『ラジオ・キラー』と「荒木飛呂彦&乙一『The Book』」


<コミックランキング>  (12/29~1/27 日販オープンネットワークWIN調べ)
 1位 青山剛昌『名探偵コナン』60巻(小学館)
 2位 高橋ヒロシ『WORST』19巻(秋田書店)
 3位 畑健二郎『ハヤテのごとく!』(小学館)
 4位 田辺イエロウ『結界師』19巻(小学館)
 5位 赤松健『魔法先生ネギま!』(講談社)
 6位 CLAMP『ツバサ』22巻(講談社)
 7位 真島ヒロ『FAIRY TAIL』8巻(講談社)
 8位 矢吹健太朗『To LOVE -とらぶる-』7巻(集英社)
 9位 河原和音『高校デビュー』10巻(集英社)
10位 うすた京介『ピューと吹く!ジャガー』14巻(集英社)


<特集・乙一&荒木飛呂彦『The Book』>
◎乙一&荒木飛呂彦『The Book』(集英社)



荒木飛呂彦の代表作でありシリーズ累計7000万部を超える大ヒット・コミック『ジョジョの奇妙な冒険』。このたび、このシリーズ第四部を奇才・乙一が渾身の小説化。「コミック版ジョジョ」の魅力の一つが【スタンド】という特殊能力を持った少年たちの、頭脳的な駆け引き、そして、極限状態でもあきらめない心。小説は、この要素を引き継ぎつつ、乙一らしい絶望と悲しみ、切なさを加えることに成功している。なぜ、執筆開始から5年、ボツ原稿が2000枚にものぼることなったのか、乙一オリジナル【スタンド】はどのように生み出されたのか、この小説を執筆することで得たものは、などを乙一さんに伺いました。また、VTR冒頭、荒木飛呂彦さんに「ジョジョ」の目指すもの、『The Book』の出来映えなどについてお聞きしました。
松田 原作コミックは息詰まるサスペンス・アクションなんですが、乙一さんは、そこに圧倒的な絶望と悪を持ち込んでいます。それによって、人間の悲しみ、切なさ、優しさを見事に表現しています。こうして、『ジョジョ』でありながら乙一ワールドでもある、コミックと小説が理想的な形で響きあった作品が誕生したんですね。


<今週の松田チョイス>
◎セバスチャン・フィツェック『ラジオ・キラー』(柏書房)



松田 ドイツの異色サスペンス・ミステリー、セバスチャン・フィツェックの『ラジオ・キラー』です。
N ラジオ局の乗っ取り事件発生! 人質をとって立てこもった知能犯が、ラジオを使った冷酷な殺人ゲームを始める。交渉人に指名されたのは、長女の自殺に深く傷ついていた犯罪心理学者イーラ。犯人との息詰まるようなやりとりをはさんで、事件は思いも寄らぬ展開へとなだれ込んでいく。ノンストップ・サイコミステリー。>
松田 この小説は、終始、心臓がドキドキしっぱなしです。思いがけない出来事が次々と起こり、アッと驚くラストシーンまで、一気に突っ走っていくんです。だから、読み始めると止まらなくなります。この犯罪は、マスコミや大衆を巻き込む「劇場型犯罪」なんですが、ラジオ局に立てこもった犯人の要求が、ドイツ中のどこかの電話番号に電話して、決まった答をしないと人質を一人殺すという、シンプルなもの。それだけに怖いのです。そして、犯人との交渉にあたる女性は、高名な犯罪心理学者なんですが、実は、娘の自殺で神経がボロボロになっている。こういう崖っぷちに立っているような絶望的な状況に置かれている主人公からも目が離せません。まさに、スリルとサスペンス満載のミステリーです。
優香 私も、読んだんですが、私は翻訳ものというのは苦手だったんですよ。でも、これはとっても読みやすかったですね。犯人との交渉人も正義のヒーローというのではないのでハラハラするし、その上、びっくりするようなラストシーンなんですね。
松田 壮大な仕掛けのマジックを目の前で見ているような感じでしたね。