『とんび』と「辻仁成『右岸』&江國香織『左岸』」


<特集・辻仁成『右岸』&江國香織『左岸』>
◎辻仁成『右岸』(集英社)



◎江國香織『左岸』(集英社)



大ベストセラーとなった辻仁成さんと江國香織さんの共作ラブストーリー『冷静と情熱のあいだBlu』『冷静と情熱のあいだRosso』(1999年、角川書店)が刊行されておよそ10年。再びお二人のコラボレーションが実現。
*『右岸』愚直だが真摯に生きる超能力者九は、初恋の人茉莉への叶わぬ想いを抱きながら、旅を続ける。
*『左岸』17歳で東京に駆け落ちし、2年後に別の男性と帰郷。恋も仕事も感性のままに生きる茉莉の物語。
幼馴染の九と茉莉は19歳の時に1度は両思いとなるが、結局うまくいかず……しかしその後も九と茉莉の魂の交歓は続く。1本の川を挟んだ右岸と左岸を歩む2人がお互いの人生を見守り続ける“ライフストーリー”。
*辻さん→江國さん「もっとマメにメール下さい」「パリに来ても僕に連絡くれない。レストランくらい連れていくのに!」「3度目のコラボあると思う!」
*江國さん→辻さん「10年前とくらべフランスで奥さんと子どもさんと住んでいて、帰る場所がある感じ。優しくなった」「時々メールするくらいの距離感が良い」「3度目のコラボは……どうなるかわからない(笑)」
谷原 いかがですか、松田さん、この作品は。
松田 大ヒットした『冷静と情熱のあいだ』の次ということで、たぶんプレッシャーも大きかったと思うんです。前は恋愛が軸になっている話だったんですけども、今度はもっとスケールが大きくて、人生そのものを描いていく作品なんですね。大変なチャレンジをしているんですが、見事に読み応えのある作品になっているなあって思います。二人がすれ違っていくんで、終始ハラハラするんですが、最後には意外なハッピーエンドが待っているという楽しみもあります。


<今週の松田チョイス>
◎重松清『とんび』(角川書店)



松田 絶妙な重松節が心に染みわたってきます。重松清さんの長編小説『とんび』です。
N 重松清、待望の新作長編小説『とんび』。昭和37年、トラック運転手のヤスさんに、待望の息子アキラが誕生。幼い頃、親と離別したヤスさんにとって、妻と息子と過ごす日々は、ようやく手に入れた家族の温もりだった。しかし、その幸福は突然の悲劇によって打ち砕かれてしまう。我が子の幸せだけを考え、悪戦苦闘するヤスさんの、喜びと悲しみを描いた感動長編。>
谷原 松田さん、これは重松さん得意の親子ものですから、すごく期待するんですが。
松田 そうですね。ひたすら一人息子の成長を見守り続けるヤスさんという父親の姿が素敵なんですね。そして、その一人息子をヤスさんが愛していますし、その二人を周りの人たちが愛しているし、登場人物全体を重松さんが愛しているという、本当に幸せな物語なんですね。だから、いろんなところで心打たれて、涙が出てきてしょうがないっていう、そういう作品なんですね。
優香 わたしも重松さん、大好きなんですけども、えみちゃんも読んだんですよね。
はしの 読みました。やられてしまいました。この一冊の中で、四、五回はダアーッて泣いて、二十回ぐらい鼻にツンときて、大変でした。でも、親って自分のこと、こういう風に見てたのかなあって思って読めますし、自分が親になったときに、ああ、子どものことをこういう風に思うのかなあって思いながら読んだり、すごい温かい本で、一気に読みましたね。
松田 本当に不器用で照れ屋のお父さんなんですよね。だから、言葉が足りなかったり、一生懸命に傷つけないようにしていることが裏腹になっちゃったりとか、その辺が、読者にはつらいんですよね。
はしの すごい土臭くて、そこがまたいいというか。
松田 そうですね。もう一つは「昭和の物語」なんですね。息子のアキラというのが重松さんと同じぐらいなんで、重松さんが育ってきた時代をしみじみと描いているという感じで、いいお話ですね。
谷原 優香ちゃんも、重松さん好きだもんね。
優香 大好きです。親子もの、大好きなんです。涙したいです。
はしの ほとんどの方が泣かされちゃうと思います。
谷原 ぼくも、お父さんの言葉には感動しました。