ちくまの教科書 > 国語通信 > 連載 > 「高ため」を黙読する授業第五回(2/6)

「高ため」を黙読する授業

(この連載は、機関誌『国語通信』1996年春号~1999年春号に掲載された文章を転載したものです。)
第1回 わたしのアンソロジー
第2回 密室をつくる
第3回 逆習シール
第4回 テキストを編集する
第5回 モーツァルトへの手紙
第6回 教室に風を入れる
服部左右一(はっとり・さういち)
愛知県立小牧高等学校教諭
元愛知県立小牧工業高等学校教諭
『高校生のための文章読本』編者
筑摩書房教科書編集委員
長年「表現」分野の指導メソッド開発に携わる。

第5回 モーツァルトへの手紙
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2 『文章読本』を読む

 三年生の八クラスのうちの三クラスの現代文を担当することになった。週四時間を、二つに分けて、現代文は教科書を中心に、表現は『わたしの作品集』にそって授業をすすめることにした。

 一学期の中間考査のあと現代文に「『高ため』を黙読する授業」を取り入れることにした。この方法については第一回~第四回で報告したので、くわしいことはそちらを見ていただくとして少し説明しておきたい。生徒は「高ため」の文例を黙読して、

 ① 作者紹介を写す。(客観的知識)

 ② リードを写す。(編集者からのメッセージ)

 ③ 本文の中からもっとも気に入った箇所を三行以上書き抜く。(作者からの声)

 ④ ③についての感想を一行以上書く。(読者のオリジナリティをちょっぴり)

 ⑤ 覚えたい漢字を一〇語書き出す。(ことばの学習)

 ⑥ 文例を五段階評価する。(自分流のマークを考えてランキングをつける)

の項目をレポートにして提出するというものである。

 ⑥は、去年は市販のシールを使ったが、今回はそれを止めた。前任校での経験から、自分で考えだしたオリジナルマークを描く方が生徒たちも生き生きとしてくることが分かってきた。

「高ため」黙読の授業に踏み込ませたのは、一人の男子生徒Y君がきっかけだった。

 『高校生のための文章読本』を購入以後、Y君は現代文の授業中も教科書を読まずに『文章読本』に読み浸っていた。教科書の内容についてもある程度注意をして聞いてはいるらしかったが、あとで聞いてみると『文章読本』がおもしろいと言う。それは良かったと思いつつ、その日の授業内容の方にもっと集中してほしいと考えるのが長年勤めてきた教師の性癖なので、あるとき古典担当のTさんにその話をしたら、Y君は古典のときもずっと読んでいるよとのことだった。それほど熱心な読者がいるのなら、前任校でやってきた黙読授業をやってみようと決心した。

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