『学問』と「こうの史代『この世界の片隅に』」


<総合ランキング> (啓文堂書店全店調べ・8/3~8/9)
① 『Cher 09-10 AUTUMN/WINTER COLLECTION』(宝島社)
② 『MARC BY MARC JACOBS 2009 FALL/WINTER COLLECTION』(宝島社)
③ 磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)
④ 畠中恵『ころころろ』(新潮社)
⑤ 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
⑥ 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
⑦ 蛇蔵・海野凪子『日本人の知らない日本語』(メディアファクトリー)
⑧ 広岡友紀『日本の私鉄 京王電鉄』(毎日新聞社)
⑨ ビートたけし・所ジョージ『復刻版 FAMOSO』(ネコパブリッシング)
⑩ 『Number PLUS 9月号 完全復刻版 清原和博』(文藝春秋)


<特集・こうの史代『この世界の片隅に』>
◎こうの史代『この世界の片隅に』全3巻(双葉社)



戦前から戦後の広島県の軍都・呉を舞台にした家族ドラマ。主人公のすずは広島市から呉へ嫁ぎ、新しい家族、新しい街、新しい世界に戸惑いながらも一日一日を健気に過ごしていく。リンさんという友達もでき、夫婦ゲンカもするようになり、ようやく呉の街にも馴染んできた。しかし戦況は厳しく、配給も乏しくなり、日々の生活に陰りが……。そして昭和20年3月、ついに呉の街にも大規模な空襲が。戦争という容赦のない暗雲の中、すずは、ただひたすら日々を誠実に生きていく。空襲のシーンはほとんど無く、戦争の悲惨さなどではなく、戦前、戦時中、戦後の長い時間を過ごした人々のささいな日常生活を綴った、今までにない戦争マンガ。今回、著者のこうのさんに戦争マンガを描こうと思ったきっかけをインタビュー。製作にあたっての膨大な資料や原画などを拝見させて頂きました。また、こうの作品の映画化作品に主演した麻生久美子さんのコメントも頂きました。
松田 このお話全体が民話みたいな語り口なんですね、「むかしむかし」っていう感じで、すごく優しいんですね。そして描かれている日常も、みんなけなげに明るく生きているという感じなんで、余計に、そういう日常を断ち切ってしまった戦争の悲惨さがより鋭く迫ってくる、素晴らしい作品だと思いましたね。


<今週の松田チョイス>
◎山田詠美『学問』(新潮社)



松田 山田詠美さんの青春小説『学問』です。
N 恋愛小説の大家山田詠美が思春期の輝きを描いた最新作『学問』。人気者の心太、食いしん坊の無量、すぐに眠ってしまう千穂、そして東京から仁美。彼らは不思議な友情で結ばれていた。はたして、それぞれがもつ欲望とは? 4人の少年少女が、性の目覚めを経て大人へと成長していく近づいていく濃密な日々を描く。「私ねえ、欲望の愛弟子なの。」>
谷原 松田の一言、お願いします。
松田 「この輝きを永遠(とわ)に……」(松田の一言) これは、4人の少年少女のお話なんですけども、友情とも恋愛とも違う、もっと強く確かな絆で結ばれた4人なんです。この絆は、小学生から高校生まで、奇跡的に永く続いていくんですね。その楽園のような世界の中で、一人一人が自分の欲望とか好奇心に忠実に、未知のことを学んでいって、お互いを優しく見つめていくんです。それが、彼らにとっては学校で学ぶよりも大事な学問だったんだというお話なんです。本当に、かけがえのない輝きに満ちていた青春の日々がそこに確かにあったんだということを、しみじみと教えてくれる青春小説の傑作です。