世界的思想の入門書

編者 宮下和夫

 日本が世界に誇る文学者・革命思想家・吉本隆明さんの主著は、初期の詩『日時計篇』から始まり、主著三部作『言語にとって美とはなにか』『共同幻想論』『心的現象論序説』を経て、『ハイ・イメージ論』『母型論』、晩年の最後の主著『アフリカ的段階について』まで高峰が偉容を連ねている。それは、圧倒的に壮観である。しかも、あらゆる分野が取り上げられ、行くところ不可能の文字はないかのようだ。
 主著のそれぞれが深く広いうねりをもち、全体で、大きな深淵のような世界を描いている。それはまた、断崖のような難解さをもって鳴る。
 そして、90年代にいたって、ついに、革命の見取り図が示される。
 講演は、その難解さを、やさしい話し言葉でわからせてくれる。吉本さん自身、講演は、作品のような仕上がりを意図したと語っている。書き言葉にないやわらかさが、あなたを包む。