第31回太宰治賞

第31回太宰治賞贈呈式が行われました

第31回太宰治賞贈呈式は2015年6月17日、銀行倶楽部にて行われ、

受賞者には、記念品及び賞金100万円が贈られました。



6月17日(水)、東京日比谷の銀行倶楽部で第31回太宰治賞(筑摩書房・三鷹市共同主催)の贈呈式が行なわれました。


 最初に三鷹市の清原慶子市長が主催者挨拶を行ないました。

 まず、太宰治のご長女・津島園子さんより三鷹市に寄付された、三鷹時代の太宰ゆかりの品を展示する太宰治資料展が開催中であると報告。三鷹市と太宰治の深い関わりを紹介しました。そして、じつはこの4月末に市長を引退するつもりが、後継者の突然の体調不良で急に続投が決まったこと、まるで小説のような急転直下の事態に、暗闇にひとりぼっちで立たされたような気がしたが、一人ではないとすぐに思い直したこと、そして、今日のこの喜ばしい日をみなさんと迎えられたことをとても嬉しく思っています、と述べました。さらに今回の受賞者の伊藤朱里さんの「あかり」という名前は昨年生まれた初孫と同じであることを披露。彼女がますます灯りを輝かせますようにご活躍をお祈りします、と締めくくりました。


 次に筑摩書房の熊沢敏之社長が挨拶。

 いつもこの場では、受賞作のPRをしようと決めていたのだが、今回はとてもやりづらい。なぜなら、いわばミステリーのようなつくりになっていて半ばすぎに大きな仕掛けがある。それを説明すると台無しなので、作品の説明できない、ゆえにPRができないのだ、と述べました。その上で、ヒントとして作品の冒頭第1行目を読み上げ、ここから何が分かるか、ぜひみなさん読んでみてください、とPR。さらに「受賞の言葉」から「たった一人でも、私の言葉でなにかが好転する誰かがいるとしたら、その方に届けたい」という一文を引き、ぜひそういう作品をたくさん書いていただきたい。そして、読者の方のなにかが好転し、さらには筑摩書房も好転したいものだ、そんな期待を込めてお祝いの言葉にしたい、と述べました。


 そして、選考委員を代表して加藤典洋氏が、選考過程と選評の発表をしました。

 今回の最終選考作品の4作品は、どれも作風は違いながらいい作品が集まった。当初はいろいろな意見が出ていたが、話し合うなかで考えが深まっていき、最後には三人とも「変わらざる喜び」が受賞にふさわしいだろうということになったと選考経過を報告。そして、昨日今日でこの作品をもう一度読みました、3回目です、と。仕掛けがある作品は「ネタバレ」といってたいがい2回目は面白くないが、選考会の前に2回読み2回目のほうが面白かった、違うところから光が当てられている感じがした、そしてこの3回目は2回目で気づかなかったところに気づき、教えられることが多かった、と述べました。そういう小説を書ける作者はとても強い。緻密さ、ダイナミックさ、そして文章力がある。この作品には説得させられてしまいました、と絶讃しました。


 表彰状、正賞および副賞授与のあと、伊藤朱里氏が受賞の挨拶をしました。

 最終候補に選ばれたと連絡をもらったときから、自分の作品が人目に触れる、読んでいただけるといううれしさと、同時に責任を感じていた。先ほど紹介された受賞の言葉、それが私の夢だが、そんな大それた夢をみていいのかなと毎日思っている。書き続けるという道を選んでも地獄、書くのをやめても地獄、そういう地獄の分かれ目に立っているのだと思うが、自分が小さい頃から選んできた道なので、書き続ける道に行きたい、と決意を述べました。そして、ここでみなさまに宣言したことを、裏切らないように頑張りますので、暖かくかつ厳しく見守っていただければ幸いです、と締めくくりました。


 最後に、小川洋子氏による乾杯の音頭で、パーティへと移りました。


*選評と受賞作、それに最終候補作品は『太宰治賞2015』にて読むことが出来ます。