修生)があり、ロバート・キヨサキには、教育番組で評価の高い公共テレビネットワークPBSの“Rich Dad's Guide to Wealth”(金持ち父さんの富へのガイド)がある。
 二人が教師をしているのは、お金が必要だからではない。あなたとあなたの家族、この国や世界の運命を憂えているからだ。
 お金を持っていて、世の中をよくしたいと思っている人は、たいてい、自分が正しいと信じる大義を支援するためにお金を出す。でも、ドナルドとロバートは、お金だけでなく自分たちの時間も提供している。よく言うように、人に魚を与えればその人を一日食べさせることができるが、魚の獲り方を教えれば一生食べさせることができる。ドナルドとロバートは、貧しい人々や中流階級の人々を助けるために、ただ小切手を切るのではなく、魚の獲り方を教えている。そしてさらに、本の売上げの一部を、自分たちと同じようにファイナンシャル・リテラシー(お金に関する読み書きの能力)を教えているさまざまな団体に寄付している。

お金に関する三つのアドバイス

 お金に関するアドバイスには三つのレベルがある。貧しい人に対するアドバイス、中流階級に対するアドバイス、そして金持ちに対するアドバイスの三つだ。貧しい人が聞かされるのは、政府が面倒を見てくれるから大丈夫というアドバイスだ。貧しい人たちは社会保障やメディケア(高齢者医療保険制度)をあてにしている。中流階級がお金について受けるアドバイスは、仕事を見つけて一生懸命働き、収入の範囲内で暮らし、貯蓄をして、投資信託に長期の分散投資をしなさいというものだ。中流階級の人はそのほとんどが消極的な投資家、つまり、「負けないように」働いて投資をしている。金持ちは「勝つために」働き、投資する積極的な投資家だ。本書は、積極的な投資家になることについての本、つまり、勝つために働いて投資することによって収入を増やし、すばらしい人生を生きることについての本だ。
 ドナルド・トランプとロバート・キヨサキが書いた本がベストセラーになり、二人の講演に大勢の人が集まるのは、彼らが、一生懸命働いて収入の範囲内で暮らすことではなく、「収入の範囲」を広げ、生活の質を高めることを人々に教えているからだ。二人はみんなに、勝つために働き、投資してほしいと思っている。

(中略)

お金では貧困の問題は解決できない

 お金で解決できない問題の一つは貧困だ。貧困には多くの原因がひそんでいるが、その一つはファイナンシャル教育の欠如だ。貧困の問題をお金で解決しようとしても、貧しい人が増えて、貧しいままの状態が長引くだけだ。だからこそ、ドナルドとロバートは教師として教えている。二人とも、世界に広がる貧困の問題に対する唯一の真の解決策が、お金ではなくファイナンシャル教育であることを知っている。貧困の問題がお金だけで解決するなら、彼らはお金を寄付するだろう。だが、この問題はお金では解決がつかない。だから、二人は自分たちの時間を提供している。さらに、本書の収益の一部は、慈善団体やファイナンシャル・リテラシーに関する教育を行う教育機関に寄付されることになっている。
 あなたも、ファイナンシャル教育をより多く身につければ、お金を生み出すチャンスをいたるところに見つけられるようになる。自分が金持ちになれば、世の中を変える手伝いをする道を選ぶこともできる。ドナルド・トランプとロバート・キヨサキはそうしてきた。二人が教師として協力し合うことに決めたのもそのためだ。
 本書を読んでいくと、生いたちも、ものの見方も、表現の仕方も違う二人の男の声が、はっきりと聞こえてくる。ロバートは話上手で、物語を書くように話の中にたくさんの会話を盛り込んでいる。一方、ドナルドは、できるだけ短く、直接的な表現で要点をずばりと言う。
 あなたはこの本を、先入観にとらわれることなく、柔軟な頭で読むことができるだろうか? もしそれができれば、この二人の成功者の目を通して世界を見ることができるようになり、お金について、また、自分の将来の経済状態のために何ができるかといったことについて、あなた自身の考え方の幅を広げられるかもしれない。

 あなたが将来、経済的自由を手にすることを心から祈っている。

シャロン・レクター

「確かに、我々は完ぺきに近い共和制を生み出した。 しかし市民たちは、この状態を維持していけるだろうか。 あるいは、豊かさを享受するうちに、 自由の記憶を失ってしまうのだろうか。 品性無き物質的豊かさは、 破滅への道にほかならない。 実際、神は公正であることに思いをいたすとき、 私はこの国のために恐れおののく」──トマス・ジェファーソン