「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」


<第7回 輝く!ブランチBOOK大賞>
小林 今年も、約7万5千点の新刊から、厳選に厳選を重ねて「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」が決定いたしました。もちろん今年も審査委員長はこの方です。松田哲夫さんです。よろしくお願いします。
松田 よろしくお願いします。今年は、昨年よりもたくさん本が売れたそうです。皆さんも本を楽しんでいただいたと思います。ほんとうに、いろいろな本に楽しませてもらったんですが、そのなかで、とっておきの一冊を書いたくださった作家の方たちに賞を差し上げました。


<新人賞>
<VTR>
N1 お一人は、デビュー作『食堂かたつむり』を発表した小川糸さん。作詞家だった小川さんが10年の苦闘の末に書き上げた作品。
◎小川糸『食堂かたつむり』(ポプラ社)



優香(3月22日OA) 久しぶりに号泣しました。もう、あふれて出てくるんですよ。
はしの(3月29日OA) 後半、涙をこらえるのが大変。閉じては上を向いて……。
N1 ブランチ女性陣の声も後押しし、現在25万部のベストセラーに。なんと、映画化のプロジェクトも進行中。
N2 ある日突然、すべてを失ってしまった主人公倫子は故郷で食堂を始める。一日一組、その客のためにだけ作られたメニューは人びとを癒し、小さな幸せの奇跡を生んでいきます。そんな優しいファンタジーが、後半一転、人間の生と死の物語に移り変わり、感動のラストを迎えます。
白石みき 「新人賞 小川糸殿」。おめでとうございます。
小川 ありがとうございます。『食堂かたつむり』で賞をいただくというのは始めてなんで、すごく嬉しいです。
N1 作品に登場するメニューの数々は、ほとんど自分で作ったことのあるものばかりというほど料理が好きな小川さん。この日も自家製のジャムを持ってきてくれました。旬の季節に1年分作りためるといういちじくのジャム。
白石 おいしい~。すごく爽やかですね。
小川 ゆずの絞り汁が入っているから、ちょっと酸味がある。
白石 おいしい~。でも、デビュー作がベストセラーになって、周りの方の反響なんか、すごかったんじゃないですか。
小川 そうですね。一時は、お祭り騒ぎみたいで、わたしの普段の生活からすると、経験できないようなこともあったんですけども、あまり浮き足立たずに、普通に生活している感じです。
N1 その言葉通り、小川さんはこの1年、コツコツと2作目を書きためてきました。
白石 その作品には、またこういったお料理とかは……。
小川 そうですね。「食べる」ということも視点になって書いてる面もあります。登場するお店が実在するお店なので、そこに行けば食べられるというものがたくさん出てくると思います。
白石 自分で主人公になったような気分になれますね。
小川 そうですね。


N2 続いて二人目の新人賞は。青春スポーツ小説の作者・百田尚樹さん。
◎百田尚樹『ボックス!』(太田出版)



優香(10月11日OA) ものすごく面白かったです。もう一気に、ほんとうに一気に読んでしまいまして、その日の夜、眠れなくなりました。興奮して!!
N2 口コミでジワジワと人気が広がっているこの作品、舞台は高校のボクシング部。天性のボクシングセンスを持つ鏑矢と元いじめられっ子の友情、栄光、そして挫折。少年たちの成長が無駄のない描写で描かれます。
白石 ボクサーなんですか?
百田 いやあ、私は放送作家です。
N2 百田さんは関西の名物番組「探偵!ナイトスクープ」など、さまざまなバラエティ番組を手がける放送作家。大学時代はボクシング部。その経験が、作品に生きました。
白石 「新人賞 百田尚樹殿」。おめでとうございます。
百田 ありがとうございます。
N2 バラエティ番組を手がけてきた百田さんが、青春スポーツ小説に取り組んだのには、わけがありました。
百田 わたし、息子が高校生で、息子を見ていると、「わあ、ぼくもこんなアホなとこあったなあ」とか、自分の恥ずかしいこととかやんちゃしたこととか、色んなことを思い出して、「ああ、これ楽しいなあ」って思って……。
N2 そして、女性作家の書いたスポーツ小説ブームも刺激になったと言います。
百田 わたしのような男性が読むと、面白いんですけど「違うな」とも思うんですよ。男の子の世界は、こんなんのと違う。こんなベタベタしてないと、こんなにナヨナヨしてないと。ある意味、もっとアホで、もっと強烈な男の子の世界があるんだと。これを書きたかったですね。
N2 百田さんは、この作品を書きながら、見えてきたものがあるそうです。
百田 ボクシングというものは、自分がパンチを打とうと思うときには、絶対に相手のパンチが当たる距離に踏み込まないとだめなんです。それを書いていて、人生ってこんなもんかなあって思いましたね。
N2 小川さん、百田さん、おめでとうございます。


<スタジオ>
谷原 『ボックス!』も『食堂かたつむり』も、優香ちゃんのお気に入り作品ですね。
優香 わたしが大好きな2作なんですけど。この『ボックス!』は、青春、ワクワク、興奮といった、もうテンションがあがる感じですね。大好きでした。で、『食堂かたつむり』の方は、これとは違って、母と娘の物語で、本当に静かなんですけども、涙が、優しい涙が号泣という感じで。ねえ、えみちゃん。
はしの 優香ちゃんにオススメしていただいて読んだんですけども、すごい温かい涙も流れるんですが、わりと衝撃的なシーンもあったりして、自分だったらどうするんだろうとか、どう考えるんだろうとか思いながら読める本でしたね。
谷原 『食堂かたつむり』は、作詞家の方が書いているんで、語感の音の並びというか配列というか、それも素晴らしかったですよね。松田さん、お二人のこれからが、とても楽しみなんですが。
松田 そうですね。小川さんは、非常に大胆なストーリー展開をされる方で、これからも、どんなチャレンジをしてくれるのか楽しみです。百田さんは、もうベテランと言えるぐらいのストーリーテラーなので、次は、どういうワクワクした世界を見せてくれるのか楽しみです。


<話題賞>
◎勝間和代『効率が10倍アップする新・知的生産術』(ダイヤモンド社)    ほか



昨年末に発売された『お金は銀行に預けるな』はじめ、出す本が全てランクインするなどベストセラーを連発。BOOK界だけでなく経済界など様々な分野で一大旋風を巻き起こした、経済評論家にして公認会計士の勝間和代さんが話題賞に決定。
「*話題賞 勝間和代殿* あなたは昨年末から今年にかけて/10冊以上のビジネス本を出版し/いずれも大きな反響を呼び/ベストセラーになるという快挙を達成しました。/格好いいライフスタイルを含めて/一躍 時の人となったあなたに敬意を表し/王様のブランチではBOOK大賞話題賞を贈り/ここに表彰します。」


<BOOK大賞>
優香 2008年、もっとも輝いた作品に贈られる「ブランチBOOK大賞」。大賞の発表は、審査委員長松田さんからお願いします。
松田 それでは発表します。「2008年・第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」、大賞は、『風花』を書いた川上弘美さんです。
◎川上弘美『風花』(集英社)



<VTR>
N2 
「2008年ブランチBOOK大賞」は『風花』を書いた川上弘美さん。川上さんは、『センセイの鞄』をはじめ、次々と名作を生み、多くの文学賞に輝いてきました。そんな彼女が、一組の夫婦に焦点を当てた『風花』。33歳、結婚7年目ののゆりに匿名の電話がかかってくる。それは、夫・卓哉の不倫を知らせる電話だった。しかし、のゆりはどうしていいのかわからない。「わたしはいったい、どう、したいんだろう。」しだいにのゆりは、揺らぎながらも、自分を見つめ、向き合っていく。人間の心の淡い変化を川上さんの文章は見事にすくい取ります。
松田 「表彰状 川上弘美殿。BOOK大賞を贈り、ここに表彰致します」。おめでとうございます。
川上 ありがとうございます。第7回なんですよね。ラッキーセブンで、とても嬉しいです。
N2 松田審査委員長が『風花』を大賞に選んだ理由は?
松田 10人いれば10人が、それぞれ違う表現で、この本の感想を書かれている。珍しい本だなあと思いました。
川上 そうですね。
N2 たしかに、それぞれの書評の受け取り方も、「イラッとくる」というものから「癒しを感じる」というものまで、実にさまざま。
優香(5月17日OA) 恋愛小説って、ちょっと苦手な意識があったんですけども、すごく読みやすくて。なぜかって思ったら、恋愛だけじゃなくって、現実的なことが、丁度いい具合に混ざり合っている。
谷原(5月17日OA) 生活のことだったりとか……。正直、怖かったです、この本。女の人は、一見受け身に見えるけれど、決断したらとても現実的なんだなあって感じて。
N2 それは、川上さん自身も感じている思いでもありました。
川上 実は、書いている私自身が、最初のうち、主人公が歯がゆくてならなくて。なんだか頼りなくて、この人大丈夫なのかとズーッと思っていて。で、最後になって、だんだん反対に主人公がすごく変化していって励まされたりしたんですけども。でも、その変化があまりにも大きくて、自分でもアレーって思ってて。そしたら、色んな読み方を皆さんしてくださって、それは面白かったですね。優香さんが言ってくださった、「恋愛をしたりしていても日常がある。それが感じられた」というのが、すごく嬉しかったですね。いつも、私もそう思っているんですね。うっとりして家に帰ってくると、手を洗ったりうがいをしたりするわけですよね。それが大変でもあるし、救いでもありますよね。
N2 素晴らしい作品をありがとうございました。


<スタジオ>
小林 2008年ブランチBOOK大賞は『風花』の川上弘美さんでした。
谷原 松田さん、選考理由を教えてください。
松田 読む人によって感想や反応がこれだけ違う作品というのも珍しいと思うんですね。物語自体を楽しむということもあるんですが、その後に、読んだ人同士で、この番組でも、優香ちゃんや谷原さんと感想を言い合って、もう一つ外側に物語ができるという、そういう意味でも、優れた小説だなあと思いますね。
優香 男の人から見ても、怖いところがある本でしたね。
小林 さあ、来年はどんな本が選ばれるのでしょうか。以上、「第7回 輝く!ブランチBOOK大賞」でした。