『ミュージック・ブレス・ユー!!』と「太田チョイス」(前編)


<BOOKニュース>
◎第140回芥川賞・直木賞候補作決定!

蓮見 15日には、平成20年度下半期の芥川賞・直木賞が決定いたします。まずは、芥川賞の候補者の方々を紹介しましょう。ごらんの6名の方々です。(鹿島田真希、津村記久子、墨谷渉、山崎ナオコーラ、田中慎弥、吉原清隆)。鹿島田真希さん、津村記久子さん、山崎ナオコーラさんはノミネート3回目ということですが。松田さん、注目はどなたでしょうか。
松田 そうですね、その他、田中慎弥さんというのが三島賞・川端賞をダブル受賞して話題になりましたし、有力候補が目白押しなんですが、僕は津村記久子さんに注目したいなあと思っています。
蓮見 津村さんについては、後ほど「松田チョイス」でもご紹介します。さあ、続いては直木賞候補者ですけども、こちらです。(恩田陸、葉室麟、北重人、道尾秀介、天童荒太、山本兼一)。恩田陸さん、山本兼一さんという人気作家が揃っています。松田さん、「ブランチ」でも特集した天童さんも候補にあがっていますよ。
松田 そうですね。逆に言うと、「まだ受賞していなかったのか」と思う人もいるでしょうね。やっぱり素晴らしい作品ですし、ぜひこの機会に受賞して、もっと多くの人に読んでもらいたいなって思いますね。


<特別企画・「太田チョイス」(前編)>
「松田チョイスを参考にして本を買っている」(2007年6月23日O.A.)、「太田チョイスをやらせて欲しい!」(2008年11月8日O.A.)と語り、かねてより「太田チョイスをやらせろ」と言っていた太田光さんの夢“太チョイ”がこのたび実現。気合を入れた太田さんはオススメの本と、自分たちの著書について熱く語ってくれました。
太田 「太田チョイス」で本を選んでくれって言われて、実際やらせてくれることになって、困ったんだよ。
田中 何で困ったんだよ!
太田 「松田チョイス」で選んでるから、全部かぶっちゃうんだよ。
田中 「松チョイ」が選んだものを読んで……
太田 松田さん、どーもお世話になってます。参考にしてますよ。


◎谷崎潤一郎『春琴抄』(新潮文庫)



「世界の文学の中でも上位。谷崎潤一郎作品では一番」。「谷崎潤一郎は美しいものが好きで、その谷崎の理想を描いた作品」。「純文学は教科書に載ってるイメージかもしれないけれど、作品が発表された当時も今も大衆の文学であって、漫画のように気軽に楽しめる!」


◎モンゴメリ、西田佳子訳『赤毛のアン』(西村書店)



「想像しだすと止まらない、話しだすと止まらない、そんなアンの気持ちが僕はすごくよく分かる!」「想像力って本当に素晴らしいものなんだ!」と『赤毛のアン』を片手に持ったまま太田さんは熱弁。「大学生の時に何気なく手に取り、読んだ。これは僕の人生の書です」


◎爆笑問題『だから言わんこっちゃない』(小学館)



「週刊ポスト」の連載コラムをまとめた爆笑問題の新刊。歴史、時事問題ネタに二人が漫才形式で語ってゆく内容。「(傑作の後に)こんな本紹介したくない!」と恥ずかしがりながらも、見所を紹介。太田さんのオススメポイントは本の写真を撮影した、梅佳代さん。
N 最後に、太田さんから松田さんに、こんなメッセージ。
太田 松田、お前、俺の本を紹介したことないじゃないか! 松田、コノヤロー!
田中 「松チョイ」は我々の本とかを紹介してくれたことないんですか。
太田 されないんだから。
もりちえみ 松田さんは、なんでチョイスしないんですかね?
太田 嫌われてんのかなあ?
N スタジオにいる松田さん、本当のところはどうなんですか?


松田 別に嫌ってはいないですけども。爆笑問題さんのトークも本も大好きです。これまでも「特集」で何回も取り上げているんですね。だって、僕のへたくそなしゃべりで紹介するよりも、ご本人の見事なトークでしゃべっていただくほうが、番組的にも楽しいと思うので……。
谷原 なるほど。


<今週の松田チョイス>
◎津村記久子『ミュージック・ブレス・ユー!!』(角川書店)



優香 きっと太田さんもチェックしていると思います。今週の「松チョイ」は何でしょうか?
松田 はい、緊張しますね。今週は、芥川賞候補の中で、ぼくが一番注目している津村記久子さんの『ミュージック・ブレス・ユー!!』という作品です。
N 津村記久子の青春小説『ミュージック・ブレス・ユー!!』。主人公は高校3年生のオケタニアザミ。来年からの進路は未定。アザミにとって音楽について考えることは、将来について考えることよりずっと大切。でも、やっぱり何かが不安。そんな10代のイケてない日常とは、振り返ってみれば愛おしい日々。野間文芸新人賞を受賞した新時代の青春小説、ここに誕生。>
松田 主人公のアザミは普通の高校生で、ちょっと風変わりなところがあるっていうぐらいの高校生なんです。自分の好きなパンクロックを聴くことにはとことんこだわっていったり、波長の合う友人とメールしたり喋ったりするのはのすごく好きなんですね。そういう普通の高校生なんですけども、何かの弾みがあると、思いがけない行動にでてしまったりする。だから、不良だと思われたり、「キレやすい若者」と見えたりもするんですけども、そうじゃなくて、普通の高校生が、揺れ動きながら何かを求めている、何を求めているのかわからないんだけど、一生懸命生きているっていう感じが伝わってくるんですね。ぼくなんか、歳も違うし、男と女の違いもあるんですけども、高校生の時ってこうだったよなあっていうのがすごく伝わってきました。意外と、高校生のこういう気持ちというか感性というか、そういうものを描いている作品ってなかった気がします。青春小説の傑作だと思いますね。