『女神記』と「湊かなえ『告白』」


<小説ランキング>  (丸善日本橋店・1/8~1/14)
① 火坂雅志『天地人(上・中・下)』(日本放送出版協会)
② 村山由佳『ダブル・ファンタジー』(文藝春秋)
③ 湊かなえ『告白』(双葉社)
④ 小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文藝春秋)
⑤ 天童荒太『悼む人』(文藝春秋)
⑥ 佐々木譲『警官の紋章』(角川春樹事務所)
⑦ 水野敬也『夢をかなえるゾウ』(飛鳥新社)
⑧ 飯島和一『出星前夜』(小学館)
⑨ S.ラーソン『ミレニアム(上・下)』(早川書房)
⑩ 柚木裕子『臨床真理』(宝島社)


<特集・湊かなえ『告白』>
◎湊かなえ『告白』(双葉社)



「愛美は事故で死んだのではありません。このクラスの生徒に殺されたのです。」
我が子を校内で亡くした女性教師が、終業式のHRで犯人である少年を指し示す。そして、ひとつの事件をモノローグ形式で「級友」「犯人」「犯人の家族」から、それぞれ語らせ真相に迫る。以前、松田チョイスでも取り上げ大反響を呼んだ湊かなえさんの「告白」を特集。ヒットの秘密を①「第一章だけでも読む価値あり」②「色々な人の感情を疑似体験できる。」③「結末は賛否両論」の三つに分け、それぞれについて作者の湊さんにインタビューしています。
松田 『告白』という小説は、全編モノローグで、そのサスペンスがたまらないんです。そして、最後には、大胆なラストシーンがある。繊細さと大胆さとをあわせもっている、本当に力のある作家だと思うので、これからもいい作品を書いていただけるといいなあと思いますね。


<今週の松田チョイス>
◎桐野夏生『女神記』(角川書店)



松田 桐野夏生さんが日本神話を語り直した意欲的な作品『女神記』です。
N 世界中の作家が、神話を語りなおす壮大なプロジェクト「新・世界の神話シリーズ」。その日本代表が、桐野夏生が描いた『女神記』。海蛇の島に生まれた巫女のナミマは、悲しい運命に翻弄され、16歳という若さで命を落とす。地底で目覚めた彼女の前に現れたのは……。「わたしはイザナミ、黄泉の国の女神です」。死の国へと堕ちたイザナミが語る、夫イザナキのあまりに残酷な仕打ちとは? 人間と神の対立を交えて描く、愛と裏切りのスペクタクルロマン。>
松田 桐野さんが取り上げたのは、日本神話の中で、日本列島を創ったといわれているイザナキ、イザナミという神様の物語なんです。神話そのものをなぞっているんではなくて、その外側に、もう一つ、ドラマチックな物語、巫女のナミマの物語というのをつくって、そこから神話を語っているんですね。桐野さんの活き活きとした文章で、新しい息吹を吹き込まれた神話が、とっても迫力があって、遠い昔のお話っていうよりも、活き活きとしたドラマとしてぼくたちに迫ってきます。
谷原 桐野さんのイメージというと、女性を描くのが上手な作家さんで、でも、それだけではなくて、ひとの表と裏、暗部を描くのが上手な方だと思うんですが、本作はどうなんですか。
松田 そうですね。『OUT』とか『東京島』も、そうでしたけど、そういう暗い部分を取り込みながら、それにあらがっていく女性のたくましい姿みたいなものは、この物語でもあって、桐野ワールドにもう一つの作品が加わったという感じですね。