『猫を抱いて象と泳ぐ』と「美内すずえ『ガラスの仮面』」


<コミックランキング>  (紀伊國屋書店全店調べ・1/20~1/26)
① 美内すずえ『ガラスの仮面』43巻(白泉社)
② 一条ゆかり『プライド』10巻(集英社)
③ 甲斐谷忍『LIAR GAME』8巻(集英社)
④ 大和田秀樹『機動戦士ガンダムさん』よっつめの巻(角川書店)
⑤ 日高万里『V・B・ロ-ズ』13巻(白泉社)
⑥ ツジトモ・綱本将也『GIANT KILLING』9巻(講談社)
⑦ 田辺イエロウ『結界師』23巻(小学館)
⑧ 高屋奈月『星は歌う』4巻(白泉社)
⑨ 畑健二郎『ハヤテのごとく!』18巻(小学館)
⑩ 大和田秀樹『なるほど・ことわざガンダムさん』(角川書店)


<特集・美内すずえ『ガラスの仮面』>
◎美内すずえ『ガラスの仮面』1~43巻(白泉社)



演劇史上不朽の名作と謳われる「紅天女」の試演に向け、自らの天女像を求める北島マヤと姫川亜弓。亜弓の特別稽古が報道され、ライバルが順調に稽古を進めていることを知り、焦るマヤ。しかし速水真澄の「おれに紅天女のリアリティを感じさせてくれ」という言葉に、マヤは演技のヒントを掴んでいく。コミック売り上げ累計5000万部、連載期間33年。少女マンガ界に君臨する『ガラスの仮面』。1月26日、約4年ぶりに最新刊(43巻)が発売になりました。作者の美内すずえさんに、仕事場でインタビューしました。仕事机にあったのは、墨汁、主人公のフィギュア、CDラック、そして44巻に収録されるであろう生原稿など。インタビューの内容は、「デビューのきっかけ」「タイトルの由来、作品誕生秘話」「約9000ページの中で、作者自身が一番好きなシーンは?」「自身の体験が投影されているシーンは?」「33年の連載中に困ったことは? 挫折は? やめたいと思ったことは?」「主人公北島マヤの恋の行方はどうなるのか?」「ラストをどうするのか?」などです。


<今週の松田チョイス>
◎小川洋子『猫を抱いて象と泳ぐ』(文藝春秋)



松田 本当に気が早い話だと思われると思いますけども、「今年のベスト1」だと言いたくなる作品に出会ってしまいました。小川洋子さんの長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』です。
N 小川洋子の最新長編小説『猫を抱いて象と泳ぐ』。主人公は伝説のチェスプレーヤー、リトル・アリョーヒン。バスに住む巨漢のマスターに手ほどきを受け、チェスの大海原に乗り出した。彼の棋譜は詩のように美しい。しかし、なぜか彼の姿を見た者はいない。無垢な魂を持つ少年の数奇な人生を、切なくも美しく描いた作品。>
松田 とにかく「素晴らしい!」の一言です。読み始めると、残りのページ数がなくなっていくのが惜しくてたまらないという、そんな感じなんですよね。そして、読み終わると、場面の一つ一つが映像となって頭の中に焼き付いて、繰り返し思い出せるという。チェスの話なんですが、からくり人形とチェスをする人たちとか、肩に白い鳩を載せた記録係の美少女とか、品のいい老婆と主人公がチェスをしていたりとか……。その主人公そのものが姿が見えないところでチェスを打つという、不思議なお話なんですね。
優香 私も読ませていただきまして、最初にタイトルが本当に面白いなあというか……。
松田 何だろうと思いますよね。
優香 はい。引き込まれまして、さっき松田さんがおっしゃっていたように、本当に外国映画のような、絵本のような、物語として、一枚一枚ていねいに読みたくなるような本だなあと思いました。私は、この中で、特に、この少年のことをズーッとズーッと応援してきて、一切否定をしない、暖かく見守るお祖母ちゃんが本当に素敵なんです。お祖母ちゃんもチェスのことは分からないので、なんか私と同じ気持ちでいられるなという感覚があったり。で、後半で、お祖母ちゃんが少年に話す一言があるんですけど、そこでわたしはグッときて……。素敵な、いい家族だなって。
松田 チェスのことは、ぼくらも分からないんですが、チェスの本当に素晴らしい対局を写した棋譜というのは詩のように美しいって書いてあるんですね。この物語自体が、哀しくて、切なくて、本当に美しいんです。まだ書かれたばかりの作品なのに、もう古典作品の風格がある。名作だと思いますね。
谷原 読書の達人、松田さんが選んだ、今年ナンバーワンの作品、ぜひ読んでみてください。