『身の上話』と「JUNON」


<総合ランキング> (ジュンク堂書店池袋本店調べ・8/10~8/16)
① 磯﨑憲一郎『終の住処』(新潮社)
② 上橋菜穂子『獣の奏者Ⅲ探求編』(講談社)
③ 上橋菜穂子『獣の奏者Ⅳ完結編』(講談社)
④ 村上春樹『1Q84 BOOK1(4月-6月)』(新潮社)
⑤ 村上春樹『1Q84 BOOK2(7月-9月)』(新潮社)
⑥ 石田衣良『ドラゴン・ティアーズ――龍涙』(文藝春秋)
⑦ 平子理沙『Little Secret』(講談社)
⑧ 香山リカ『しがみつかない生き方』(幻冬舎)
⑨ 加藤陽子『それでも、日本人は「戦争」を選んだ』(朝日出版社)
⑩ 福岡伸一『世界は分けてもわからない』(講談社)
谷原 さあ、松田さん、何か気になる作品はありましたか。
松田 2位と3位に入った『獣の奏者』ですね。Ⅰ・Ⅱ巻もすごい迫力のあるファンタジーでしたけども、ますますスケールアップしています。クライマックスシーンでは涙が流れて止まらなくなる、本当に感動的な素晴らしい作品ですね。世界のファンタジー史上に残る大傑作じゃないかなと思います。
谷原 気になるよね、優香ちゃん。
優香 わたし、Ⅰ・Ⅱ見てるんで、見たいですね。
谷原 見たいですね、Ⅲ・Ⅳ巻。


<特集・「JUNON」>
◎「JUNON」10月号(主婦と生活社)



8月22日発売予定の「JUNON」10月号の撮影風景に密着しました。今回は、昨年のJUNONボーイコンテストファイナリストの11名による海での撮影です。テーマは「JUNON夏恋☆告白!」。グループデート風に遊んでいたり、男同士で遊んでいる様子が思春期の女の子にとってはまぶしく映る、というイメージだったりです。グランプリを受賞した市川知宏くんを始め、JUNONボーイに撮影への意気込みや感想を聞いたり、編集者・カメラマンに撮影のコツやどうしたらいい表情が引きだせるのかなどをインタビューしました。


<今週の松田チョイス>
◎佐藤正午『身の上話』(光文社)



松田 色んな意味で、とんでもない小説、佐藤正午さんの『身の上話』です。
N 地方の書店に勤務する平凡な女性ミチル。ある日、お使いを頼まれた彼女は、そのまま東京行きの飛行機に飛び乗った。大好きな妻子ある人を見送るだけのつもりだったのに。突然始まった東京での生活。ミチルは流されるまま、ある事件に巻き込まれていく。佐藤正午が放つ、とんでもない身の上話、人生の不可思議を突きつめる。>
谷原 さあ、「松田の一言」お願いします。
松田 「胸のドキドキが止まらない!」(松田の一言) これは心理的ホラーともいうべき作品ですが、怖いんです、本当に。伏線の張り方が非常に見事で、その伏線がズーッと繋がっていくと、思いがけない幸運がやってきたり、とんでもない不運に見舞われたりするんです、主人公が。本当に、ジェットコースターに乗っているようなハラハラドキドキ感があって、そして終盤になって、「語り手」というのが姿を現してきて、その時に、とんでもない真実が明らかになるんですね。小説という作り話の面白さをとことん楽しませてもらえる小説でしたね。
谷原 これ、基本的に独白で進んでいくので、湊かなえさんの『告白』に近い感じがしたんですね。違うのは、湊さんのは本人の独白なんだけど、これはミチルの旦那さんが「ミチルは過去こうこうこうで」と、身の上話を第三者がしているところから始まっている。読んでいって思ったのは、人生って選択があるじゃないですか、二者択一の。もし、こっちを選んでいたら、どうなっていたんだろうなって、過去の自分のことを考えてしまうんですよ。で、最終的に読み終わって考えたのは、もうぼくは間違った方を選んでるのかなあ、選んでなければ良いなって。いろんな選択を二者択一でしてくるんですが、本当に大事な選択ってそうそうなくて、片っぽを選んだら、その蟻地獄や蜘蛛の巣からは逃れられなくなっている。ぼくは、その巣にいるのかどうなのか。
はしの 谷原さんの感想が、最終的にそっちなのって思いますよね。
優香 自分のことを考えてしまう。面白そうですね。
松田 怖いです。
谷原 何より一番怖いのは人間です。