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「社会を変えるには、自分の時間の使い方を変えなければいけない

 去る73日の金曜日の夜、TSUTAYA 六本木店にて、ちくま新書『働き方革命 あなたが今日から日本を変える方法』の著者、駒崎弘樹さんのトークショーが開催されました。

 金曜日の夜にもかかわらず、六本木という場所もあってか、若い男女がたくさん来てくださいました。ここのTSUTAYAは、スターバックスと同居していて、おいしいコーヒー片手に、きれいな夜景をバックにくつろいで聞ける雰囲気が、最高です。

 さっそうと駒崎さんが登場されて、まずは、自己紹介から始まりました。
 駒崎さんは、慶応義塾大学在学中にITベンチャー経営者として活動されていましたが、あるきっかけがあってベンチャーをすっぱりやめて、今は病児保育専門のNPO法人フローレンスの代表理事をされています。その活動が評判になり、
2007年には、ニューズウィーク「世界を変える社会起業家100人」に選出されました。

司会 「まずはどうして、この本を書こうと思われたのですか?」
駒崎「自分が、内閣府の働き方に関する会議に出ていて、日本が長時間労働でありながら生産性が低いということを知ったことと、そして、なにより自分が一日15時間くらい働いていた“働きマン”で、まわりの人が『お忙しい中、すみません』とおどおど話しかけてきたり、恋人ともまったく時間がとれない中で、何とかしなければ、と思ったんです。で、とにかくある日6時に帰ってみたら、全然問題なかったんですね。自分は、今まで何をやってたんだー、と思いました。
 会社人間というのは、『長く働いて、忙しい分だけ充実しているものだ』と、時間の使い方を勘違いしているんです。そういう価値観を植えつけられている人が多いんです。実際、今も毎日6時に帰ってますが、前より生産性は上がりました」

司会「具体的にはどんなことをして、短時間で成果をあげたんですか?」
駒崎「どこにでもある、時間管理のソフトを使って、自分が何にどれだけ使っているかを測ってみました。私が使ったのは“タイムスリマー”というソフトです。それで、いろいろ無駄がわかりましたが、特に会議にかけている時間が異常に長いことがわかったんです。だから、会議は90分以上しないことにしました。もう、90分たったら、部屋から出ちゃう(笑)。
 そのために、きちんと議題を準備して、『いつまでに何をやる』と絶対に決めるんです。それを確認したら終わりです。それで、今までに3時間かけていた会議が90分ですから、1時間半がうくわけですよ」

司会「駒崎さんは代表だからいいかもしれないですが、他の社員の方にはどうやって実行してもらったんですか?」
駒崎「まずは、マネージャークラスから言いました。でも、最初はみんな抵抗する(笑)。だから、この会社で一番忙しいのは僕だよね? でも帰ってるでしょ、と言って説得していきました。やれば、できるんですよ、みんな。マネージャーから平社員へ、今は、月の残業時間はみんな10時間に満たないですよ。でも、パフォーマンスは上がってます。」

司会「なるほど。で、できた時間はどうされているんですか?」
駒崎「まあ、妻との時間が増えました(笑)。自分に余裕があるから、ゆっくり彼女の悩みとかを聞けるようになりました。それに、家事は料理を作る以外、私がやってますよ。家事も自分の仕事だと思って、いろいろトヨタ並みにカイゼンして、早くできるようになりました。妻も喜んでくれてます。」

 トークイベントが始まってから、会場付近にはどんどん興味を持たれた方々が集まってこられ、みなさん本当に熱心に駒崎さんの話を聞き入っておられました。

質問タイムには
まず、慶應藤沢の大学院生から
「この革命は、どのような戦略でやっていこうと思われてますか?」という高度な質問。
それに対しては、
「ゲリラ戦です。政府がポスターはったりしていますが、やっぱりだめですよねえ。一人ひとりが変わっていくしかないと思います。」
とのお答え。

他に、若いビジネスマンからは
「時間ができて、地域との関わりは変わりましたか?」
という質問がとぶ。
「はい。私は埼玉県T市に住んでるんですが、それは妻の家があったからであって、全然縁もゆかりも
なかったんです。でも、ある祭りに参加したら、それから、すごく知り合いができて、今までの風景が変わってきたんですよ。ただの町並みじゃなくて、ここはあの人がやってる店だとか、この間会った彼が住んでいるあたりだとか。それから、どんどん知り合いも増えていって、私の活動を知ると、今度誰かを紹介して
やるよ、みたいなことになって、仕事に返ってきたり、とか。地域人脈が広がってますね。」

そして、最後に、駒崎さんから。
「これは革命です。皆様一人一人が工作員となって、働き方を変えてみてください! 最初は『何だあいつ』と言われるかもしれない。でも、いつか『あいつの生き方良いよなぁ』に変わっていくでしょう。まずは一歩踏み出しましょ!!!」

 駒崎さんの熱い呼びかけに、会場のみなさんも温かい拍手で応えてくださいました。